調査の目的
管理職と呼ばれる就業者がどのくらい存在し、どのような職務を担い、どのような技能をもっているかは意外に知られていない。たとえば2010年厚生労働省『賃金構造基本調査』によって役職者の数を確認してみると、部長級だけで37万人、職長級まで総計すれば200万人をゆうに超える一方、同年の総務省『国勢調査』で管理的職業従事者として推計されているのは、実は30万人程度でしかない。
賃金センサスが100人以上の常用労働者を雇用する企業に調査対象を限っている一方、国調のものは自営業主まで含められての数字なので、いかに両統計によって管理職の把握の仕方が異なるかがわかる。統計による乖離は数だけにとどまらない。賃金センサスでは、たとえば1990年から2010年まで上記の役職者総数はほぼ200万人台を推移して変化がないのに対し、国調の管理的職業従事者は1990年の100万人弱から半分以上減少しているのである。このトレンドの乖離は、おそらくもっぱら管理業務のみを職務としている被用者が減少し、何らかと兼務する管理職が増えたことを暗示している。
こうした兼務管理職が増える背景には、当然、情報通信技術に対する投資の進展や外国との競争の激化など、各企業がおかれた競争条件の変化があると考えられるが、より深い問題は、兼務管理職のもつ技能や職務の特性がわからないことにある。兼務管理職は、もっぱら管理業務を専門とする管理的職業従事者と比較してどのような技能をもち、どのような職務に従事しているのだろうか。これらの情報は、独自調査によってしか得られない。
本調査では、管理職とよばれる人々の技能と職務を中心に、組織構成や業務遂行様式などをあわせて情報収集することを目的とする。
調査概要
- 調査対象
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全国25歳〜55歳の男女個人で被用者
- 調査手法
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調査会社が保有するアンケートモニターを対象とするインターネット調査
- 実施時期
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平成29年(2017年)9月
- 回収数
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4,000人(管理的業務を行う人3,000件、管理的業務を行わない人1,000件)
関連リンク
- 2018年4月 18-J-013
「管理職の一側面」 (神林 龍、樋口 美雄)