「政策評価」プログラムについて

プログラムディレクター

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川口 大司(プログラムディレクター)

政策評価プログラムでは証拠に基づく政策立案(Evidence Based Policy Making, EBPM)を加速させるため、EBPMの在り方に関する研究と個別政策の評価に関する研究を並行して進める。EBPMの推進を掲げる平成29年5月19日の「統計改革推進会議最終取りまとめ」を受けて、その取り組みは中央官庁・地方自治体で徐々に広がり、その過程で研究所や大学との共同研究の取り組みも行われるようになってきた。取り組み開始からほぼ3年を経て、EBPM関連事業の予算化が進みEBPMは試行の段階から徐々に定着の段階に移行しつつある。

このような背景のもと、RIETIにおける第5期中期目標は「多様化・複雑化する経済社会の問題解決のためにはEBPM(Evidence Based Policy Making(証拠に基づく政策立案))分析が今後一層重要になってくると予想される。」と状況認識を示し、「近年のEBPM の重要性に鑑み、リソースを充実し、効果的なEBPM のために政策形成の段階から経済産業省と連携するとともに外部の研究者とのネットワークも活用しつつ幅広いEBPM ニーズに対応する。」との対応方針を打ち立てている。

「政策評価」プログラムにおける取組は、大きく分けて2つに分類されるプロジェクトを実行し、この第5期中期目標の達成に貢献する。

1つは「証拠に基づく政策立案」をメタ視点で分析するプロジェクトである。「証拠に基づく政策立案」と一口に言っても、そもそもここで言及されている「証拠」とは何かといった点から議論がある。ある政策を取り巻く現状を数量的に把握すること自体が「証拠」であるという主張がある一方で、政策介入とアウトカムの間の厳密な因果関係を識別することが「証拠」であるという主張もある。これらの議論を整理し、政策担当者が一定の質が担保された形で政策立案の根拠となる「証拠」を準備するためには、どのようなプロトコールに従うべきかを明らかにしなければEBPMの定着は望めない。また証拠を政策立案に生かしていくために、どのように行政プロセスを設計するかについての考察も必要である。さらに証拠がどの程度、実際の政策立案に生かされているのかの検証も必要である。これらの課題に第5期中期目標中に一定の解答を得ることを目標にする。

もう1つは個別の政策分野を取り上げ、その分野の政策形成に資する証拠を積み上げるプロジェクトである。この一群のプロジェクトにおいては、まずは政策対応が必要とされる現象を質の高いデータと適切な測定指標の採用によって的確に把握する。そのうえで、ミクロ実証経済学的手法を用いることによって、変数間の因果関係を識別し、その因果関係を規定するメカニズムを様々な角度より検証する。これによって政策立案に資する高質の証拠を提供する。さらに特定の政策が実行されたケースに関して、その政策が所期の目的を達成したのか、意図せぬ結果を招かなったのか、といった観点から政策評価を行う。個別の政策分野としては教育、労働、租税、社会保障などを取り上げる。