「産業フロンティア」プログラムについて

プログラムディレクター

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大橋 弘(プログラムディレクター・ファカルティフェロー)

先進国の中でも先駆けて本格的な少子高齢化に突入するわが国は、需要・供給の双方において成長制約に直面するのではないかといわれている。こうした制約を乗り越えて日本経済が成長するためには、社会変革を促すイノベーションが求められる。他方で、情報処理の高度化と通信技術の進化といった基幹技術のイノベーションによって、わが国をはじめとする世界の主要国では、産業構造が大きく変化する兆しが見られ始めている。センサー技術を用いたIoT(モノのインターネット)や情報のクラウド化を通じて、膨大で非構造的なデータ(ビッグデータ)が入手できるようになり、産業はもとより、行政や教育などといったさまざまな分野において、需要・供給の両面における新たな価値が創出されつつある。

本プログラムは、上述のような日本経済を取り巻く環境変化を意識しつつ、幅広い観点からのプロジェクトを企画している。

基幹技術のイノベーションが生み出す第4次産業革命においては、人手不足が顕在化しつつある分野での若手人材不足や技能継承といった問題を解決するなど、供給制約を乗り越えるだけでなく、AI(人工知能)技術の実用化による深い見える化によって、新たな需要が生み出される。他方で、ビッグデータを経済成長に最大限活用するためには、国際的な視野に立った標準化や知財に関する新たなルールメイキングを行うことが不可避であり、またAIの発達に不可欠なデータ流通・利活用を促すための仕組みも整える必要がある。さらにデジタル時代においてあるべき公正な競争環境の確保をグローバル化観点から政策的に担保していくことも重要である。こうしたデジタル化された次世代に向けての横断的な制度作りを、旧来の制約に囚われることなく、グローバルな連携のもとに取り組んでいく姿勢が求められている。

本プログラムでは、新たな産業のフロンティアが芽生えつつあるわが国において、従来型の個別産業の政策に加えて、産業横断的な政策を視野に入れて、わが国経済が直面する課題を乗り越えるための政策の在り方等について研究を行う。幅広い論点を横断的に扱うことから、本プログラムでは、他のプログラムとも適宜連携しながら、上記のようなAI等の普及を通じて進行している第4次産業革命が、社会経済に問いかける新たな論点に切り込んでいければと考えている。