プロジェクト概要
2006年度
経済学における貿易や産業競争力の議論、とりわけ比較優位の研究においては、暗黙のうちに、財の生産プロセス全体のうち物理的な製造プロセスの重要性、言い換えればそこにおける資源の効率的な利用が、一国の貿易構造・産業構造の基礎となることが前提とされてきた。しかしながら、収穫逓増と製品差別化が例外ではなく常態である現代の多くの貿易財産業においては、製造プロセスにおける資源の効率的な利用よりもむしろそれに先立つ設計プロセスにおける資源の効率的な利用が、一国に存続する産業構造を分析する上では重要ではないか、との推論が成り立つ。
以上の問題設定を踏まえて、本研究では、財(人工物)の製造を設計情報の作成から考え、それが市場へ向かう流れを最適化することを「ものづくり」と捉える設計論ベースの産業論にもとづき、日本の貿易構造・産業構造を再検討する。具体的には、歴史的経緯から日本に偏在する組織能力と、所与の製品が持つ設計思想(アーキテクチャ)との適合性から、産業競争力を推定する枠組みを考えてみる。