このページではJavaScriptを使用しています。

2007年度政策研究領域(隣接基礎研究領域)

A. 金融構造、コーポレート・ガバナンスの展開等、企業関連制度

印刷用ページへ

リスクテイクと成長、安定を両立させる新しい経済制度作りを目指し研究を行う。

1. 金融・産業ネットワーク研究会および物価・賃金ダイナミクス研究会

活動期間:2007年7月10日〜2008年9月30日

プロジェクトリーダー

渡辺 努ファカルティフェロー

サブリーダー

植杉 威一郎コンサルティングフェロー

プロジェクト概要

1.金融・産業ネットワーク研究会
日本経済が長期にわたる景気停滞を脱し緩やかな景気回復へと至る過程において、金融ネットワーク(企業と金融機関の間の金融取引関係・資本取引関係)、および産業ネットワーク(企業間の商取引・資本取引関係)は大きな変容を遂げてきた。本研究会では、大企業・中小企業および金融機関の財務データ、企業・金融機関の取引関係データを用いてこの変容を実証的に解析する。それにより,今後の日本経済の安定的な成長にとって望ましい金融・産業ネットワークのあり方を明らかにする。また、それを実現するための政策、制度のあり方についても検討を加える。

2.物価・賃金ダイナミクス研究会
1980年代以降、物価上昇率と景気の関係(フィリップス曲線)が不安定化している。具体的には、1980年代後半のバブル時代には景気の超過熱にもかかわらず物価が安定を続けるという現象があり、その反対に、1990年代に入ると、経済が急速に冷え込んでいく中で物価がさほど大きく下落しないという現象があった。このようなフィリップス曲線の不安定化は日本だけのことではなく、米国や欧州などでも観察されている。本プロジェクトではこの理由を解明し、政策運営に役立つ知見を得ることを目的とする。本プロジェクトの最大の特徴は、ミクロ情報を活用することである。これまでの物価研究は、消費者物価などの集計統計を用いるものが主流であった。しかし集計統計を用いた解析には限界がある。本プロジェクトでは、ミクロレベルでの企業の価格設定行動を仔細に分析し、そこを出発点としてマクロのフィリップス曲線の不安定性を解明するという接近法を採る。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

2. 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究

活動期間:2007年4月25日〜2008年9月30日

プロジェクトリーダー

川口 大司ファカルティフェロー

プロジェクト概要

近年、賃金格差・所得格差への関心が急速に高まりつつある。その一方で、日本全体を代表する大規模政府統計に基づいた賃金格差・所得格差についての研究はそれほど進んでいるとはいえない。このプロジェクトでは「就業構造基本調査」のミクロデータに基づいて1982年から2002年にかけての賃金分布の変化について概観する。その上で、ライフサイクルの中での所得移動スピードの時系列的な変化を捉え、生涯所得の分布がどのように変化をしたかを捉える。「企業活動基本調査」のミクロデータを用いて、特に正規・非正規労働の別に焦点を当てて労働需要構造の解明も行う。

主要成果物

国際セミナー

ページトップへ

3. 組織と制度の経済分析:企業パフォーマンス・成長を高めるための組織・制度デザインのあり方

プロジェクトリーダー

鶴 光太郎上席研究員

プロジェクト概要

バブル崩壊以降、15年ほどの調整過程を経て新たなフロンティアへの飛躍を目指す日本経済にとって、潜在成長力、イノベーションを高め、促進させるような仕組み、デザインが必要となっている。その場合、企業のイノベーション、ひいてはパフォーマンスを高めるより本源的な要素として、企業の組織形態、人的資源のあり方、市場のインフラとなる制度から根本的に問い直すことが重要である。本プロジェクトでは、まず、近年活発化している企業買収・合併に着目し、(1)その動機・意図は何か、また、(2)組織再編が行われた後、当初期待されていた効果が発揮され、企業のパフォーマンスが向上しているか、について十分な検証を行う。また、敵対的買収防衛策のあり方、インプリケーションについても分析を行う。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

4. 小さな政府を前提とした官民連携による効率的な公共サービス供給方策に関する研究

活動期間:〜2009年6月30日

プロジェクトリーダー

山内 直人ファカルティフェロー

サブリーダー

守山 宏道コンサルティングフェロー

プロジェクト概要

少子高齢化と人口減少社会の到来、グローバル化と国際競争の激化といった大きな構造的変化の中で、政府のあり方については、経済の活力を維持し、公的部門の大きさを持続可能な範囲にとどめるために「小さな政府」へ向けた改革を進めていかなければならない。本研究プロジェクトにおいては、PFI、指定管理者制度および市場化テスト等の官と民の協力関係(官民連携=Public Private Partnership(PPP))について類型整理、財政支出削減効果の定量的な検証、導入のインセンティブに関する分析等を地方公共団体・NPOへのアンケート調査等も実施しながら行う。これにより、我が国における官民連携による効率的な公共サービス供給の実現に向けた政策のあり方に示唆を与える。

ページトップへ

5. 企業統治分析のフロンティア:状態依存型ガバナンスの革新と企業間競争の役割

活動期間:2007年11月2日〜2009年4月30日

プロジェクトリーダー

宮島 英昭ファカルティフェロー

プロジェクト概要

1990年代後半、マクロ環境の変化と規制緩和・制度改革の急進展の結果、日本企業では事業・組織構造や企業統治に関して大規模な実験が展開され、内外の注目を集めてきた。当研究チームでは、こうした日本企業における統治構造の改革の実態と、その企業パフォーマンスに対する影響を解明してきた。かつてメインバンク、株式相互持合い、内部者からなる取締役によって特徴付けられた日本企業は、いまや企業の外部との関係で資本市場による役割が上昇する一方、企業内部の組織はいぜん日本型モデルの特徴を維持するという意味で、ハイブリッドな構造を示し始めたという点がこれまでの分析の強調点であった。19年度は、以上の認識を前提として、これまで充分に検討されてこなかった次の諸点の解明を進める。

(1) 制度的補完性の理論的再検討
(2) 株式所有の理論的再検討、並びに株式相互持合いの実証的検討
(3) 上場の意味、上場子会社の経済的機能
(4) 状態依存型ガバナンスの再検討
(5) 事業ポートフォリオ・分権化・企業統治の相互関係
(6) 自律的ガバナンス・内部ガバナンスの条件としての企業間競争の役割

以上の論点に焦点を合わせながら、新たな実証分析の手法を開発する一方、それに対応したデータの構築を進め、政策的インプリケーションの強い企業統治研究の新たなフロンティアの開拓をめざしたい。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

関連ウェブサイト

ページトップへ

6. 地方分権・国際競争時代における地方活性化に向けたインフラ資産活用に対する行財政制度のあり方に関する実証的、国際比較制度分析−地方空港の行財政運営制度・統治システムに関する考察−

活動期間:〜2007年12月31日

プロジェクトリーダー

赤井 伸郎ファカルティフェロー

プロジェクト概要

成熟化社会を迎え、多様化したニーズに応えるため、地方が自己責任で行財政運営を効率的に行える制度に向けた改革が必要となっている。そのためには、効率的な行政資産の活用が不可欠である。その際、重要な要素となるインフラ資産が空港であり、地方経済を活性化させる柔軟な制度整備が必要とされている。本研究では、このような現状を踏まえ、空港整備特別会計の財務分析に加え、空港のガバナンス構造と地域活性化努力の関係を、事例やチャーター便・ターミナルビルの収支などから考察している。結論として、適切な空港ガバナンスに向け、地域のインセンティブを高める制度設計の構築が急務であることが明らかとなっている。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

7. 社会経済構造の変化と税制改革

活動期間:〜2008年6月30日

プロジェクトリーダー

岩本 康志ファカルティフェロー

サブリーダー

橋本 恭之ファカルティフェロー

プロジェクト概要

現在わが国は、高齢化、国際化、地球環境、格差の問題に直面し、社会経済構造の変化にさらされている。本研究では、税体系もこれら環境の変化に対応した抜本的な改革が必要とされるとの認識のもと、租税理論の成果を取り入れて、中長期的な視点から社会経済構造の変化に対応した税制のあり方を検討する。具体的には法人税をめぐる転嫁と帰着の分析、動学的一般均衡モデルによる税制改革のシミュレーション分析、社会保障と税制のあり方に関する世代会計的手法での分析、環境税の経済学的影響などの分析を行う。

ページトップへ

8. 労働市場制度改革

プロジェクトリーダー

鶴 光太郎上席研究員

プロジェクト概要

日本の「労働市場制度」(Labor Market Institutions)の新たな「かたち」、改革のあり方を考えるために、法学、経済学、経営学など多面的な立場から理論・実証的な研究を行う研究会を組織する。広く「労働市場制度」全般に目を向けながらも、それぞれの構成要素の相互関係に目配りし、特に、縦割り・垣根を越えた見地から包括的な労働法制のあり方について提言を行う。また、分析に当たっては、ヨーロッパ等の経験など国際的な視点・分析手法を十分取り入れながら、労働法制・制度と労働市場・雇用システム、ひいては経済パフォーマンスとの関係(非正規雇用問題を含む)を明らかにする。

ページトップへ

9. 持続可能地域経済システムに関する研究

活動期間:〜2009年1月31日

プロジェクトリーダー

中村 良平ファカルティフェロー

プロジェクト概要

日本経済は回復基調が続いているとは言え、地域経済にとってみれば地域間格差が広がっており、その傾向はまだら模様である。本プロジェクトでは、持続可能な地域経済システムの確立を目指して、次の4つの視点から分析を行っている。(1)地域経済循環システムの分析、(2)持続可能な地域の要件:資本と集積、(3)持続可能な地域の要件:地域規模、(4)地域格差理論の展望と検証。(1)に関しては、倉敷市を対象圏域として調査を実施し、今後は非競争移入型の都市産業連関表を作成し、望ましい産業構造の分析を進めていく。(2)に関しては、国勢調査や商業統計の詳細データを用いて、都市形状の解析を行いつつ、都市コンパクト度と持続可能性の関係を探っている。(3)と(4)に関しては、現在、実証分析での経済関係個票データ利用を前提として、内生成長理論と新経済地理モデルから格差分析のモデルを構築中である。

ページトップへ

10. インセンティブ構造としての「企業法」

活動期間:2007年4月11日〜2010年6月30日

プロジェクトリーダー

宍戸 善一ファカルティフェロー

プロジェクト概要

コーポレート・ガバナンス論において、「会社は誰のものか」という切り口での議論が盛んに行われてきたが、今後は、企業活動に不可欠の資源の拠出者(人的資本の拠出者としての経営者・従業員と物的資本の拠出者としての株主・債権者)の間の「最適な動機付けの仕組は何か」という議論が必要になると思われる。法制度は、このような動機付け交渉に影響を与える重要なインフラの1つであるが、多くの分野に分かれた法制度を、インセンティブ構造としての「企業法」という観点から統一的に捉えようとした試みは行われてこなかった。会社法、金融商品取引法、倒産法、労働法、租税法を主たる検討対象とし、内外の各分野の専門家を結集して、企業法のリステイトメントを作成する。

主要成果物

RIETIポリシーディスカッションペーパー

関連ウェブサイト

ページトップへ

11. 経済社会の将来展望を踏まえた大学のあり方

活動期間:2007年4月13日〜2009年3月31日

プロジェクトリーダー

玉井 克哉ファカルティフェロー

サブリーダー

赤井 伸郎ファカルティフェロー

プロジェクト概要

2005年4月に国立大学法人制度が発足するなど、日本の大学をめぐって近年かなり大きな動きがあることは、周知の通りである。しかし、最近の制度改革によってすべての問題が解決したとはとても言い難い状況である。たとえば、国立大学の存在意義をはじめとして、「教育」と「研究」の相互関係と資源配分、運営費交付金や競争的研究の配分のあり方、国立大学法人を相互の競争と切磋琢磨に駆り立てるガバナンスのあり方、国立大学病院の経営など、さまざまな問題が未解決のままになっている。そしてこれらは、単に象牙の塔の将来に関わるだけでなく、21世紀のわが国の経済社会の将来にも関わる問題である。それについて考え方の手がかりを得るのが、今回の研究プロジェクトの目的である。現在、(1)「国立大学のパフォーマンスと資金配分の現状と展望」、(2)「国立大学ガバナンスの現状と課題」、(3)「大学と地域経済」をテーマに研究を進めている。

主要成果物

RIETIポリシーディスカッションペーパー

ページトップへ

12. 起業家、潜在的起業家等の動向に関する調査研究

活動期間:2007年8月21日〜2009年12月31日

プロジェクトリーダー

安田 武彦ファカルティフェロー

プロジェクト概要

わが国の創業活動を開業率で見ると、21世紀に入りわずかながら上昇しているものの、国際的には最も低い水準にある。創業活動はイノベーションと深くかかわりを有するものであることを考えると、こうした状況は早急に改善されるべきものであり、政府としても政策融資等様々な手段によって開業を促進してきている。しかしながらそれらの政策のバックボーンとなる起業家の現状、開業に当たっての障害等については、データ等の制約から欧米各国と比べ多くのことがわかっていない。とりわけ開業予備軍とも言われる潜在的起業家(Latent Entrepreneur)の状況については、彼らの動向が一国の創業活動の水準を決めるにもかかわらず、ほとんど解明されてこなかった。こうしたことから本プロジェクトでは、国内の起業家、潜在的起業家の実態について解明するとともに、そこから得られた個票を元に統計解析により起業家活動の活性化に向け、今日、何が問題となっているのかを明らかにする。

ページトップへ

ページトップへ