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2008年度政策研究領域(基盤政策研究領域)

II. 国際競争力を維持するためのイノベーションシステム

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(2009年6月18日現在)

我が国企業が国際競争力を維持していくためには、持続的なイノベーションが不可欠である。しかしイノベーションは、これを促進する政策も含め、それらを効果測定するのが難しい分野である。したがって、この研究の実施にあたっては、企業、産業レベルのイノベーションとマクロ経済の全要素生産性の相互関係を明らかにする理論的・実証的な分析枠組みが求められる。その中で、我が国産業が置かれている状況や個々の産業技術政策についての評価や分析を、イノベーション政策に活用していく。

1. 日本企業の研究開発の構造的特徴と今後の課題

活動期間:2008年4月22日〜2009年6月30日

プロジェクトリーダー

長岡 貞男ファカルティフェロー

プロジェクト概要

昨年度のサーベイ及び今年度の追加サーベイの結果を利用し、また他の関連統計と接続して、イノベーション過程についての深い研究を実施するとともに、政策問題に光を当てる研究と国際的な共同研究を実施する。具体的には、1)研究の一つの焦点として、特許制度のあり方についての研究を進める。2)発明者サーベイを使った企業や個人の研究開発パフォーマンスの分析が可能となるように、発明者サーベイの対象となった発明の出願人、発明者の特許データベースにおける名寄せを行う。また、3)文部科学省科学技術政策研究所の全国イノベーション調査と発明者サーベイの両方を利用した共同研究を開始し、イノベーション過程をより包括的に把握し、そのパフォーマンスの決定要因を探ることとする。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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2. 日本企業のR&D国際化における組織・戦略的課題:経営学的アプローチ

活動期間:2008年3月31日〜2009年12月31日

プロジェクトリーダー

浅川 和宏ファカルティフェロー

プロジェクト概要

最近のR&D国際展開の変容ぶりは、既存のR&D国際化の「通説」による説明可能性の限界を強く示唆している。いわば先進地域、新興地域を包括したグローバル規模でのR&D体制の地殻変動が起きている(Asakawa and Som, 2008)ともいえる。こうした問題意識の下、本研究では日本企業のR&D本部および海外R&D拠点に対し実施するアンケート調査から得られる最新データを基に、R&D国際化における新たな動向を把握し、特に組織・戦略的側面における現状と課題についての分析を行う。これまでの「通説」を再検討し、今日の状況に合った分析枠組みが必要であると考えている。本研究では企業およびその海外拠点といったよりミクロレベルの分析により、OECDをはじめとする諸機関によるマクロデータとの相互補完的位置づけを意図している。

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3. 日本の生産性と経済成長:国際比較と生産性上昇源泉の分析

活動期間:2008年4月21日〜2009年6月30日

プロジェクトリーダー

深尾 京司ファカルティフェロー

プロジェクト概要

労働人口が減少する今後の日本においては、生産性上昇が経済成長の主要な源泉である。またTFPは、物的資本の収益率を規定し設備投資の動向を左右する点でも重要である。本研究では、JIPデータベースを毎年更新することにより、日本経済の最近の生産性動向について分析可能にする。また、日本の経済活動全体をカバーするミクロデータとマクロ・産業レベルのデータを統合することにより、マクロ・産業レベルのTFP・労働生産性上昇を個別企業・事業所内の視点から分析する。

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4. 生産性向上に関するマクロ・産業・企業レベルの統合的アプローチ

活動期間:〜2008年6月30日

プロジェクトリーダー

西山 慶彦ファカルティフェロー

サブリーダー

市村 英彦ファカルティフェロー

プロジェクト概要

90年代は「失われた10年」などとも言われ、生産性低下の時代であったと理解されている。しかし、何を真因としてマクロ的生産性低下が見られたのかは決して明らかではない。個々の企業の生産性の低下、低生産性企業の参入、高生産性企業の退出などの原因が考えられるが、事実としてどのような原因であったのかを探ることは実証的な問題である。これに対しては適切な経済モデルと適切な統計手法を組み合わせて調べる必要があるが、既存研究の中には直接適用することが妥当なものがないのが実情である。この先目指すべき持続可能な成長といった観点からも、企業や産業といった下部構造の変化とマクロレベルの変化の統一的理解は重要な課題である。本研究はこの問題に対し、理論・実証両面の包括的なアプローチを試みる。

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5. 複雑化する人工物と設計プロセスおよび製品アーキテクチャの実証分析

活動期間:2007年7月24日〜2009年4月30日

プロジェクトリーダー

藤本 隆宏ファカルティフェロー

サブリーダー

大鹿 隆ファカルティフェロー

プロジェクト概要

一般に、企業が市場に供給する製品について、顧客の要求機能や社会的な制約条件(環境・安全対応など)が高度化・複合化すると、モジュラー化による対応は難しくなり、製品はインテグラルかつ複雑なものになりやすい。とりわけ、被制御系の機構部品(メカ)が多く残り、結果としてメカ・エレキ・ソフトが共進化する自動車のような製品の場合、被制御系であるメカ設計と、制御系であるエレキ・ソフト設計の間の相互協調が要求される。本研究では、以上のような視点に立って、現代における「製品の複雑化」という問題を、設計論の観点から探索的に考察する。具体的には、企業が市場に供給する製品を「人工物」(設計されたもの)と解釈し、それが複雑化・簡素化する諸要因と企業の対応について分析する。

主要成果物

RIETIポリシーディスカッションペーパー

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6. 半導体産業に関するイノベーションプロセスの調査・研究−電子顕微鏡・レジスト・パッケージング技術に関するケーススタディ分析

活動期間:2008年3月4日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

中馬 宏之ファカルティフェロー

プロジェクト概要

半導体デバイスや電子顕微鏡メーカーの科学者・技術者達との共同研究により、大発明&イノベーションが創出された時代背景やそれらが(電子顕微鏡王国とも言われる日本ではなく)ドイツやイギリスで、しかもベンチャーラボを中核として実現された諸要因について経済学・経営学の視点から分析する。

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7. ソフトウエア・イノベーションについての実証的研究

活動期間:〜2009年5月31日

プロジェクトリーダー

田中 辰雄ファカルティフェロー

サブリーダー

鈴木 潤ファカルティフェロー

プロジェクト概要

周知のように、ソフトウエア産業での日本の競争力は弱い。ソフトウエア産業全体では圧倒的に輸入超過であり、輸出は輸入の1割にも満たない。付加価値の高い先端技術産業のなかで、これだけ圧倒的に日本の競争力がない産業は珍しい。また、このことはIT技術を利用したビジネスプロセスの革新においても悪影響をもたらしている可能性もある。これはなぜであろうか。なぜこんなにも競争力の格差が生じたのか。競争力を高めるための政策的処方箋はありうるのか。本研究の目的は、この問いに答えるための仮説を実証的に検討することで、日本のソフトウエア・イノベーションの現状を把握し、ソフトウエア産業の競争力強化とソフトウエアを利用したビジネス革新の推進のための政策を探求することにある。

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8. 産業クラスターに関する調査研究(RIETI負担分)

プロジェクトリーダー

児玉 俊洋 (株式会社日本政策金融公庫国民生活事業本部特別参与)

プロジェクト概要

イノベーション力の強化と地域経済の活性化のため、各地において産業クラスター形成への取り組みが行われている。本研究は、METIの「産業クラスター計画」の先進事例と位置づけられている首都圏西部のTAMA(Technology Advanced Metropolitan Area)、および、ハイテク企業と有力大学が集積する京滋地域(京都府南部から滋賀県南部にかけての地域)を対象とする実証分析を中心として、産業クラスターが有効なイノベーションシステムとして発展するための方策を探ることを目的としている。理論面の考察を深めるとともに、企業ヒアリングの実施など京滋地域の調査の継続、自治体等行政、公的産業支援機関、大学関係者等との研究会の開催、ならびに、企業および一般を対象とする公開シンポジウムの開催(2009年1月16日)を通じて、実践的な政策提言を行うための研究を行っている。

主要成果物

報告書

  • 「2007年度 産業クラスターに関する調査研究 最終報告書」 (児玉 俊洋)

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9. 日本における無形資産の研究

活動期間:2008年10月28日〜2009年10月31日

プロジェクトリーダー

宮川 努ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本研究は、最近のミクロ・データを利用した「ヒトと組織」に対する投資と企業パフォーマンスとの関係を調べた研究に沿って、日本企業について企業内の組織変革や人的資源管理、人材育成が、企業業績にどのような影響を与えているかを、Bloom and Van Reenen(2007)と同様企業インタビューを実施し、その結果に基づいて様々な角度から実証することを目的としている。2007年度は、このインタビューの設計と実施に多くの時間を割き、東京地区に本社がある151社について分析を行った。2008年度は、全国レベルでのインタビュー調査結果(573社)と人事部アンケート(391社)を実施し、かつ政府統計の個票を組み合わせることにより、組織構成や人材育成が企業パフォーマンスに与える影響をより詳細に分析する。またマクロ・産業レベルでも、インタビュー結果から企業内の人的資本形成に関して新たなデータが得られたことや、国際的にも新たな計測結果が出ていることから、Fukao et al(2007)やFukao et al(2008)の再推計を行いたい。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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10. サービス産業生産性向上に関する研究

活動期間:2008年5月26日〜2010年1月18日

プロジェクトリーダー

権 赫旭ファカルティフェロー

サブリーダー

松浦 寿幸研究員

プロジェクト概要

RIETIにおいて実施されている研究プロジェクトⅡ−4)日本の生産性と経済成長:国際比較と生産性上昇の源泉(深尾FF)、Ⅱ−9)日本における無形資産の研究(宮川FF)、Ⅱ−14)産業・企業の生産性と日本の経済成長や、Ⅰ−3)ITと生産性に関する実証分析(元橋FF・松浦F)、また、海外の研究機関(OECD、IFS、KDI、Brookings Instituteなど)や海外のプロジェクト(EUKLEMS)と協力しながら、産業レベルと企業レベルのデータを用いて、サービス産業の生産性を正確に測定する方法、サービス産業の生産性を決定する要因(人的資本、イノベーション、IT化、無形資産、アウトソーシング、立地、新規参入、規制緩和政策など)を明確に実証分析し、さらに、厳密な方法による国際比較を通じて、日本のサービス産業が持っている問題を明らかにしていく。そこで最終的に得られた分析結果に基づき、必要な政策を具体的に提言する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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11. New Technology‐based Firms(NTBFs)の簇業・成長・集積のためのEco-systemの構築

活動期間:2007年7月9日〜2009年12月31日

プロジェクトリーダー

西澤 昭夫ファカルティフェロー

プロジェクト概要

大学の研究成果によるプロダクトイノベーションを実現するため、その担い手となるNew Technology-Based Firms(NTBFs)を数多く創業(=簇業)させ、これらNTBFsの成長・集積により、大学を擁する地域からハイテク産業を創出させる政策が世界的潮流となっている。しかしわが国では、成功事例が未だ出現しないだけでなく、先駆的事例として注目された「札幌バレー」は発展へのモメンタムを失いつつあるとも評価される。わが国では、有力な研究大学を擁する地域においてさえ、NTBFsの簇業・成長・集積を通じたイノベーションの実現によるハイテク産業創出というモデルが機能しないのはなぜか、NTBFs簇業・成長・集積を阻むいかなる障害があるのか。この点を実証的かつ理論的に明らかにし、Eco-System構築に向けたベンチマークを作成することが本研究の目的となる。

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12. サービス差別化と生産性:独占的競争モデルに基づく生産性分析

活動期間:2008年6月23日〜

プロジェクトリーダー

加藤 篤行研究員

プロジェクト概要

本研究のテーマは「差別化されたサービスを生産する企業の生産性の分析」である。企業・事業所レベルのデータを用いた生産性研究において通常アウトプットとして使用されるデータは売上高(あるいはそれを用いて求められた付加価値)であり、その際のデフレーターは産業レベルのものである。これは、利用可能な統計資料から製品レベルの生産量や価格についてのデータを得ることがほぼ不可能であるためであり、サービス産業においては生産量の定義自体が困難なことも含めてこの制約はとりわけ厳しい。また、製品(サービス)の多様化が推計される生産性に与える影響も無視されている。加えて、推定される生産性の変動はマークアップや需要ショック(企業レベルでの消費者選好の変化など)も含んだものであり、厳密な意味での生産性の変動とは一致していない可能性がある。そこで本研究では以下の論点に関して研究を行う。

1)個別の生産物(サービス)価格・数量データが利用できないという現実の制約条件下において、製品(サービス)差別化を明示的に取り入れたモデルによる生産性推定
2)その結果(規模の経済性や生産性ダイナミクスなど)に関する既存研究との比較および企業特性・戦略、産業政策等の効果分析

主要成果物

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13. 美容産業のパフォーマンスに関するマイクロ計量分析

活動期間:2008年7月14日〜

プロジェクトリーダー

小西 葉子研究員

プロジェクト概要

サービス産業分析の第一歩として、比較的単純な生産構造を持つ美容産業を分析対象とする。わが国の美容産業は、そのほとんどが個人経営で、全国には20万件以上の美容院がある。組合と法律によって、1990年代後半までは営業日、時間、技術料金などが一定に保たれていた。しかし法律の廃止、組合の縮小化、カリスマ美容師ブームなどが相まって、近年は価格の過当競争、店やサービスの差別化が進んでいる。研究において、サービス産業の生産性とは何かを知るために、製造業の生産関数に相当するものを定義する必要があるが、それは需要の影響を受け、さらに、「店舗面積、人員、営業時間」に制限され、供給量に上限があるようなモデルを考えなければならないであろう。本プロジェクトでは、6店舗の美容院の非常に詳細な財務・顧客・労務データを収集し、美容産業の供給構造・需要構造を調べる。

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14. 産業・企業の生産性と日本の経済成長

活動期間:2007年6月1日〜2008年4月30日

プロジェクトリーダー

深尾 京司ファカルティフェロー

プロジェクト概要

人口の減少と高齢化が進む今後の日本経済が活力を維持するには、生産性上昇率の加速による経済成長の維持が欠かせない。このような問題意識から、本プロジェクトでは、日本の経済成長と産業構造変化を分析するための基礎資料として、日本産業生産性データベース(Japan Industrial Productivity Database、以下ではJIP)を原則として毎年更新し、詳細な産業レベルのTFPの動向やその決定要因について分析する。また欧州連合(EU)の生産性に関する国際連携プロジェクト“EU KLEMS”に参加することにより、日本の産業構造や産業別生産性動向を、米国やEU加盟国、韓国など、他の先進諸国と比較する。本プロジェクトでは更に、非製造業を含め大部分の日本企業をカバーするJIPミクロ・データベースや政府統計の個票を使って、企業の国際化や無形資産蓄積が企業の生産性にどのような影響を与えるかを分析する。

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15. 今後のプロパテント政策のあり方について

プロジェクトリーダー

清川 寛上席研究員

プロジェクト概要

我が国の生き残りにはイノベーションの推進が不可欠であり、それを支える制度の1つに知的財産権制度がある。我が国の知財権制度は2003年の知財戦略本部の設置以来、いわゆるプロパテントとしてその保護の強化が行われ、それ以前を含めての特許法の数次の改正や運用あるいは司法面での改善等々もあって、その保護水準は相当に整備されたと思われる(拙著「わが国におけるプロパテント化の評価と今後の課題」経済産業ジャーナル2007年4月号参照)。しかるに研究開発の複雑化・迅速化等は益々進み、今や企業単独での遂行は難しい状況となり、ためにソフト分野等を中心にオープンイノベーションの動きがあり、またいわゆる「連携」も各所で進んでいる。他方、知財権はその本質を排他権とするところ、それは「私的権利(Proprietary)」であり全体利益というか連携・協働とは相容れない側面がある。加えて排他権は市場競争を歪め、その過度の行使はイノベーション自体をも阻害するおそれもある(たとえばリーザーチツール、特許の藪、果てはトロール、等)。研究開発促進にはそのインセンティブからの保護も必要であるが、全体としてのイノベーションを損なって元も子もない。このような状況から、保護の側面は一応の成果を得たわが国知財権制度が、今後、イノベーションをより促進するためには如何にあるべきかを検討する。

主要成果物

RIETIポリシーディスカッションペーパー

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16. 多重ネットワーク分析指標を用いた新たな経済指標の検討

活動期間:2008年4月1日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

玉田 俊平太ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本研究は、企業間の多種多様な相互作用によって生じるイノベーションを解明するため、企業取引及び共同発明のデータを、多重ネットワーク解析や特許価値評価手法を用いて解析し、経済政策の立案に資する新たな指標とすることを目的とする。具体的には、日本企業約100万社が特許共同出願、株所有、取引、役員兼任などの関係でつながったネットワークを解析する。まず始めに、関係の強さを考慮しない場合について各種ネットワーク指標を計算し、ネットワークが持つトポロジーの性質を明らかにする。そしてこれらの指標が、経済政策の立案にどのように資することができるのか検討する。

また、次のステップとして、企業間のつながりの強さを定義し、重み付けられた多重ネットワークとして解析を行う。特に、複数の企業がつながり合って塊(クラスター)を作った場合に、その塊の価値を計算する理論モデルを構築する。さらに、付加価値の高いクラスターにはどのような特性があるか解析し、高付加価値クラスターの生成を促進するための経済政策について検討を行う。

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