データ・統計

R-JIPデータベース2017

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベース2017について

地方を中心に急速に進展する高齢化・過疎化や製造業で加速する生産の海外移転等により、地域間経済格差や産業の地域分布の動向、地方財政の維持可能性、等について不確実性が高まっている。各国間の所得・労働生産性格差に関する最近の研究では、EU KLEMSデータベース・プロジェクトに代表されるように、産業別に資本ストックや労働の質を推計し、物的・人的資本蓄積や産業構造の変化、産業別の全要素生産性(TFP)の動向等で各国間の所得・労働生産性格差の原因や経済収束を説明しようとする分析が行われるようになった。しかしこのアプローチは、日本を含め一国内の地域間所得格差に関する研究ではあまり採用されていない。これはおそらく、必要な国内地域別・産業別データを得ることが難しいためであると考えられる。

このような問題意識から経済産業研究所(RIETI)の「産業・企業生産性向上」プログラムの下に地域別産業別生産性に関するプロジェクトを2011年度から立ち上げ、一橋大学経済研究所と協力し、日本の地域間生産性格差や産業構造を分析するための基礎資料として、「都道府県別産業生産性データベース」(Regional-Level Japan Industrial Productivity Database、略称R-JIP)の構築に取り組んできた。

R-JIPデータベースは、全国版の日本産業生産性(JIP)データベースをコントロールトータルとして、47都道府県別(沖縄県は1972年から)×23産業別に全要素生産性を計測するために必要な、名目・実質付加価値、質の違いを考慮した資本・労働投入、産業別全要素生産性水準の県間格差と県別産業別全要素生産性上昇率の計測結果、等の(暦年)年次データから構成されている(一部データはベンチマーク年のみ)。

姉妹編であるJIPデータベースが、産業部門の詳細な情報(現行は108部門)と中間投入行列の情報を含み、日本全体の産業の詳細な生産性分析を行うことができるデータベースとして構築されているのに対して、R-JIPデータベースは都道府県別の産業の情報を補完するものである。ただし、R-JIPデータベースでは都道府県別情報が加わった一方で、利用可能なデータの制約から、産業部門数を23部門とし、中間投入の情報はなく粗付加価値ベースの産出量を使うといったように、姉妹編のJIPデータベースと比較して簡略化されている。しかしながら、生産要素の質の違い(時系列では労働及び資本投入、クロスセクションでは労働のみ)を考慮した生産性の地域間比較が可能なデータベースとして特色のあるものであることを自負している。

R-JIPデータベース2017での主な推計方法の変更について

今回公表するR-JIP2017は、これまで発表済みのR-JIP2012、R-JIP2014に続く改訂版である。データ期間は、R-JIP2014の1970年-2009年から、1970年-2012年に延長されている。新たに延長されたデータ期間の中には、2011年の東日本大震災を含み、この震災によって被災地で失われた資本ストックの推計が必要であった。その他にも、今回のデータベース改定では、過去のデータに遡って幾つかの推計方法の見直し等を行っている。主な変更点は次の二つである。

(1)R-JIPデータベースでは、10年ごとのベンチマーク年について、都道府県・産業ごとの労働投入属性の違いを反映して「労働の質」水準をクロスセクションで比較できる指数を作成している。R-JIPデータベースでは労働投入を居住地ベースではなく就業地ベースで計測しており、それに対応した都道府県・産業別の詳細な労働投入属性を得るために、「国勢調査」のオーダーメイド集計を利用している。R-JIP2014作成時に利用できた「国勢調査」オーダーメイド集計は1990年と2000年に限られていたが、その後1980年と2010年の「国勢調査」データについてもオーダーメイド集計を利用することができるようになった。これに伴って、R-JIP2017では過去に遡って「労働の質」推計をやり直している。

(2)資本投入はJIPデータベースと同様に資本サービスの概念で測って生産性分析を行っているが、資本サービスの基になる資本ストック計測の基礎データはフローの投資系列である。R-JIP2017では、製造業、非製造業ともに都道府県別投資系列の推計方法を変更した。製造業では、R-JIP2014まで内閣府推計データを使ってきたが、R-JIP2017からは工業統計調査データから独自推計する方法に切り替えた。また、製造業以外の産業については、建築統計年報ベースの建築投資額を都道府県の投資額按分に使うR-JIP2014までの方法に依拠している産業もあるが、建築統計年報ベースの建築投資額をさらにより細かい産業に分割する方法を見直した。また、電気・ガス・水道のように業界統計データを都道府県の投資額按分に使うなど抜本的な変更を行った産業もある。

R-JIPデータベース2017に反映していない二つの試算の紹介

R-JIPデータベースの研究プロジェクトでは、推計方法のテクニカルな改善を含むデータの更新作業を行うことに加えて、地域データに特有の事情によって生じるより抜本的な問題をどのように扱うかについても検討を行い、二つの試算を発表している。

その一つは、地域を跨る本社サービス投入の問題である。現在の「県民経済計算」では、「地域を跨る本社サービス」を事業所活動の中間投入とは認めない原則としており、東京都を除く46道府県の付加価値はその立場で計算されている。それに対して、全国に事業展開する本社活動を多く抱える東京都は、本社活動によって付加価値が生み出されているとの立場に立った計算を行っている。このような不整合を無くすために、全国の都道府県で、本社サービス投入を東京都が採用している方法に合わせて試算を行った。その結果については、下記のRIETIディスカッション・ペーパー[3]で報告している。

いま一つの問題は、サービス価格の地域差の調整である。移動が可能な財については、日本国内で価格裁定が働く結果、産出価格の大きな地域差は生じてないと想定しても大きな問題はないと考えられる。しかし、サービス分野の多くでは「消費と生産の同時性」があるため、こうした価格裁定が容易に働くとは期待できない。このため、サービス価格の地域差を推定し、それを生産性の地域間格差分析に反映させる試算をおこなった。その結果については、下記のRIETIディスカッション・ペーパー[4]で報告している。

R-JIPデータベース2017に関する追加情報について

以上説明したような、R-JIPデータベース2017の詳細な推計方法の説明と、二つの試算の影響評価については、2017年度中にディスカッション・ペーパー等の形にまとめて情報提供することを予定している。また、これらを含むR-JIPデータベースの解説と分析を著書『日本の地域別生産性と格差――R-JIPデータベースの構築による産業別分析(仮題)』にまとめて発表する計画も進行中である。

それまでは、下記のRIETIディスカッション・ペーパー[1]と[2](及びそれらを改訂した一橋大学経済研究所『経済研究』第64巻第3号、2013年7月掲載の論文)が、R-JIPデータベースに関する基本情報であり、これに上記の推計方法の変更を補足していただければ幸いである。

その他に、R-JIPデータベースを補完する付帯データとして、次に説明するように、「R-JIPデータベースと整合的な社会資本」データを提供することにした。

R-JIPデータベースの資本概念と社会資本データについて

R-JIPデータベースでは、全国版のJIPデータベースと同様に、資本ストックの用途から各部門の生産活動に使われていると判断できるものは、その投資主体が民間であるか公的部門であるかに拘わらず、各部門の資本サービス投入として計算している。例えば、農林水産業の分野では、農道や用水路など多くの公的資本整備が行われている。その他に、電気・ガス・水道業の水道設備、運輸業の有料道路なども同様である。また、部門分類にサービス業(公的)があり、学校施設、文化施設、空港、港湾などが対応している。

その一方で、地域生産性格差を考えるうえで、地域の社会資本の整備に焦点が当てられる場合があり、その際にはこれまで投資主体によって定義した「社会資本」データがしばしば用いられてきた。しかし、投資主体によって定義した「社会資本」データを、用途によって資本区分を定義したR-JIPデータと合わせて利用すると、社会資本データの一部をダブルカウントしていることになる。

このことから、R-JIPデータベースの各部門の資本サービス投入として既にカウント済の部分を除いて、個別部門の経済活動とは関連付けることのできない公的資本投入を、仮に「R-JIPデータベースと整合的な社会資本」と呼んで、ここに付帯データとして提供することにした。「R-JIPデータベースと整合的な社会資本」に含まれるのは、具体的には、有料道路以外の道路、都市公園、治水、治山、海岸整備である。

R-JIPデータベース推計関係のRIETIディスカッション・ペーパー

現在R-JIPプロジェクトの主な参加者は次のとおりである。

  • 徳井丞次(信州大学・経済産業研究所)
  • 深尾京司(一橋大学・経済産業研究所)
  • 新井園枝(経済産業研究所)
  • 牧野達治(一橋大学)
  • 水田岳志(一橋大学)
  • 金榮愨(専修大学)
  • 川崎一泰(東洋大学)
  • 権赫旭(日本大学)
  • 池内健太(経済産業研究所)

R-JIPデータベースの構築においては、利用可能なデータ上の制約に加えて、地域データ特有の難しい問題があり、これまでのR-JIP2012及びR-JIP2014公表時に残された幾つかの課題について言及している。その一部は、今回紹介した二つの試算において取り組んでいる。しかし、データの定期的な更新が期待される本データベースにおいて、これらの試算を継続的に反映させるには困難が伴い、当面は影響評価に留めたいと考えている。我々は引き続き、R-JIPデータベースの更新と改善に取り組んでいきたいと考えている。

徳井丞次
深尾京司
牧野達治

※データのご利用にあたって

データをご利用の際は出所として、R-JIP2017を利用した旨、明記して頂くようお願いします。また、本データを利用して論文を作成・発表される場合、コピーを一部お送りくださるようお願いします。

お問い合わせ
一橋大学経済研究所サービス産業生産性プロジェクト室
e-mail:jip-info@ier.hit-u.ac.jp

ダウンロード

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R-JIPデータベース2017 [XLSX:6.89MB]

17年9月7日更新

1970年から2012年まで毎年(暦年)の都道府県別産業別データベースである。以下の各系列が収録されている。

  1. 付加価値
    1. 1) 実質(2000年価格、100万円)
    2. 2) 名目(100万円)
  2. 資本
    1. 1) 実質資本ストック(2000年価格、100万円)
    2. 2) 名目資本コスト(100万円)
    3. 3) 質指数(資本、全国共通)(2000年=1.000)
  3. 労働
    1. 1) マンアワー(就業者数*就業者1人あたり年間総実労働時間/1000)
    2. 2) 名目労働コスト(100万円)
    3. 3) 質指数(労働、全国共通)(2000年=1.000)
    4. 4) 質格差指数(労働、都道府県別)(全国平均からの乖離)
    5. 5) 就業者数(人)
  4. 参考系列
    1. 1) 人口(人)
    2. 2) 1人あたり県民所得(1000円)

なお、データ作成の詳細については「都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)を参照されたい。


労働生産性格差分析用ワークシート [XLSX:3.33MB]

17年9月7日更新

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)における労働生産性地域間格差(図3、4)を計算するためのワークシートである。「地域間の人的資本格差と生産性」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-058)において作成した、都道府県別産業別労働の質格差指数のデータを含む。なお、R-JIP2017への改訂に伴い、2010年における労働生産性地域間格差分析用のデータ、図を新たに追加している。


成長会計分析用データ [XLSX:6.95MB]

17年9月7日更新

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)における都道府県別成長会計分析(図5)に利用したデータセット(1970年から2009年の時系列)である。資本コストシェア、名目付加価値シェア以外のデータは、全て成長率(年率、%)で表示されている。なお、R-JIP2017への改訂に伴い、2012年までデータを延長している。


都道府県別社会資本ストックデータ [XLSX:5.82MB]

17年9月7日更新

「日本の社会資本2012」(内閣府)における社会資本ストックのうちR-JIPのいずれの部門にも含まれないもの、具体的には(有料道路以外の)道路、治山、治水、海岸、都市公園をR-JIPと整合的な社会資本と定義し、都道府県別に整理したデータである。「日本の社会資本2012」の試算①(純資本、定額法)をベースとし、1)2012年まで簡易延長推計、2)2000年価格表示に修正、3)道路を有料道路と有料道路以外の道路に分離(R-JIPでは有料道路は運輸・通信業、有料道路以外の道路は社会資本)といった修正を加えてある。詳細は「日本の地域別生産性と格差―R-JIPデータベースの構築による産業別分析」(東京大学出版会、近刊)を参照されたい。


都道府県別マクロ労働生産性格差、成長会計分析用データ [XLSX:143KB]

15年5月18日更新

Kyoji Fukao, Jean-Pascal Bassino, Tatsuji Makino, Ralph Paprzycki, Tokihiko Settsu, Masanori Takashima, and Joji Tokui "Regional Inequality and Industrial Structure in Japan: 1874-2008"(一橋大学経済研究所、欧文経済研究叢書No.44、2015年3月)における1955年以降のベンチマーク年の都道府県別マクロ労働生産性格差分析(第5章 Figure 5.1、5.2)と、都道府県別成長会計分析(第5章 Figure 5.3)に利用したデータセットである。データ作成の詳細については、同書のAppendix 3、4を参照されたい。なお、本データはR-JIP2012に対して簡易修正を加えたものであるため、R-JIP2012やR-JIP2014とは一致しない。