産業別名目実効為替レートのデータベース構築の目的
経済産業研究所(RIETI)の伊藤隆敏ファカルティフェローによる「アジアの最適為替制度」プロジェクトでは、東アジアにおいて将来望ましい為替制度の構築を目指した為替政策の国際協調に関する研究を進めてきた。その一環として、2005年よりアジア通貨単位(AMU)のデータ構築・公開を行い、アジア通貨の対AMUの動きを観察する重要性を提案している。一方で、リーマンショック以降円高トレンドが続く日本円に対して、対米ドルだけではなく実効ベースで日々の為替変動を注視するニーズが高まっている。
そこで、経済産業研究所独自の日本円の実効為替相場のデータを整備する。昨今の急激な円相場の変動に対して、対ドルの名目為替相場のみならず実効為替相場の動きを把握することは重要である。しかも産業別にその競争力を見るということは新たな試みである。同プロジェクトの佐藤清隆委員、清水順子委員、およびナゲンドラ・シュレスタ委員は、円について産業別名目実効為替レートを計算し、ここに公開するものである。
産業別名目実効為替レートの算出方法
貿易相手国の選択
各産業の輸出額の1%以上を占める国を「主要輸出相手国」とみなす。主要輸出相手国リストについては以下の表1を参照。ただし、各産業で主要輸出相手国とその数は異なる。

ウエイトの算出方法
輸出ウエイトは、産業ごとに主要輸出相手国向け輸出額の合計を計算し、それを各産業の「総輸出額」とみなして毎年計算する。各年の輸出ウエイトは当該年から過去3年間の輸出額をベースにして算出する。また、直近年の輸出ウエイトの更新は、最新の輸出データが入手できた時点で行う。
産業分類
産業別の輸出額はHS 9桁分類の詳細な輸出統計(1932品目)を基に集計する。外国貿易概況・品目分類基準に従って、表2に掲載した8つの機械産業に分類する。

例として、2010年の名目実効為替レートの計算に用いられる産業別の国別輸出ウエイトは以下のようになる(表3)。

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実効為替レートの計算方法
日本銀行が行っていた名目実効為替レート計算手法に準じ、ウエイトを各年で更新して集計する連鎖指数方式を用いる。t年第m期(m番目のサンプル日)のj産業の名目実効為替レート(NEERj,t,m)は、以下のような算式で算出される。
ただし、Et-1j,t,1はj産業のt-1年の輸出額ウエイトを用いて計算されたt-1年第1期(当該年の最初のサンプル日)からt年第1期までの同レートの変化率、Etj,t,mはj産業のt年の輸出額ウエイトを用い、以下の加重幾何平均算式で算出されるt年第1期から第m期までの名目実効為替レートの変化率。

(ただしERi,t,mはt年第m期におけるi国の対円名目為替レート、Wi,j,tはt年におけるj産業のi国に対する日本の輸出ウエイト)
このように連鎖指数方式の産業別名目実効為替レートは、「産業ごとに当該年の輸出額ウエイトを用いて算出される、各年の名目実効為替レート変化率の積」となる。日本の産業別名目実効為替レートの計算の流れは以下のフローチャート通りである。

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実効為替レートの基準時点
実効為替レートは2000年1月の最初のサンプル日を100として指数化し、算出している。
