FTAの「スパゲティボール現象」とは?:投稿意見

小寺 彰
ファカルティフェロー

95年以後のFTA急増も議論に影響

ケンブリッジ大学LLM 矢島頼介

ご指摘の通り、原産地規則の複雑さを指して「スパゲティボウル現象」と呼ぶのは日本特有であり、実際、バグワティが共同執筆した最近の報告書では、スパゲティボウルの説明において原産地規則に触れてさえいません。

従来の議論と違い、この報告書でバグワティが原産地規則に言及しなかった理由の背景には、よく知られている通り、近年のFTAの急増があると思います。「スパゲティボウル現象」の用語が初めて使われた95年当時、発効していた地域貿易協定は60に過ぎませんが(CRTAまとめ)、現在は193にのぼり(06年3月1日)、この他に通報されていないものも100を超えるといわれています。ご指摘の通り、FTAの増加自体が、不可避的に貿易歪曲をもたらしていると考えられます。

原産地規則の複雑さを指して「スパゲティボウル現象」とする誤用は、直ちに改めるべきものと思います。参考までに当該報告書の関連部分を抜粋します。

What has been termed the "spaghetti bowl" of customs unions, common markets, regional and bilateral free trade areas, preferences and an endless assortment of miscellaneous trade deals has almost reached the point where MFN treatment is exceptional treatment. Certainly the term might now be better defined as LFN, Leas-Favoured-Nation treatment. (The Future of the WTO, 2004, at para. 60)

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