中国経済新論:世界の中の中国

中国主導で相次いで設立される国際開発金融機関
― 既存の国際金融秩序への挑戦になるか ―

関志雄 経済産業研究所 コンサルティングフェロー

中国は、習近平政権の下で、従来の「韜光養晦」(目立たずに力を蓄える)という方針を大きく転換し、より積極的な外交を展開するようになった。その一環として、自らの主導で、新開発銀行(New Development Bank, 以下NDB)や、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank, 以下AIIB)など、新しい国際開発金融機関の設立を進めている。

まず、2014年7月15日、中国、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカの新興5ヵ国(BRICS)はブラジルのフォルタレザで開催された首脳会談で、NDBと外貨準備基金の創設に関する合意文書に調印した。NDBの資本金は当初500億ドルで、5ヵ国が均等に出資。最終的には1,000億ドル規模への拡大を目指す。本部は上海に置く。初代総裁はインドから出すが、今後、BRICS各国が順番で担当することになっている。外貨準備基金は1,000億ドルの規模で、中国が410億ドル、インド、ロシア、ブラジルがそれぞれ180億ドル、南アフリカが50億ドルを拠出する。NDBと外貨準備基金の関係は、世界銀行とIMFの関係に似たようなものになると考えられる。

次に、習近平国家主席が2013年10月に東南アジア歴訪中に提唱したAIIBは、2014年10月24日に、中国、インド、シンガポールをはじめとする21ヵ国の代表が北京で設立に関する覚書に調印した。その後、インドネシア、ニュージーランドなども加わり、2015年1月現在、メンバーの数は27ヵ国に達している。AIIBの法定資本金は1,000億ドルとし、当初は500億ドル規模から始める。出資比率は、各国のGDP規模を反映させるように決め、中国は最大の出資国となる。本部は北京に置く。

そして、上海協力機構開発銀行、上海協力機構発展基金の設立も検討されている(注1)。

中国政府による公式の説明では、これらの機関を設置する狙いは、資金不足に直面している発展途上国のインフラ建設と持続可能な発展を促進することであるが、アジアおよび世界における中国の影響力を高めるという狙いもあろう。これに対して、米国は、中国がNDBとAIIBを梃子に既存の国際金融体制を揺るがそうとしていることを懸念している(Ratner, Ely, "Making Bank - Why China's new infrastructure bank represents a challenge to the global order," foreignpolicy.com, October 23, 2014)。実際、米国は一部の国に、アジアインフラ投資銀行に参加しないよう説得していたと伝えられている(Perlez, Jane, "U.S. Opposing China's Answer to World Bank," The New York Times, October 9, 2014)。米国の圧力を受けたせいか、日本、韓国、オーストラリアといった有力な候補は設立計画への参加を見送った。

米国のこのような疑念に対して、中国は次のように答えている。

まず、中国財政部の関係者によると、NDBは、インフラ建設および持続可能な発展を促進するという役割において、現行の多国間および地域の開発銀行と相互補完する。また、NDBの設立は、BRICS諸国の国際経済事務における影響力と発言権を強めながら、グローバル経済ガバナンスシステムの公正で合理的な方向への発展を促進することができる(新華社、「BRICS開発銀行発足は一里塚としての意義がある」、2014年7月15日)。

また、中国財政部の楼継偉部長は、世界銀行とアジア開発銀行(ADB)など、既存の国際開発金融機関が主に貧困削減を目指しているのに対して、AIIBがアジアにおけるインフラ建設の推進を主要業務としていることから、両者は競争関係ではなく、相互補完関係にあると強調している。その上、中国はAIIBを強力に支援するため、50%まで出資する意向を示していたが、必ずしも50%にこだわることなく、参加国が増えることにより、中国の出資率は下がっても構わないと説明している(新華網、「財政部長楼継偉がアジアインフラ銀行の設立準備について語る:世界経済の発展のウィンウィンに寄与」、2014年10月24日)(注2)。

しかし、NDBとAIIBが期待されているこのような効果を上げることができるかどうかを判断するのは時期尚早である。NDBに関して、政治・経済状況が大きく異なるBRICS 5ヵ国が一緒に協力し合うことは、決して容易ではない。一方、AIIBに関しては、圧倒的な力を持つ中国がその立場を利用し、もっぱら自国の利益を追求することがないかが懸念される。これらの課題を克服することは、両機関が成功するための前提条件となろう。

2015年3月4日掲載

脚注
  1. ^ NDBとAIIBとは別に、2014年11月8日に、習近平主席は中国が400億ドルを出資して「シルクロード基金」を設立すると発表した(習近平、「コネクティビティー・パートナーシップ会議」での演説)。同基金は、同年末12月29日に正式に発足した。ただし、NDBとAIIBと違って、国際機関の形を取らず、中国人民銀行が管轄し、外貨準備のほか、中国投資有限責任公司(CIC)、中国国家開発銀行などが出資している(「シルクロード基金の運営が始まった」、中国人民銀行ウェブサイト、2015年2月16日)。
  2. ^ IMFと世界銀行を中心とする既存の国際金融秩序に異論を唱えてきたノーベル経済学賞受賞者であるコロンビア大学のJ・E・スティグリッツ教授も、中国が主導する新しい国際開発金融機関の設立を支持している (Stiglitz, Joseph E., "The Chinese Century," Vanity Fair, January 2015)。

2015年3月4日掲載