ごあいさつ

我が国は、先進国のメンバーとして世界経済全体の成長と安定に強い関心を有するとともに、アジアにおいては産業・貿易・投資・援助等を通じて地域内の密接な結びつきを形成している。近年、世界各地で地域統合の動きが活発化しているが、アジアにおいてはすでに事実の問題として、発展段階を異にする各経済間に強い産業連関が存在しており、それがこの数十年来「アジアの奇跡」「世界の工場」の原動力として機能してきた。この状況は世界に例をみないものであり、我が国はこのアジアダイナミズムの主要なプレーヤーであると同時に、我が国自身の産業的活力がアジアに広がる生産ネットワークの帰趨に依存している。

この研究会の目的は、アジアダイナミズムの展開に深い関心と責任をもつ我が国が、明確なビジョンを確立し、それと整合的な諸政策を実施するための分析と提言を行うことにある。援助政策については、行財政改革のもとでODA削減が求められているなか、我が国としていかなるビジョンに基づき何を実施すべきかが問われている。また、そもそも現在の我が国の通商政策、援助政策、国内経済政策は必ずしも統一されたビジョンに導かれておらず、ときに矛盾を発生させているようにみえる。我が国の経済社会が構造改革に成功し、さらなる発展を遂げるためには、アジアの繁栄と我が国の繁栄を結合させうる長期戦略を策定する作業が不可欠となっている。

本会の活動がそのような知的作業の場を提供し、議論の活発化のための触媒となることを希望する。