From IZA

職場におけるインフォーマル学習の重要性
労働者の人的資本開発には研修よりOJT学習が重要

アンドリース・デ・グリップ
Maastricht University, the Netherlands, and IZA, Germany

概要

初期の人的資本論でも労働者の経験の重要性を認識してはいたが、その焦点は教育と正規の研修にあった。最近の研究では、新しく雇用された労働者のパフォーマンスの大部分は、職場における実践を通したOJT学習や、同僚や上司から学ぶことで向上することが明らかとなっており、記述データでも、労働者が仕事で行うさまざまな作業から多くの学びを得ることが示されている。職場でのインフォーマル学習は、若い労働者のパフォーマンスにとってより意味があるけれども、すべての年齢層にとっても重要と思われる。インフォーマル学習は労働者の人的資本開発には正規の研修コースよりもはるかに重要である。

主な研究結果

プラス面
  • インフォーマル学習は、労働者のパフォーマンスにとって研修より重要である。
  • 実践を通したOJT学習は、多くの場合、生産的な仕事の副産物として自然発生的に得られる。
  • インフォーマル学習は、派遣契約等の労働者にとって非常に重要である。
  • 入社1年目の新入社員のパフォーマンスが劇的に向上する。
  • 職場の同僚間での知識の伝播が企業全体の生産性に寄与する。
マイナス面
  • インフォーマル学習で習得したスキルは、研修で習得したスキルに比べ、その職場以外の職場では認識されにくい。
  • 習熟度が低く仕事の生産性が低い労働者の場合、インフォーマル学習にはコストが発生する。
  • ほとんどの企業には、職場におけるインフォーマル学習の最適化を目的とした適切な人的資源管理戦略がない。
  • インフォーマル学習が労働者のパフォーマンスに及ぼす因果関係は、まだ明らかではない。
  • インフォーマル学習に関する経済関連の文献は限定的である。

著者からのメッセージ

新入社員のパフォーマンスの劇的な向上や、労働者が新しいスキルを得られる作業に割く労働時間の割合の高さから、インフォーマル学習は職場における人的資本開発の主な推進力となっていることがわかる。職場の同僚間の知識の伝播もまた、インフォーマル学習の重要な一部である。求められるスキルの急速な変化や定年年齢の上昇を受け、インフォーマル学習は労働者が生涯を通じて現役として働き続けるために一層重要になっている。しかしながら、政策は依然として教育や研修を重視する傾向にあり、企業も多くの場合、職場におけるインフォーマル学習から得られる利益の最適化には努力不足なのが現状である。

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本稿は、2024年3月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2024年4月4日掲載)を読む

2024年4月9日掲載