世界の視点から

私が日本を信じる3つの理由

Tommy KOH 日本・シンガポール・シンポジウム共同議長

序章

30年前、日本は世界中から、安定的で繁栄した、競争力の高い民主国家として賞賛を受けていた。当時については、ハーバード大学の高名な学者であるエズラ・ヴォーゲル(Ezra Vogel)氏のベストセラー、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に詳細に描かれている。その一方で、日本に対して脅威を抱く米国人もいた。彼らは日本を悪者扱いし、日本は米国の新しい敵だと不当に決めつけた。このような状況は、1985年のプラザ合意で佳境を迎える。日本は欧米の圧力に屈し、円の大幅な切り上げに合意したのだ。円高は日本の輸出産業にとって大きな試練となったが、同時に、日本人は裕福さとお金が溢れる感覚に酔いしれた。その結果、日本は、海外では浪費にあけくれ、国内では資産バブルを招いた。1990年代初頭にバブルが崩壊すると、日本は破滅的と言えるほどの状況に追いやられた。この後始末には長い年月を要した。

進化する政治システム

日本では5年間で6番目の首相が選ばれたばかりである。このような状況は明らかに異常で望ましくはない。しかし、この問題は大局から正しく語られるべきである。第二次世界大戦以降数十年間にわたり、日本は自由民主党政権によって統治されてきた。事実上、日本は一党支配国家であった。自民党の一党支配は政治に腐敗がおこり、各政権がそれまでと異なるかたちで政府を率いた。しかしその任に堪えられず、政権は消滅した。その間に、民主党が自民党に代わる政党として登場した。日本が安定した二大政党制に移行するまでには、あと数年かかるだろう。しかしながら、私は二大政党制が実現すると確信している。長い目で見ると、一党支配への依存よりも二大政党制のほうが、日本の民主主義をより持続的で良質にしていくだろう。

日本人の強さ

自然災害の多い日本の歴史の中でも、2011年は特に「最悪な年」として後世に記憶される年となるだろう。地震、津波、原子力発電所事故という3つの災害によって日本人の道徳心は試されたが、その強さは見事に証明された。粘り強さ、決意の固さ、勇気、自制心、団結力、そして公共心といった日本人の最もすばらしい資質が示されたのである。私が日本の将来を楽観視する第1の理由は、その国民性である。日本人は国難に伴う多くの課題を必ず乗り越えると私は信じている。

日本の労働力

私が日本の将来を楽観視する第2の理由は、日本の労働力の質の高さである。日本の労働者は、世界の中でも最高レベルの教育と訓練を受けており、生産性の高さにおいてもトップクラスであるからだ。

職業倫理と卓越性の文化

第3の理由は、日本人の職業倫理の高さと卓越性の文化である。日本人は非常に勤勉である。怠け者の日本人はあまり見かけない。さらに日本では、卓越性を追求する文化が広く浸透している。日本の労働者はみな、たとえ地味な仕事であっても、自分の仕事の中で何かを追求しようとする。日本人は仕事に誇りを持っているのだ。

科学・技術・イノベーション

先進国同士の競争は、以前にもまして技術やイノベーションが原動力となっている。日本はイノベーションと新しい技術において素晴らしい実績を持っており、かつては家電や白物家電の分野で世界を席巻した。日本は自動車業界においても、ハイブリッド車、電気自動車、それ以外の低燃費車の製造分野で世界のリーダーである。さらに、環境関連技術、ロボット工学、航空学、ゲーム技術、アニメ、写真技術等の分野においても、世界をリードしている。

グローバルなトップ企業

日本は、世界的に有名なトップ企業を輩出してきた。フォーチュン・グローバル500には日本の企業68社がランクインしている。トヨタ、パナソニック、ソニー、日立製作所はトップクラスだ。楽天や「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリングなどの企業もいずれ仲間入りできるだろう。この2社は、社内共通語に英語を採用しており、こうした取組みによって国際競争性が高まるだろう。日本にとって大切なことは、グローバルなトップ企業をもっと創出することである。なぜなら、このような企業の収益性は高く、能力のある人材を惹きつけ、良質な雇用とイノベーションを生み出すからである。

日本のソフト・パワー

日本は世界から好意的に受け止められている。日本は平和で美しい国として世界中で賞賛されている。ちりひとつなくきれいで、環境の管理は素晴らしく行き届いている。日本は長く豊かな歴史を持ち、芸術や工芸の伝統は丁寧に受け継がれている。日本社会は、繁栄と社会の調和という両方の側面を持つ。生活の質は高く、日本食は世界の食文化の一角となった。日本人は礼儀正しく親切で、思慮深いと考えられている。また日本人の内面の強さや不屈の精神も、称賛の的だ。これを示す最近の事例は、なでしこジャパンチームによる女子サッカーワールドカップ優勝だろう。

日本の課題

日本は多くの課題に直面している。中でも最も重要なのは、3月11日の東日本大震災に関連する3つの災害からの復興、日本企業の再構築とグローバル化の必要性、少子高齢化問題の決然たる対処、能力ある外国人の誘致、そしてアジア諸国との関係強化、といった課題である。さらにもうひとつ、日本の将来にとって根本的な課題がある。それは、日本人の考え方そのものを変革する必要性である。日本は長らく世界で受け入れられてきた。今こそ、日本が国を開き、世界を受け入れる時である。この変革が実現されれば、明治維新並みの大きな影響を日本の将来に与えるだろう。

本コラムの原文(英語:2011年9月16日掲載)を読む

2011年9月15日掲載

2011年9月15日掲載

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