上場企業における女性活用状況と企業業績との関係-企業パネルデータを用いた検証-

執筆者 山本 勲  (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2014年3月  14-J-016
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

本稿では、2000年代以降の近年の日本の上場企業のパネルデータを用いて、企業における女性活用の状況を明らかにするとともに、女性活用によって企業業績が高まるか、その要因にどのようなものがあるかといった点を検証する。分析の結果、正社員女性比率が高いほど企業の利益率が高まる傾向があることがわかった。特に、正社員女性比率が30~40%の企業で利益率が顕著に高くなっているほか、年齢層別にみると結婚・出産・育児などで正社員女性が激減する30歳代の正社員女性比率が高い企業ほど、利益率が高くなることが明らかになった。また、中途採用の多い企業やWLB施策が整っている企業では、正社員女性比率の影響がより顕著であり、そうした企業では人件費節約だけでなく生産性自体の向上を通じて、女性の活用が企業業績を高めている可能性が示唆される。一方、管理職女性比率については全般的には利益率との明確な関係性は見出せなかった。ただし、中堅企業や中途採用の多い企業、あるいは、新卒女性の定着率が高い企業では、管理職女性比率が利益率にプラスの影響を与えることが確認できた。そうした企業では女性の働きやすい環境が整備されており、そこで女性を管理職へ登用するなどの活用を図ることで、女性の高い潜在的な能力やスキルが活用され、生産性自体が高まった可能性が示唆される。以上のことから、企業における女性活用は人件費節約あるいは生産性向上を通じて企業業績を高める可能性を有しているといえる。