日本・中国・韓国企業におけるジェンダー・ダイバーシティ経営の実状と課題-男女の人材活用に関する企業調査(中国・韓国)605企業の結果-

執筆者 石塚 浩美  (産業能率大学)
発行日/NO. 2014年2月  14-J-010
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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概要

日本、中国、および韓国は、北東アジアに位置する隣国であり、男女別役割分業に関係する儒教的な考えを有し、職場での男女間格差が認められる点で共通している。今後、アジア経済や世界経済に果たす役割は増し、企業進出や就業者移動は増加すると考えられる。

本稿の目的は、日中韓3カ国の企業調査データを用いて「ジェンダー・ダイバーシティ経営」(職場において男女という多様性を取り込むことにより成果につなげる企業経営)の実状を比較して、他から学ぶべき点は学ぶことにより、特に日本における女性人材の活用と、経済活性化に貢献することである。具体的には、1.企業業績と女性活用、2.女性雇用“量”、3.昇進という女性雇用の“質”、4.ワークライフバランスと制度・慣行システム、のいずれも日中韓比較、および5.韓国の積極的雇用改善措置制度(AA制度)が女性雇用に及ぼす影響、の5つの課題を検討する。

主たる結果は次のとおりである。日本女性の労働力率は低くはないが、M字の左右の山の待遇格差が問題といえる。係長昇進は男女共に30歳代後半という「遅い昇進」だが、女性はそれ以前の辞職者が多い。中国都市部の企業では、雇用者・管理職・経営層の女性比率が、日韓に比べて高い。女性保護的な制度が殆ど無く、就業時間は長すぎず、継続就業者が多い。但し「男女別定年制」や「一人っ子政策」など特異な背景もある。韓国は、女性労働力率が日本より低く就業中断傾向がある。一方で女性は日本より「早い昇進」である。AA制度導入後に、就業者・管理職・経営層の女性比率は逓増している。