産業集積と労働市場-リスクシェアリングを通じた集積効果

執筆者 中島 賢太郎  (一橋大学経済研究所) /岡崎 哲二  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-025
研究プロジェクト 産業集積と労働市場
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概要

本稿の目的は、労働市場を通じた産業集積の効果について実証的に明らかにすることである。企業の集積による労働プーリングは企業固有の生産性ショックをシェアすることを通じて企業の期待利潤の上昇に寄与する可能性があることが理論的に示されてきた。本稿では日本の工業統計個票を用いて産業ごとに、その産業に属する事業所に固有のショックの大きさを測定し、それと集積との関係について実証的な検討を行った。その結果、事業所固有ショックの増大は統計的に有意に産業の集積を促進することが示され、その効果はその他の集積要因の制御や、推定式の特定化について頑健であることが示された。このことは、産業集積のベネフィットの1つとして労働プーリングによるリスクシェアリングを通じた企業利潤上昇効果が存在することを示唆する結果といえる。