企業結合規制における効率性の位置づけ

執筆者 川濵 昇  (ファカルティフェロー) /武田 邦宣  (大阪大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-022
研究プロジェクト グローバル化・イノベーションと競争政策
ダウンロード/関連リンク

概要

独禁法による企業結合規制において、どのように効率性を評価すべきか。企業結合が生み出す効率性が我が国経済にとって重要であるにもかかわらず、いまだ議論の土俵がない状況である。本稿は、まず、米国反トラスト法やEU競争法の検討から、公取委によるガイドラインが示す立場が「消費者厚生基準」と呼べるものであることを明らかにする。また、効率性を抗弁と明示するカナダ競争法の検討から、総余剰基準について社会的合意を得ることの困難さ、比較衡量の困難さを明らかにする。そして、諸外国の規制実務の趨勢と同じく、我が国においても「消費者厚生基準」を採用すべきことを前提として、「効率性なかりせば違法」な企業結合を効率性ゆえに適法とするための独禁法上の解釈論、また市場横断的に発生する効率性を評価するための独禁法上の解釈論、立法論を検討する。