やさしい経済学―予測に挑む「期待を組み込む」

第8回 外生ショックが変動生む

藤原 一平
ファカルティフェロー

期待を明示的に組み込んだ動学モデルを用いると、金融政策の時間を通じた効果や、期待の管理を通じた時間軸効果が計測できます。「動学確率一般均衡(DSGE)モデル」が中央銀行をはじめとする政策機関で用いられるようになってきたのも、そのためです。

今までDSGEの「D(Dynamic=動学)」の部分に焦点を当ててきましたが、「S」「GE」の部分についても簡単に説明しておきましょう。

S(Stochastic=確率)は、このモデルが景気変動は、ある確率で何らかのショックが外から与えられることによって生じているとの推計に基づき、構築されていることを意味しています。

ショックがなくても、在庫循環など、経済内部で生まれる変化から景気循環が発生するとの見方もあります。しかし、最近では、予期しえなかった技術進歩や石油価格の高騰といった何らかの外生ショックが加わり、景気が変動するという見方が支配的になっています。

GEの部分は「一般均衡(General Equilibrium)を意味しています。経済学を学んだことがない人にとって、なじみがない言葉かもしれません。均衡とは、需要と供給が釣り合うように市場価格が決まる現象を指す経済学の用語です。

経済の中には雇用が決まる労働市場や、モノが取引される財市場など様々な市場があります。これらを個別に分析するのではなく、1度全ての市場が均衡する状態を分析する理論が「一般均衡論」です。

財政・金融政策分析では、財市場、労働市場、金融市場など経済全体に対する政策効果を評価する必要があるので、一般均衡の枠組みが重要視されています。

DSGEモデルといっても様々なものがあり、中央銀行等の政策機関の使用するモデルの多くは「ニュー・ケインジアン・モデル」と分類されるものです。

2014年6月23日 日本経済新聞「やさしい経済学―予測に挑む『期待を組み込む』」に掲載

2014年7月11日掲載

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