子ども・子育て支援金の徴収が、医療保険料への上乗せという形で始まった。1カ月あたりの追加徴収額は被用者保険加入者平均で数百円だが、これまでも個人・企業の社会保険料負担は累次にわたり引き上げられてきた。社会保険料の増加は現役世代の手取り収入に影響するだけではない。日本の潜在成長率の低下要因にもなっている。
国、地方自治体等を合わせた政府全体の歳入構造変化を見ると、2000年以降の2回の消費税率引き上げにより、消費税収は国内総生産(GDP)比で2ポイント近く上昇した。所得税、法人税の税収もあわせて2ポイント高まったが、個人・企業の社会保障負担の増加は4.3ポイントと最も大きい。
先般公表された経済協力開発機構(OECD)の対日経済審査報告書は、日本の消費税率が主要国に比べて低いことを指摘した上で、18%まで1%ずつ段階的に引き上げることを提案した。
18%を「高い」と感じる人は多いだろう。しかし、政府債務残高が今よりずっと低かった01年の「経済財政白書」は、長期的な財政均衡を達成するためには、消費税率23%に相当する負担が必要だという数字を示していた。多くの研究も、高齢化が進む中で日本の財政を持続可能にするためには、消費税率を20%程度ないしそれ以上にする必要があるとしている。
いかなる形であれ、負担の増加は経済成長率を押し下げる方向に働くが、消費税はその影響が相対的に小さい。消費税は所得税や法人税に比べ、労働供給や投資を抑制する効果が限定的で、経済成長へのマイナスの影響が小さい税目だ。これは専門家の間ではほぼコンセンサスであり、OECDの報告書も同様の指摘をしている。
高齢化に伴って増加を続ける社会保障支出を賄い、さらに少子化対策も拡充しようとすれば、恒久的な財源が必要となる。何らかの形での負担増は避けられない。
潜在成長率の一層の低下を避ける観点から望ましいのは、消費税を中心とした負担増だろう。しかし、消費税率引き上げに対する国民の忌避感は強い。近年は国政選挙のたびに、多くの政党が消費税率の引き下げや撤廃を主張し、消費税率引き上げを極力回避しようとしている。
その結果、政治的抵抗が相対的に小さい社会保障負担の増加が続くこととなった。社会保険料は税金ではないが、労働供給や投資にネガティブな影響を持つ。この点で、経済成長への影響は所得税や法人税に近い。
消費税の負担は消費支出に比例的で、高所得者や高額資産保有者ほど多くなる。だが、所得再分配機能は持っておらず、たばこ税ほどではないにしても逆進性が指摘されている。消費税を負担増の中心に据えるなら、格差拡大を抑えるため、低所得者をターゲットにした別の政策と組み合わせる必要がある。
社会保障と税の一体改革で本来検討すべきは、消費税負担の歳入シェア拡大と給付付き税額控除の組み合わせだろう。これが経済成長と所得再分配を両立させる合理的なポリシーミックスである。
2026年6月19日 日本経済新聞「エコノミスト360°視点」に掲載