フランチャイズパラダイムシフトによる今後の可能性と課題

開催日 2002年11月5日
スピーカー 田嶋 雅美 ((株)フランチャイズアドバンテージ 代表取締役)
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議事録

司会(梅村)
日本にフランチャイズが上陸して40年になります。小売・物販・飲食・サービスなどさまざまな分野で展開し、私たちは日々、何らかの形でお世話になっています。そして今では、経済活動の重要な部分を担うに至っています。しかし、急激に成長した産業には問題がありがちなのもまた事実です。

今日は、こうした課題をご指摘いただき、フランチャイズビジネスに起こっている新しい動きを探り、さらにはフランチャイズビジネスを日本経済再生の秘策にできないか、ということも含めてお話しいただきたいと思います。

田嶋氏は、フランチャイズ専門コンサルティング会社を経た後、フランチャイズアドバンテージを設立されました。起業家でもいらっしゃるわけですので、時間があれば、起業家としてのご苦労にも触れていただきたいと思います。

また、吉野家・ブックオフ・三菱商事と合同でフランチャイズベンチャー育成ファンドに資金面でも乗り出していらっしゃいます。河合塾やセコムなどと子供の教育に関する共同事業にも進出され、八面六臂の活躍をされています。

田嶋氏
今日はまず、フランチャイズアドバンテージの事業からお話しさせていただきます。

フランチャイズアドバンテージの事業概要

私たちの事業は4つに分けられます。

1つ目は、フランチャイザー専門のコンサルティング業務で、比率でいえば、こちらが業務の90%程度を占めています。

フランチャイズというのは、大掛かりな事業計画なのです。最初にスタートアップするときは、大変な作業を伴います。加盟店開発・運営・財務・人事などさまざまな要素が絡んできます。

しかし、始めはどこも小さいため、大きな仕組みを作るのは大変です。それを、超一流コンサルタントの技術をコンパクトにまとめて、安く提供し始めたのが私たちの最初のビジネスモデルです。

最近は企業も大きくなってきて、勝ち組のフランチャイズをどう強くするか、あるいは新たにインキュベートするフランチャイズがどうやって勝ち組になっていくか、標準化やロー・コスト・オペレーションなど、そういったことを考えるに至っています。

2つ目に、最近では、チェーン向けの「ナレッジ・インフォメーション・シェア・システム」を開発し、販売しています。これは、優秀な店長などの思考プロセスをそのまま箱に入れていくというやり方です。

3つ目ですが、私たちがコンサルティングを始めた頃、世間のフランチャイズに対するイメージは、胡散臭いというものでした。外資系のコンサルティング会社も胡散臭いというイメージでした。だから、フランチャイズのコンサルティングというと、さらに胡散臭いという感じでした。そこで、日経新聞やその他の経済界を巻き込んで、問題提起をしたり意見を主張したりするフランチャイズ倶楽部を動かしていました。

4つ目は、先ほどもお話ししたように、フランチャイズベンチャー育成ファンドです。ベンチャーの仕組みは整っているのにもかかわらず、資金がないために、さらなる成長を期すことができない企業のための支援をしています。

フランチャイズの定義

本題に入る前に、フランチャイズの定義を整理しておきたいと思います。
事業を始めようとする場合、2つの方法が考えられます。
1つ目は、自己資本によって直営で増やしていく方法です。
2つ目は、他人の資本を導入する方法です。
その中で、他人の資本を導入し、ブランド力を維持しながら、最適に事業を進めていくのがフランチャイズです。
フランチャイズとは、第三者と富やリスクを分散することを取り決めるシステムを指しています。独自開発したブランドや運営・教育指導ノウハウを加盟店が使用することを許諾します。加盟店側はその指導許諾と引き替えに、ロイヤリティー・加盟金・研修費を支払います。

極論すれば、本部と加盟店との間の契約形態は1つではありません。しかし、運用上は、1店ずつ違えば、それは大きな負担となるため、実際には1つになってしまいがちです。また、フランチャイズ契約は発展に応じて変化していっても構いません。

スタートアップタイプ

起業(スタートアップ)のタイプは4つに分けられます。

1つ目は、AVレンタルチェーンのT社やファーストフードチェーンのA社、コンビニエンスストアのB社やC社がこれにあたりますが、自社ネタで市場を形成しようとするタイプです。

2つ目は、コンビニエンスストアのD社やファーストフードチェーンのE社のように、どこかでやっていたものを持ってきて、一気に市場形成を狙うものです。

3つ目は、自社でネタを開発したけれども、のれん分けの形でフランチャイズ展開を図るものです。宝石のF社などがこれに該当します。

そして4つ目は、他社ネタを持ってきて、のれん分けの形で展開していくというものです。

フランチャイズのパラダイムシフト

最近、専門家の間で、フランチャイズのパラダイムシフトということが議論されています。それはどのようなものでしょうか。

1つ目は、大手フランチャイズの(フランチャイ)ジーの反乱です。これは、コンビニエンス業界や清掃業界のような神話化された本部、昔であれば誰も文句がいえなかった企業のフランチャイジーが反乱を起こしています。

マスコミからはフランチャイズの形態が悪いからだと批判されますが、それは問題外です。

2つ目は、フランチャイズベンチャーのIPOです。

フランチャイザーが短期公開をすれば、そこには投資家が集まり、投資ファンドが増加します。今までハイテクベンチャーが騒がれました。たしかに一時的には儲かりましたが、長続きせず、株式市場としても面白くない風潮が高まりました。そうした中でフランチャイズが注目され、サポートビジネスモデルが登場してきました。ただ、サポートビジネスモデルに対する疑念も生まれてきました。有名なフランチャイズでいえば、無理な出店をしてしまいました。ビジネスモデルを教育しながら実現するため、時間がかかってしまいます。また、物件に関して、成功モデルの立地を得られるかどうかはかなり時間がかかるのです。今、サポートビジネスモデルに関しては、物議が醸されているところです。 (フランチャイ)ザーの立場からいえば、300店を超えれば、儲かる時期のようです。100億・100店で注目される時期だそうです。直営比率が高いと、200店位で儲かる時期のようです。1000店を目指せるビッグチェーンはそんなにありません。300店くらいのチェーンは結構出てきます。

3つ目は、メガフランチャイジーが台頭してきたということです。

フランチャイジーの一般認識としては、個人加盟店を想起することが多いかと思いますが、最近では、フランチャイジーがフランチャイザーを買収することも起こっています。フランチャイジーは地域の中で顧客を持っている。そのため、1つのフランチャイズがだめになっても、別のフランチャイズを持ってくることができます。経営母体は安定しています。本部がだめになってきたら、本部を買おうという向きも出てきます。

地方企業の再生策としてのフランチャイズ活用

メガフランチャイジーの例を紹介したいと思います。静岡県のある紳士服販売店の例です。もともとは紳士服の販売店でした。市場が低迷し、紳士服の売り上げが伸び悩み、会社を縮小していた中で、ビデオ・CDレンタルチェーンや中古書籍チェーンなどに加盟しました。

紳士服販売店でありながらそうしたことができた理由として、物件を持っていたことが挙げられます。バブル期に、10年くらいの期限で、しかもかなり高い家賃で借りていました。契約を解除するわけにもいかず、フランチャイズに加盟したところ、それは成功し、今では売り上げの65%を占めるまでに業態がシフトしていきました。

本業でやってきたことに加え、フランチャイズをも取り入れて、企業の再生を図ろうとしているところもあります。

フランチャイジーの分類

では次に、フランチャイジーを5つに分類してみたいと思います。
1つ目は、今まで多く見られた、脱サラのような個人独立型です。
2つ目は、商店街の店主など、中小零細業種店が業種転換する形です。
3つ目は、最近よく見られる、地方優良企業が、新規事業としてフランチャイズに加盟するというものです。
4つ目は、鉄道会社や百貨店などの大企業が、新規事業としてフランチャイズに加盟するというものです。
5つ目は、既存のフランチャイザーやフランチャイジーなどこの業種に関与している者が、別のフランチャイズに加盟する形です。

教育技術のパラダイムシフト

今、私が取り組んでいる事業の1つに、教育があります。
今の学校は、先生が学生に教えるという図式で成り立っています。

しかし、こうしたやり方では学生たちは主体的に学ぶことができません。そこで私たちは未来の学校の姿として、やりたいことを自由に取り出せ、引き出せるシステムを構築することができるようなシステム開発を進めています。

フランチャイズ成長戦略

フランチャイズを成功・成長させるためにはスタートアップが肝心ですが、それには戦略を持ち合わせていることが必要条件になってきます。
特にスタートアップの時期には、出店戦略と商品戦略が重要です。
そして、成長させていく戦略として、国内だけにとどまらずに事業を進めていく国際戦略や、組織をいかにうまく機能させるか、財務や資本をどうするのかといった戦略についても追求する必要があります。

フランチャイズパラダイムシフトの課題

先ほど、フランチャイズパラダイムシフトとして、3つの点を指摘しました。それぞれについて、今後の課題を見ていきたいと思います。

1つ目は、大手フランチャイズのジーによる反乱についてでしたが、個々の企業のフランチャイズ戦略が重要になります。大手フランチャイズの構造改革が必要であり、そしてフランチャイズベンチャーを展開する戦略がよりダイナミズムを帯びてくることでしょう。

2つ目は、フランチャイズベンチャーのIPOについてでしたが、情報開示や投資には評価眼が必要だということです。そのためにフランチャイズ研究や教育が必要になってくるのです。

3つ目は、メガフランチャイジーが台頭してきたということでしたが、フランチャイズ発展への導きとインフラ整備が必要でしょう。法的整備が進み、啓蒙活動が功を奏し、海外進出へのサポートがより充実することが求められます。

質疑応答

Q:

最近のフランチャイズの傾向についてお伺いしたいと思います。

A:

会社を始めて5~6年ですが、フランチャイズは増えてきました。不況期にフランチャイズは活性化します。それは、企業からスピンアウトして始める人が増えてくるからです。また、不況期には衣食住の基本が増えます。流通・外食は「モノ」よりも「サービス」が増えてきました。そして、ラーメン・カレーといった国民食に近いものの再生が増えてきました。

Q:

行政に対して要望はありますか。

A:

フランチャイズは増えてきています。悪いことばかりだと増えるわけがないのですが、詳細な統計がありません。大学の側でもフランチャイズの調査をきちんとして、教育を整えていただきたいと思います。データベースも作られていますが、まだまだ不十分です。公開するとフランチャイザーが得しないからです。創業ということでいえば、開業のためにお金をばらまいたが、素人だからうまくいかず、閉業率が高くなっています。社会人も学生も起業の教育を受けていないのです。これからうまくいくと思い、お金を出しても、失敗してしまいます。開業したときの可能性を高くすればよいのです。そのためのノウハウはチェーンに入れば学べます。自分の勉強にフランチャイズを使えばいいと思います。フランチャイズでお金をためて、自分のやりたいビジネスを始めている人もいます。

Q:

今日までの成功には何が役に立ちましたか。

A:

自分の起業家精神だと思います。9歳のころから稼いでいるからではないでしょうか。フランチャイズという領域はありませんでしたが、こうすればいいというビジネスモデルを作っていきました。

Q:

途中でフランチャイザーが店をたたみたいといった時はどうするのでしょうか。契約は何年くらいで、どちら側に解約オプションがあるのかお答えいただきたいと思います。

A:

昔は契約期間が長かったのですが、今はそうでもありません。最近は、契約期間を短くするところが増えてきています。本部が倒れたときのことは契約書上うたわれていません。契約が解除されるだけで、損害賠償の明文化もないのです。
今後どうなるかといえば、今までは本部が倒れることは意識していませんでしたが、加盟店は自己責任で対応しなければなりません。フランチャイザーの品格として、不振店が発生したときに、どのような救済措置をするかということが課題だと思っています。

Q:

法的整備には何が重要でしょうか。

A:

中小小売商業振興法(小振法)と公正取引委員会のガイドラインを徹底的に施行することが大事だと思います。大きいところはいいのですが、小さいところはガイドラインが変わったことすらも知らないのです。欺瞞的顧客誘引はやってはいけないとなっていますが、実際には野放図の状態です。基幹店を持っているところと持っていないところとは違います。指針を出して、理論武装できる指標をつくるのです。本来なら摘発していくことによって、予防効果につなげることもできるでしょう。しかし、それでは加盟店に迷惑をかけるのではないかとも思います。

Q:

情報開示についてお伺いします。必要な情報とは何でしょうか。

A:

情報開示している内容を規定することです。これは何を示して標準店と呼ぶか、改善されたものを徹底的にやるのです。個人的には財務諸表の公開や格付けは、ベンチャー企業への評価眼と連動しないと危険だと思います。フランチャイジーへの評価もしないといけません。フランチャイジーとして成功するためには、ジーの側にも経営能力が必要です。本部をかえるところも出てきています。

Q:

多くの企業は経営の拠点をアジアに移しています。そこでは、フランチャイザーがフランチャイジーを兼任しています。アジアに出て行くことのメリットは何なのでしょうか。

A:

フランチャイジーの立場でフランチャイザーを見るのです。アジアの中では日本信仰は根強いものがあります。それに対して、日本人の側はアジア諸国に対する意識が低いわけですが、彼らは日本のきめ細やかな、フランチャイズ形式を求めています。アジア諸国では、政治がまだまだ安定しておらず、サポートの土壌が整っていないのです。そこが難しいところだと思います。

Q:

資本はどのくらいで回収するのでしょうか。フランチャイザーの収益構造はどうなっているのでしょうか。

A:

従来の契約期間は、一般には5年でした。最近は、低投資で、投資回収が早く、3年回収が基本になっています。加盟金は、従来5~6千万円だったのですが、今は3~4千万円です。業態によって違いますが、ロイヤリティーは3~5%ではやっていけないので10%です。総売り上げを半々に分けるイメージが強いですが、12~13%取れたらすごいと思います。加盟金とロイヤリティーは、ロイヤリティーの収入でまかなえるのが当たり前の構造です。加盟金の収入がないとやっていけないフランチャイザーもあります。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。