政策シンポジウム他

アメリカ公共図書館のビジネス支援

イベント概要

  • 日時:2003年7月11日(金)13:00-18:00
  • 会場:国際連合大学ウ・タント国際会議場
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり)
  • 議事概要

    地域社会に根ざしたビジネス・サービス

    ジェニファー・コーエン (コネチカット州シムズブリー公共図書館 ビジネス担当司書)

    コネティカット州シムズブリー

    シムズブリーはコネティカット州で最も古いコミュニティの1つで、その歴史は1670年にさかのぼります。ファーミントン・リバー・バレーにある、人口2万3329人、面積約34.5平方マイル(89平方キロ)1 の町です。コネティカット州の州都ハートフォードの郊外に位置するシムズブリーは、高い評価(州内トップ)の学校制度や田園的な環境と歴史的魅力に富んだ町として知られ、居住環境にも恵まれています。高学歴で所得レベルが州平均を上回る中年層が住民の過半数を占めます。

    町は行政委員会によって運営されています。委員会は、2年に一度選ばれる主席行政委員1名と一般行政委員5名から構成され、各委員は金融理事会や教育理事会など、選挙で選出された代表者からなるさまざまな下部委員会によって支えられています。地域住民はタウン・ミーティングや予算承認のための住民投票を通して町の運営に自らの意見を反映させます。

    シムズブリーには、火薬製造、銅鉱業、農業など傑出したビジネス・産業の歴史があります。現在は、ハートフォード生命、エンサイン・ビックフォード、そして町そのものが最大の雇用者です。シムズブリーには1200を超える事業会社がありますが、うち77%は従業員10名未満の小規模会社で、5名未満の会社が64%もあります。町の課税評価事務所と商工会議所の推計によれば、シムズブリー所在の事業会社の約半数は在宅事業ということです。

    シムズブリーはブラッドレイ国際空港からたった20分ですが、メジャーなインターステート・ハイウェイまで車で30分かかるという点では不利な立地です。地価が高く主要な高速道路まで離れていることから、シムズブリーはこれまで、事業基盤を誘致・維持していく上で少なからぬ問題に直面してきました。かれこれ10年ほど、シムズブリーは産業・ビジネスにおける課税ベースの拡大をめざしています。現在、税収入の85%がホーム・オーナーから徴収されていますが、その負担を少しでも和らげようとしているのです。経済発展は地域の住民と企業にとって大きな関心事ですが、彼らは同時に、町のよさや魅力が損なわれることのないよう、じっくり注意深く考え抜かれた戦略に基づいた経済発展を目指すべきと考えています2

    シムズブリー公共図書館

    シムズブリー公共図書館は、州内でもっとも実績ある図書館の1つに数えられます。設立は1985年、面積2万1500平方フィート(1997平方メートル)、14万2000点を超える蔵書を有します。それほど大きな額ではありませんが安定的に資金援助を得ています。2003年度の予算総額は106万6771ドル、住民1人当たり46ドルです。年間貸出数は46万8405冊で、ちょうど住民1人当たり20冊ということになりますが、これは州平均の2倍以上です。2003年度の年間貸出数は前年度比7.5%の上昇3 となりました。シムズブリー公共図書館は、2002年のヘンネン・アメリカン・パブリック・ライブラリー・レイティングズ(HAPLR)のランキングで、国内公共図書館(全9000箇所)のトップ100の中に数えられています4 。革新的なプログラムや蔵書を揃え、大人と子供いずれに対しても卓越したサービスを提供することにかけて、この図書館には長い伝統があるのです。

    ビジネス・リソース・センター(BRC)- 進化

    かつてよりシムズブリー公共図書館は充実したビジネス関連の出版物を所蔵していました。ただし、企業の歴史、投資格付け、一般的な問い合せ先などを調べる上で役立つ投資や企業情報に関するものがほとんどで、企業家精神や創業に関するものはわずかでした。また、所蔵する資源のマーケティングや利用者に適切な指示を与えられるようにスタッフを訓練することについてはあまり重視されてこなかったため、蔵書全体が十分に活用されていないということが度々ありました。ビジネス・コミュニティに対するサービスを増やす必要性に気づいた理由はいくつかあります。

    1990年代初頭、地域の企業で多くの高学歴・高技能のホワイトカラーがレイオフされ、多額の解雇手当を受け取りました。彼らの多くは、退職金とそれぞれ持てる技能を使ってビジネス・コンサルティング事業を立ち上げるべく調査をはじめたのです。図書館のアダルト・レファレンス・デスクを担当する司書たちは、企業家としてどういう選択肢があるか模索しはじめたばかりの人々からの質問が増えていることに気づきました。さらに同じころ、新しく着任した図書館長のもとに、自ら事業を起こし、その事業のプロモーションの場として図書館が使えると考えた地元の企業家から、さまざまなビジネス・プログラムを提供したいという申し出が数多く届いていたのです。

    1994年には、町の開発計画のなかで、図書館はビジネス・コミュニティのニーズによりよく応えられるようにすべきとの指摘がなされました5 。これを受けて、図書館のスタッフや職員は、地元のビジネス・コミュニティの成長と発展を助けるためのビジネス・サービスについて考え始めたのです。利用者へのインタビュー調査を行うとともに、町、地方、州のビジネス・経済関連機関を訪問しました。その結果、初歩的・基本的なニーズが満たされていないことが判明したのです。夢や優れたアイデアを持つかけだしの企業家は、SBAのような州その他の関連機関に提出する書類をきちんと理解し、作成するために、事業経営について学ぶ機会を必要としていたのです。

    このような観察とニーズ分析の結果生まれたのがビジネス・リソース・センター(BRC)です。今やBRCは、町の経済発展のためのさまざまなツールのなかで最も重宝されるものの1つに数えられ、紛れもなくもっとも目立つ存在となっています。BRCは1999年9月に業務を開始しました。当初はパートタイムのビジネス支援司書だけでしたが、2000年7月からフルタイムのビジネス支援司書が配置されるようになりました。メイン・ストリート沿いの最も大きな建物の1つということもあり、町の中心におけるその存在自体が人々の注意を引きます。毎日850人もの利用者が訪れますが、その60%以上が常連利用者となっており、経済発展に尽力するセンターの姿勢は、このようにすでに組み込まれた多数の観客の目に明らかです。ビジネス情報資源についてきちんと訓練を受け、BRCが提供する情報資源とサービスをきちんとマーケティングできるフルタイムの司書の存在は、図書館の知名度を高める上で重要です。

    ビジネス・リソース・センター ― センターとサービスの詳細

    ビジネス・リソース・センター(BRC)は、レファレンス部門の中に設けられており、広さは約250平方フィートです。ビジネス関連の参考文献、ビジネス雑誌や新聞はすべてここに所蔵されており、小さな会議スペース、ビジネス・リンクやデータベースにアクセス可能なインターネット端末6台、掲示板、ビジネス・プログラムや組織に関するポスター、チラシ、パンフレットなどを掲示するためのボードも設置されています。BRCのすぐ側の部屋には、マイクロソフト・オフィスをインストールしたコンピューターが4台あります。さらに、ビジネス関連の新しい参考資料を紹介するため、小さい展示テーブルを置いたスペースがBRCの近くに設けられました。

    ビジネス参考文献は、厳密なデューイ十進分類法ではなく、仕事とキャリア、一般ビジネスと経済、企業情報、資産管理と投資という4つの機能分野別に分類されています。ビジネス関連の定期刊行物についても、一般の定期刊行物コーナーではなくBRCの中に置いています。BRCを開設するにあたり、ウォール・ストリート・ジャーナル、インベスターズ・ビジネス・デイリー、バロンズ、マネー誌など利用頻度の高い定期刊行物を一般の定期刊行物コーナーから移すことで、利用者をBRCに引き込み、ここで提供されるより幅広いビジネス情報資源について知ってもらうことができると考えたのです。移転をスムーズに行うために、新しい保管場所を示す案内を雑誌・新聞コーナーに掲示しました。

    電子データベースはビジネス・コレクションの重要な一角を占めます。さまざまな電子データベースについて機能、適用範囲、価格、図書館利用者の異なるニーズにどの程度応えられるか比較検討し、詳細な調査を行った後、レファレンスUSAとマージェント社のFISオンラインという2つのデータベースに投資することになりました。これらは、重要な企業情報を提供するだけでなく、仕事を探そうとしている人、小規模事業経営者、企業家、ビジネス専攻の学生、消費者を含むさまざまな図書館利用者にとっても利用価値のあるデータベースです。

    多忙な小規模事業経営者向けのサービスについては、シムズブリー公共図書館のウェブサイトが重要な窓口となっています。BRCに関する情報は、図書館のウェブサイト上のいくつかのアクセス・ポイントから入手可能です。BRCに関する詳細な情報を入手できるようになっており、次回のビジネス・プログラムの内容、「ビジネス・サイト・オブ・ザ・マンス(今月のビジネス・サイト)」というビジネス支援司書が選ぶ注釈つきビジネス関連サイト集へのリンク、Eメールでビジネス支援司書に直接問い合わせができる24時間ビジネス参照サービスなど、各種サービスを提供しています。

    無料のビジネス・プログラムやワークショップは、BRCがBRCの枠を超えてサービスを提供するもう1つの手段です。「ウェンズデイ・ナイト・イズ・ビジネス・ナイト(水曜日の夜はビジネス・ナイト)」というプログラムを一貫して開催していますが、こうした活動を通して、シムズブリー公共図書館が積極的に地域向けビジネス情報を提供していることを常に認識してもらえるようにしています。このプログラムは、秋と春に集中的に、ほぼ毎週開催されており、事業を始めようとしている人や小規模事業経営者から、発明家、職探し中の人、投資家、女性まであらゆる図書館利用者のニーズに応えようとするものです。各プログラムの日程や内容は、地元紙、ラジオ番組、シムズブリー商工会議所のニュースレターなどを通して告知されます。図書館内にもチラシを掲示し、過去の受講者にはEメールで次回のプログラムについて案内が届けられます。ビジネス情報担当の司書は毎回出席し、プログラムの冒頭、自己紹介と次回プログラムのプロモーションを行っています。また、各プログラム終了後、各参加者に「プログラム・エバリュエーション」用紙に評価を記入するようお願いしています。ビジネス支援司書は、この評価票に記入された意見を参考に、今後実施するプログラム内容を考え、人気の高いトピックについてはどれくらいの頻度で繰り返すべきかを決めます。こうしたプログラムは、あるトピックについての「スナップショット」と位置づけることができます。プログラムで取り上げるトピックに関する参考資料は室内に展示され、情報リストも入手できるので、受講者はプログラムが終了した後も引き続きそのトピックについて学ぶことができるのです。年間のプログラム数は、3年間で12から25にほぼ倍増しました。受講者数についても同様に心強い結果となっており、1999年はプログラム平均10名だったのが21名となり、中には40名から50名もの受講者が参加するプログラムもかなりあります。2002年9月から2003年5月までの期間に、延べ690名を超える人々がプログラムを受講しましたが、うち440名超はそれまで一度も受講したことのない新規の受講者でした。

    BRCのサービスは、退職企業幹部が運営する非営利のビジネス支援組織であるサービス・コープス・オブ・リタイアード・エグゼキュティブズ(SCORE)をはじめとするさまざまなグループとの協力によって拡充されています。図書館の利用者は、館内でSCOREカウンセラーに相談にのってもらうことができます。また、ユニバーシティ・オブ・ハートフォードの企業家センター、コネティカット・スモール・ビジネス・ディベロップメント・センター、コネティカット州ハートフォードにあるSBAのビジネス情報センターなど、地域で主催される他のさまざまな小規模事業支援プログラムに関する情報も提供しています。他の組織に関する情報も提供することで、図書館利用者がさまざまな場面で受けられる幅広い支援の選択肢を提示しているのです。

    ビジネス支援司書-役割と支援

    シムズブリー公共図書館が提供するビジネス・サービスで重要な役割を果たしているのがビジネス支援司書です。ビジネス蔵書の開拓、スタッフ訓練、プログラムの開発、BRCのマーケティング、利用者へのマン・ツー・マン相談サービスといった業務に専念する知識豊富で訓練されたフルタイムのスタッフを擁することは、BRCにとって欠かすことのできない投資です。ビジネス支援司書を雇い、訓練するにあたり、シムズブリー公共図書館は、コネティカット州内で提供されている他のビジネス・サービス・モデルを参考にしました。具体的には、スタンフォード、ニューイントン、グリニッジ所在のビジネス図書館や公共図書館を訪問し、ビジネス司書に会って話を聞いてきました。

    コネティカット州の公共図書館のうち都市部にある大規模なところについては、数十年も前からビジネス部門が設けられ、ビジネス担当の司書も配置されていました。経済状況の変化とともにビジネス・サービスも変わってきました。1990年代には、輸出が重視されるようになり、図書館でもビジネス文献の利用者のニーズに応えるべく、ビジネス関連の蔵書を再評価する必要に迫られました。さらにこの頃、コネティカット・ライブラリー・アソシエーションがエコノミック・バイタリティ・タスク・フォース(経済活力タスク・フォース)を創設しました。州内外の学識経験者や公共図書館の司書を構成メンバーとするこのタスク・フォースは、ビジネス・リーダーや州の意思決定者との意思疎通をはかり、経済活性化に資する図書館のあり方について議論しました。そして、労働者教育、潜在顧客やベンダーを見つける手助け、必要な輸出情報の提供など、重要なサービスが提供されたのです。しかし、過去10年間にグループの構成メンバーは様変わりし、今では、充実したビジネス蔵書を有する小規模な公共図書館、新分野や発展途上の分野で働く人々を訓練するコミュニティ・カレッジといったところが主なメンバーとなっています。今日、コネティカット州の公共図書館におけるビジネス司書はたった十数人しかいないものの、ほとんどの公共図書館が職探し中の人への情報提供を含む何らかのビジネス支援を行っています。

    さまざまな図書館の「ビジネス・サービスを検証した結果、ビジネス部門が成功するか否かは図書館の管理部門から支援を得られるかどうかにかかっていることが明らかになりました。図書館外で行われる活動やミーティングへの参加を可能とする柔軟な勤務スケジュールと資格を司書に与えることが大変重要です。シムズブリー公共図書館のビジネス支援司書は、BRCの目に見える広告塔としての役割を担っています。BRCとその資源についての情報を広めるため、ビジネス支援司書は、ロータリー・クラブ、商工会議所、青年会議所、ファーミントン・バレー・リインプロイメント・ネットワーク、地元の投資クラブなどさまざまな地域組織にコンタクトし、その活動をBRCが支援できる可能性について話をしたいと申し出を行います。司書は、BRC所蔵の電子情報資源をマルチメディアで紹介する「BRCへのバーチュアル・ツアー」ともいうべきプレゼンテーションを考案しています。また、シムズブリー商工会議所のメンバーとして活発に活動しており、会議所の教育委員会とメンバーシップ委員会に所属しています。こうした委員会への関わりを通し、シムズブリー高校の教師や地元の事業経営者の知己を得ました。過去2年間、司書は、図書館が所蔵する仕事・キャリア関連の情報資源について、いくつかの高校でプレゼンテーションを行いました。また、町の歴史的商業地区の再活性化を支援する非営利組織、シムズブリー・メイン・ストリート・パートナーシップのメンバーでもあります。マーケティング委員会のメンバーとして、地元の小売業者と協力して地域の事業家の意識を高め、ダウンタウンのショッピング・エリアに顧客を呼び込むためのプログラムを推進しています。地元の小売業組織は、図書館のプログラムやサービスによる働きかけがもっとも困難な層でしたが、ダウンタウンの再活性化プログラムを通して築き上げた関係を通して、司書は図書館のビジネス・サービスを個人的に実践し、彼らのニーズをよりよく理解できるようになったのです。

    BRCのサービスは、より大きなコミュニティに対しても提供されます。SCORE、ユニバーシティ・オブ・ハートフォードのルック・フォワード・プログラムや企業家センターといった外部組織との関わりによって、図書館は周辺地域からの利用者を引きつけられるようになりました。SCOREのカウンセラーやハートフォード・カレッジ・フォー・ウィメンでのプレゼンテーションは、他地域の利用者に手を差し伸べる機会となりました。企業家の多くがシムズブリーのことをあまりよく知らないという印象を受けましたが、実際に町に来て、図書館を利用することによって、彼らがシムズブリーで事業を展開する可能性を考えてもらえるだろうと思います。

    ビジネス支援司書は、プログラムの評価票、個人的なインタビュー、他のビジネス関連組織との議論などを通して、ビジネス・コミュニティのニーズを常に見直しています。その結果、町で事業を始めるために踏むべきステップを知りたがっている人に、適切な情報を簡単な方法で提供できていないことがわかりました。このことがきっかけとなって、商工会議所や町と協力して「ドゥイング・ビジネス・イン・シムズブリー(シムズブリーにおける事業運営)」というパンフレットを作成することになりました。シムズブリーにおける登録、税金、ゾーニングに関する規制について新規事業者の理解を助けるためのパンフレットです。

    シムズブリーにはいくつかの大企業があります。ビジネス支援司書はこうした大企業に対してもビジネス・サービスを推進していますが、これまでのところ大企業によるBRCの利用はほんのわずかにとどまっています。地域のビジネス市場を4年間にわたり調査した結果、私たちの主要ユーザーは企業家と企業家予備軍であることが明らになりました。したがって、大企業や町の職員からの問い合わせについてはすべて引き続き対応しているものの、BRCが提供するプログラムやサービスの大半は、小企業経営者のニーズを満たすことに主眼をおいて開発しています。

    ビジネス支援司書というポストが設けられてから4年間、そのサービス内容は進化してきました。当初は開業に関する簡単な質問への対応と情報源の提示がその業務でしたが、4年後の現在では、市場調査、事業拡大、非営利組織に資金提供してくれそうなところなど、より複雑な質問にも応対するようになりました。最近受ける質問の典型例としては、金融サービス事業者向けのセールス・リードの情報源、コネティカット州におけるコーヒーの市場規模、買収先事業を評価する際のチェックリストが掲載された資料などに関する問い合わせがあります。ビジネス・プログラムや支援を通じて、ビジネス支援司書は地元で事業を経営する多くの人々と知り合い、今では、彼らを互いに「繋ぐ」立場にあります。たとえば、輸入業を始めるための情報を求めてやってきた利用者をその前の年に同じような事業を始めた別の利用者に紹介することができました。また、トレード・ショーへの参加に関わる事業に興味を持っていた利用者を全米規模でトレード・ショー支援事業を手がけている別の利用者に紹介しました。

    ビジネス・リソース・センターの予算

    BRCの資料費予算には、スモール・ビジネス関連資料の他にキャリア、人材投資、金融に関する資料も含まれますが、その額は成人利用者向け資料費予算総額の約20%に上ります。この数字は、BRC開設当初よりそれほど大きく変わっていません。BRCにおける最大の投資は人材と電子データベースです。過去5年間で電子データベースの価格は3倍になりました。図書館では、BRCのための寄付や資金援助を積極的に募るということはしていませんが、過去に小額の寄付を受け、新しい参考資料やオーディオ・ブック・コレクションを購入したことがあります。また、ビジネス・プログラムで講師をつとめてくれる人々は、その知識と時間を「現物寄付」というかたちで提供してくれますが、これを金銭価値に換算すると約4500ドルになります。図書館が負担するBRCの年間運営費用総額は約7万5000ドルですが、館長はこれを大変価値ある出費と考えています。町の経済活性化のみならず図書館そのものの発展にも資する投資であると感じているのです。シムズブリー公共図書館は、今後2年間で750万ドルかけて施設拡張する計画を立てています。この拡張計画について、館長は、地元のビジネス・コミュニティの支持を得られるものと考え、これまでBRCが提供してきたサービスと支援に照らして、賛助しようという向きもあるだろうと期待しています。実際、図書館はBRC拡張のための資金援助としてすでに5万ドルの寄付を受けました。

    将来

    コネティカット州立図書館は、図書館委員会に対し5年ごとに長期計画を作成するよう要請しています。当初の活動および要請に基づき、2000年度シムズブリー公共図書館長期計画では、図書館のビジネス・サービスに対する認知度の向上をはかる、サービス拡張により町のビジネス・コミュニティによるBRCの利用度を5%上昇させるなどのイニシアティブが掲げられました6 。技術的なイニシアティブとしては、ビジネス関連データベースの拡充とリモート・アクセスの実現、電子ワークステーションの追加設置、職探しを支援するためのエンプロイメント・ルームの設置などが盛り込まれました。全体としての目標は、ビジネス・サービスを子供向けサービスと同じレベルまで高める、つまり、欠くことのできないものにすることです。

    2005年以降については、図書館施設全般の拡張を目指しています。その一環としてBRCも拡張されます。具体的には、小規模事業経営者や企業家が親睦会を開いたり、司書やSBAまたはSCOREのカウンセラーと相談するためのスペースとして使用できる小会議室や学習スペースが新たに設置される予定です。大会議室についても規模を50%(収容人数150名規模)拡張し、町が主催する経済発展に関するパブリック・ミーティングを図書館で開催できるようにする予定です。また、BRCの隣に20台のコンピューターを設置したトレーニング・センターを付設し、図書館がライセンスを有するデータベースすべてといくつかのウェブサイトについて実践トレーニングができるようにします。こうしたグループ対象の実践指導は、ビジネス支援司書の重要な仕事となっていくと思われます。そのため彼女は現在、図書館メディアおよび指導技術に関する州の資格を取得しようとしています。

    私たちのゴールは、単なるパートナーにとどまらず、経済発展に向けた町全体の連携のリーダーとしての役割を担える図書館になることです。経済発展に関わるさまざまな他の関係者と引き続き協力し、率先して既存の枠組みを超えた独創的な発想を展開することによって、そのゴールに到達できると考えています。