中国経済新論:世界の中の中国

中国の直接投資受入れ策の成功と課題

李金珊
財政部財政科学研究所

郭敏
財政部財政科学研究所

1.わが国のFDI(海外直接投資)政策における成功

1970年代末から始まった改革開放政策は、わが国の国民経済に大きな発展をもたらした。GDPは年平均9.5%で成長し、一人当たり所得も5倍になり、非国有企業はGDPの60%を占めるようになった。このような前例のない発展を遂げたのは、対外開放政策、特に対外貿易と外資の受け入れ政策の役割が特に大きかった。WTO加盟後、WTO関連協定の規定と参入規制の緩和に伴い、外資はさらにわが国の多くの分野に進出することになろう。

わが国への海外直接投資額は1970年にはほとんどゼロであったが、90年代後半には年平均400-450億ドルの規模に達した。アジア通貨危機の影響もあり、98年、99年には減少したが、2000年には中国のWTO加盟の期待感から危機前のレベルに戻った。GDP比で見てみると、FDIは現在GDPの5%近くを占めている。90年代後半に受け入れたFDIはアメリカに次いで世界第2位となり、発展途上国への直接投資流入額の25%~30%を占めるようになった。わが国の外資利用の中でも、直接投資の地位はますます重要になってきている。1979年から1991年まで直接投資額は外資総利用額の29.32%を占めていたが、1992年から2000年には73.59%を占めるようになった。他の発展途上国の外資導入と比べても、わが国は間違いなく最も成功していると言える。90年代、発展途上国の外資導入額のうちFDIは半分以下で、GDPに占める割合も1.8%しかなかった。

2.成功の背後にある問題

(1)複雑なインセンティブ税制

国内企業と比べると、外資系企業への課税、特に法人税はインセンティブ税制である。わが国は対外開放のプロセスの中で、まずは経済特区、続いて沿海部の開放都市、さらに様々な新技術開発区や保税区が相次いで設立された。これらの特別区は各自の税制を持っており、優遇税制がますます複雑になっている。さらに、徴税の権限を持っている機関も違うため、透明性の問題も指摘されている。WTO加盟後、この複雑かつ透明度の低い税制はさらに問題をもたらす可能性がある。多くのインセンティブ税制措置が、WTOの内国民待遇原則や輸出促進、輸入代替補助の禁止原則に違反しているからである。

名目関税の大幅引き下げは、わが国の対外開放度の向上を表しているが、名目関税と実質関税との巨大な格差は、両者の間に存在している巨額な「レント」を意味している。関税の相当部分が各種の減免を通じて様々な利益集団に分配され、レント・シーキングの収益となってしまったが、国は受益者ではない上に、高関税による保護貿易主義の名声だけを負ってしまう。

優遇政策を特徴とする外資導入政策により、中国はFDI導入で世界第2位になった。しかし、このインセンティブ税制は、随意性や非統一性、非公正性(胡鞍鋼の話を引用した)を持っており、地区間の悪性な競争や政策によるレント・シーキングなどの悪い影響をもたらした。

(2)巨額な資本流出

FDIが巨大な金額に上るなか、不正確なデータや偽外資などの問題点も指摘されている。偽外資とは、国内の資金が一旦海外に流出し、その後再び国内に回流する現象のことを指す。国内企業はこれにより、関税などの税制面やその他の優遇政策を享受しようとする。しかし、この回流してきた部分が一体どれくらいの割合を占めているかは容易に把握することができない。海外の研究者数人は、92年、偽投資がわが国の直接投資額の1/4を占めていたと予測した。90年代に流入したFDIの大部分は香港からのものである。香港の統計資料によれば、かなりの投資資本はBermudaやVirgin Islandsといったオフショア金融センターから中国大陸に流入したという。

一方、海外に流出した資本の具体的な数字についても様々な見解がある。1997年から1999年にかけての資本流出が1000億ドルであったという人もいれば530億ドルであったという人もいる。国際収支バランスを見ればそれが分かる。2000年のわが国の貿易黒字は241億ドルで、FDIは400億ドルであったが、外貨準備は1999年に比べてわずか93億ドルしか増加しておらず、その差額は550億ドルにも達している。この巨大な差額を純粋に「誤差脱漏」に記入してしまうのはあまりにも不思議である。国際収支表の誤差脱漏は、90年代ずっとマイナスで、しかも年々拡大している。これは、個人資本が絶えず海外に逃げていることを示している。このような資本の流出は、経済ルール(たとえば資本収益率の格差)によるものではなく、特殊な政治要因によるものであると考えられる。つまり、不当な手段を使って資金を得た人達が資本を外国に移転させた後に、このうちの約4分の1がFDIの形で回流してきたのである。

(3)助長された地域格差

わが国のFDI政策は、沿海部と内陸部の経済格差を拡大させた重要な要因である。経済発展の初期段階において、一部の人あるいは地域がまず豊かになるのは仕方がない。しかし、政策面に関し長期にわたって特権を与えるのは適切ではない。対外貿易経済合作部の統計によると、2000年のFDI導入額のうち、東部地区への投資は85.8%を占め、中部地区は8.78%、そして西部地区はわずか5.42%しかない。広東省一省の2000年までの外資導入額は全国の28%を占め、広東、上海、江蘇、福建、浙江、山東の6省の外資導入額は全国の70%以上も占めている。これは、沿海部が良好な地理的条件に加え、80年代以降の優遇政策により海外からの大量の直接投資を惹きつけたのに対し、内陸部では投資環境が優れず、外資導入の競争力も弱く、結果としてFDIに差が生じ、地域間の経済格差が拡大したわけである。

3.結論

(1)複雑なインセンティブ税制

上述したわが国の対外直接投資政策における三つの主要問題のうち、第二、第三の問題は第一の問題と直接関連している。第二、第三の問題を解決するためには、税制改革から着手するしかない。WTOのルールに従い、まずは外資に対する税制政策の調整と外資系企業に対する内国民待遇を実施することが要請されている。しかし、短期的にはドラスティックな調整は避けるべきである。FDIがわが国の経済に与えるプラスの効果がマイナスの効果よりずっと大きいからである。問題は、現在の優遇税制の柔軟性があまりにも大きく、地域間の優遇レベルの差も大きいため、脱税、偽外資および税制優遇から発生するレント・シーキング行為が多発している。したがって、今後の税制優遇政策は、産業と地域の誘導政策に適合し、発展が欠かせない農業、エネルギー、環境保護、ハイテク及び中間サービス業といった産業へと向かうべきである。また、地域に関しては、西部大開発を促進するために、FDIは中西部へと傾斜すべきである。一方、FDIに対する税制優遇を削減していくプロセスで複雑なインセンティブ税制を簡略化し、優遇基準を規範化、透明化に誘導すべきである。体制と政策が矛盾する限り、レント・シーキング行為は必ず存在するが、わが国における資本流出は、それに当たる。資本流出は発展途上国や経済体制移行国において避けられない現象であり、管理が厳しければ厳しいほど、資本は流出する傾向にある。経済に対する信頼の確立はもちろん必要だが、市場経済システムの整備はなお重要である。資本の流出を根本的に抑制するには、体制と政策両面からの措置を実施する必要がある。具体的に、それは二つの方面から着手すべきである。まずは、国有財産の私有化を体制上実現することである。もう一つは、国内企業に外資系企業と同様な待遇を与え、遠回りをしてまで外資を装い、優遇政策を享受するインセンティブをなくすことである。

2002年11月18日掲載

出所

人民網 中国経済快訊周刊

2002年11月18日掲載

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