税執行の強化は税務コンプライアンスの自発的改善をもたらすか:税務行政記録データによる検証

執筆者 宇南山 卓(ファカルティフェロー)/稲葉 和洋(元税務大学校)/中川 貴文(税務大学校)
発行日/NO. 2026年9月  26-J-037
研究プロジェクト 経済の非対称性と日本経済の課題
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概要

2016年に実施された個人番号(マイナンバー)の記入義務化などの税務申告に関する制度変更を利用して、税執行が税務コンプライアンスに与える影響を分析した。税執行を、書類の添付や個人番号の記入を要件とする申告時執行と税務調査による是正である調査時執行の二つの経路に分け、コンプライアンスも機械的なものと抑止によるものを区別した。分析には確定申告書の全数が観察できる行政記録データを用いた。制度変更により申告時執行が導入された扶養控除では、コンプライアンスの改善が観察された。一方で、マイナンバーの導入後に税務調査の検知能力が向上したことが客観的に確認できたが、申告所得は反応していない。税務当局内部で検知能力の向上が進むような税執行の強化は、それだけでは不正申告の抑止力とならないことを示唆する。