個人の健康状態の決定要因に関する分析:地域属性に注目して

執筆者 庄司 啓史 (衆議院調査局財務金融調査室)/井深 陽子 (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2017年5月  17-J-036
研究プロジェクト 医療・教育の質の計測とその決定要因に関する分析
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概要

個人の健康状態に地域差を指摘する研究は数多くあるが、この背後にあるメカニズムとして患者の健康状態の把握や治療の継続のための医療保健サービスの利用にどの程度地域差が存在するのかに関する日本の研究は少ない。本稿では、50歳以上の男女を対象とした「くらしと健康の調査」のデータをもとに、高血圧症・高脂血症(脂質異常症)・糖尿病を例にとり、医療保健サービスの利用と個人および地域の属性との関連を、マルチレベルモデルを用いて分析した。分析の結果、対象となる10市区町において、高血圧症、高脂血症、糖尿病の慢性的な疾病に関して、診断・指摘の有無や治療の継続には、3〜10%ポイント程度の地域差が見られるが、この地域差のほとんどが個人属性の分布の差により説明され、個人属性を制御した後には地域間のばらつきはほとんど残らないことが示された。第2に、その一方で個人のリスク要因の分布の違いを考慮した場合にも、高脂血症に関連する医療機関利用では地域差が1〜2%程度存在することが示された。第3に、地域差と関連のある地域固有の要因として、医療資源と一部の疾病の診断・指摘または通院と統計的に有意な正の関係があることが確認された。以上の結果は、国民皆保険制度のもと医療アクセスの平等が保証されている日本において、医療保健サービス利用の地域差は小さいものの、しかし同時に一部疾病に関しては地域固有の要因がその地域差と関係している可能性を示唆している。