日本語タイトル:発展途上経済における汚職、市場の質および参入規制

Corruption, Market Quality and Entry Deterrence in Emerging Economies

執筆者 Krishnendu Ghosh DASTIDAR (Jawaharlal Nehru University)/矢野 誠 (所長)
発行日/NO. 2017年2月  17-E-010
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概要

本論文は、発展途上経済における汚職と経済成長の関係の視点から、
「現代経済では、健全な発展成長のためには、高質な市場が不可欠である」
「高質な市場の担保には、ルールや法律など、適切な市場インフラの形成が不可欠である」
という市場の質に関する2つの基本命題を理論的に検証する。市場の質理論では、市場の質が資源配分の効率性と取引過程の公正性という2つの指標を総合したものとしてとらえられる。市場による資源配分の効率性の低下が経済成長を阻害することは、さまざまな既存研究において指摘されてきたが、取引過程の公正性が技術革新や経済成長に及ぼす影響を考えた研究はこれまで存在しない。

本研究は、特にインド経済を念頭において、発展途上経済における汚職と新規参入規制との関係から、技術革新の体化の問題を捉えるもので、市場の質理論の基本命題の検証に正面から挑む。既存企業が、わいろなどによって政府に参入規制を働きかけ、参入障壁を高めることができるならば、資源配分の効率性を低め、技術革新の体化を遅らせ、成長の阻害要因になる。論文では、このプロセスを不完備情報ゲームにおけるベイジアン・ナッシュ均衡によって説明される。

概要(英語)

We extend the Yano (2009) concept of market quality to analyze the effects of corruption in a three-stage game of entry deterrence. The incumbent has incomplete information on the entrant's costs but can increase these costs by resorting to unfair means (e.g., bribing a politician who harms the entrant). The effectiveness of the bribe depends on the "fairness index" prevailing in the economy. The entrant observes these costs and decides whether or not to enter. We completely characterize the optimal bribe and show that this depends on the index of fairness. We also show that zero bribes need not maximize welfare and market quality. Our results seem to be compatible with anecdotal evidence from emerging economies such as India.