概要
本稿では、夫の家事育児参加度合い(家事・育児負担割合、または、家事・育児時間)が、妻の就業に与える影響について実証的に分析した。両者の関係には内生性が存在するが、夫の働き方や役割分担意識を操作変数として使うなど内生性をコントロールした分析を行っても、夫の家事・育児が妻の就業に正で有意な影響を与えることがわかった。
より具体的には、第1に、夫の家事・育児参加度合が妻の就業、正社員としての勤務、労働時間などの面でより負荷のかかる働き方の選択を高めていた。第2に、妻の就業には、保育園利用、親との同居などの「日常的なサポート」がより重要であることがわかった。第3に、夫の家事・育児参加度合に対して、夫が正社員でも限定的な働き方(特に、職務、勤務地限定)や柔軟な労働時間制度の選択が正に、「妻は家を守るべき」という役割分担意識が負に寄与していることが示された。
これらの結果は、既婚女性の就業や働き方の多様化の推進においては、職場における子育て両立支援や保育園利用をサポートするだけでなく、夫の働き方や役割意識を変えることが有効であることを示唆している。