為替レート予想の不確実性と輸出

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2015年8月  15-J-051
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概要

本稿は、企業の為替レート予想のばらつきを不確実性の代理変数として使用し、その時系列的な動向を観察するとともに、輸出計画との関係を分析する。結果の要点は以下の通りである。第1に、リーマン・ショック後、アベノミクス下の大規模な金融緩和の後、為替レート予想の不確実性が増大している。第2に、為替レートの先行きに対する企業間でのばらつきは、過去の為替レートのヴォラティリティと強い正の関係を持っている一方、先行きのヴォラティリティに対する予測力はない。第3に、大企業に比べて中堅企業・中小企業の為替レート予想はばらつきが大きい。第4に、為替レート予想の不確実性が輸出計画に対して負の影響を持つことが示唆される。以上の結果は、マクロ経済政策や国際協調を通じて為替レート予想の不確実性を低減することの重要性、為替市場の不確実性が高まった際の為替市場介入の役割を示唆している。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:16-E-010