空間経済学に基づくストロー効果の検証~明石海峡大橋を事例として~

執筆者 猪原 龍介 (亜細亜大学)/中村 良平 (ファカルティフェロー)/森田 学 (青森中央学院大学)
発行日/NO. 2015年7月  15-J-045
研究プロジェクト 経済グローバル化における持続可能な地域経済の展開
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概要

北陸新幹線や九州新幹線の開通や各高速道路の整備など、地方における交通インフラの整備が進んでいる。空間経済学の考え方によれば、交通インフラの整備による輸送費の低下は、集積の経済のメリットを活かすために経済活動が都市部へ集中する傾向を強めることになる。地方の視点に立てば、交通インフラの整備は地方の経済基盤を弱体化させ、経済活動の流出を促すことになる。こうした効果のことを日本では「ストロー効果」と呼ぶことが多い。本州四国連絡橋の開通や長野新幹線の開業、東北新幹線の延伸など、これまでにもストロー効果が懸念される場面は多かったが、交通インフラが地方経済に与える負の影響については十分な検証は行われてこなかった。本研究では、空間経済学のモデルを用いてストロー効果を定義し、交通インフラの整備が地域経済に与える影響について分析をおこなう。分析にあたっては、まず、地域ポテンシャルの考え方を用いて代替の弾力性を推定し、次に、明石海峡大橋の開通を事例に、ストロー効果の発生可能性、並びにストロー効果を構成する6つの要素の企業出荷額への影響を分析する。最後に、価格指数と市場規模の関係によって定義されるストロー効果の発生条件式を用いて、都道府県間の輸送費の低下によるストロー効果の発生可能性を予測し、今後の新幹線や高速道路の整備が地域経済に与える影響についての示唆を得る。

Forthcoming: 森田学, 猪原龍介, 中村良平. 「空間経済学に基づくストロー効果の発生条件とその影響 〜明石海峡大橋を事例として〜」,『日本経済研究』