執筆者 | 川濵 昇 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2015年7月 15-J-043 |
研究プロジェクト | グローバル化・イノベーションと競争政策 |
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概要
近時FRAND宣言がなされた標準必須特許の行使に関して紛争が相次ぐようになった。標準必須特許については、ホールドアップ問題やロイヤルティスタッキングの問題などがあるため、その行使に一定の制約が必要であることは広く知られている。この問題は特許法と競争法の交錯領域であるとともに、標準化団体の特許・知財ポリシーの策定問題とその法的効力のとらえ方をめぐる契約法問題など多くの領域の問題が絡み合っている。わが国ではこの問題の特許法上の側面と契約法上の側面についてはアップル対サムスン事件の一連の判決(知財高判平成26.5.16)で一応の枠組みが作り上げられた。FRAND関連特許の行使に係る競争法の分析の視点については判然としない。本研究では、この問題には標準化活動の競争法上の評価と、標準化活動のコンテクストでFRAND宣言のもつ競争法上の意義に注目して分析を行った。それに基づいて、これまでわが国で無視されてきたFRAND宣言下における合理的ロイヤルティの競争的ベースラインを明らかにした。このベースラインから標準化プロセスを濫用する反競争的行為の諸類型を取り上げて独占禁止法上の分析枠組みを提示した。