サービス貿易と生産性

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2015年2月  15-J-003
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概要

企業活動のグローバル化に関する研究は近年急速に進展しているが、サービス貿易を対象としたミクロレベルの実証研究は大幅に遅れている。本稿は、日本企業のパネルデータを使用し、サービス貿易と生産性をはじめとする企業特性の関係についての観察事実を提示する。分析結果によれば、(1)モノの貿易に比べてサービス貿易を行っている企業はずっと少数であり、売上高に占めるサービス貿易の割合も少ない。(2)サービス輸出・輸入いずれもモノの貿易に比べて関係会社間の取引の比率が高い。(3)サービス輸出企業は非輸出企業に比べて生産性や賃金が高く、モノ輸出企業と比べても高い。(4)企業グループの境界を越えてサービス輸出を行っている企業の生産性は、関係会社のみにサービス輸出を行っている企業に比べて高い。以上の結果は、サービス貿易を行うに当たっての固定費用がモノの貿易以上に大きい可能性、したがってサービス貿易を自由化・円滑化する政策の重要性を示唆している。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:15-E-030