エネルギー消費統計の精度改善方策について

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2013年4月  13-J-022
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概要

2005年度から開始された現行エネルギー消費統計は、業種別・地域別エネルギー消費構造を精緻に把握すべく経済産業省資源エネルギー庁が開始した大規模な一般統計調査である。しかし、供給側の公的統計などを用いて2006~2010年度の精度を評価した結果、電力・都市ガス・A重油で20%程度の非常に大きな統計誤差が存在すると評価され、総合エネルギー統計などでの活用が困難な状況が続いている。

当該問題の原因を究明するため、エネルギー消費統計の調査個票を用いて主要エネルギー源・業種別の消費量分布を直接観察し誤差要因を分析した。その結果、当該統計が中小零細規模の第三次産業・製造業を主たる調査対象とすることに起因して3桁間違・4桁間違や部分記入漏などの異常値が毎年高濃度かつ不安定に含まれているが、「箱ひげ図法」など一般的な異常値排除処理でこれに対応していたため、異常値が不安定に残留し、部分記入された正常値が異常値と誤判定され排除されていることが判明した。

当該誤差要因の分析結果に基づき、エネルギー消費統計における異常値排除処理を改善し異常値の残留や部分記入された正常値の誤排除防止の対策を行った結果、電力・都市ガス・A重油などの主要エネルギー源において2005~2009年度の平均で誤差5%以下、最大でも誤差7%程度で詳細な業種別消費量を推計できることが実証された。

但し、当該対策の実施により推計できるエネルギー源種別の減少や、自家発電・蒸気発生の直接効率推計の困難化などの「副作用」が発生するため、今後とも実効回収率の向上や異常値排除法の高度化など更なる検討・改善が必要であると考えられる。