最低賃金と若年雇用:2007年最低賃金法改正の影響

執筆者 川口 大司  (ファカルティフェロー) /森 悠子  (日本学術振興会)
発行日/NO. 2013年3月  13-J-009
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

2007年の最低賃金法改正によって最低賃金の決定に生活保護費を考慮することが求められ、地域によっては最低賃金が大幅に引き上げられた。本稿では最低賃金の影響を最も強く受ける10代男女労働者に焦点をあて、最低賃金が賃金および雇用に与える影響を調べた。賃金については、最低賃金の10%の上昇が下位分位の賃金率を2.8~3.9%引き上げることが明らかになった。雇用については、最低賃金の10%の上昇は10代男女の就業率を5.25%ポイント減少させる効果があることが示された。10代男女の平均就業率が17%であることと比較すると、これは約30%の雇用の減少効果であり、最低賃金の雇用への弾力性がおよそ3であることを意味する。したがって、最低賃金の上昇は若年労働者に対して雇用減少効果をもつことが示唆された。経済状況の良い地域で最低賃金が上がりやすいという政策の内生性を考慮し、2007年時点の生活保護費と最低賃金の乖離額を操作変数とする推計を行ったが内生性がないという仮説は棄却されなかった。