執筆者 |
山本 勲 (慶應義塾大学) /松浦 寿幸 (慶應義塾大学) |
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発行日/NO. | 2011年3月 11-J-032 |
研究プロジェクト | ワーク・ライフ・バランス施策の国際比較と日本企業における課題の検討 |
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概要
本稿では、1990年代からの企業パネルデータを用いて、ワーク・ライフ・バランス(WLB)施策が企業の中長期的な生産性にどのような影響を与えるかを検証した。検証の結果、WLB施策とTFPにはプラスの相関がみられるものの、WLB施策導入の内生性を考慮すると、WLB施策が一貫してTFPを高めるという因果関係は見出せないことがわかった。ただし、次のいずれかの条件を満たす企業、すなわち、(1)従業員300人以上の中堅大企業、(2)製造業、(3)労働の固定費の大きい企業、(4)均等施策をとっている企業では、WLB施策を導入することでTFPが中長期的に上昇する可能性があることも明らかになった。また、WLB施策の種類としては、推進組織の設置などのWLBへの取組みや、長時間労働是正の組織的な取組み、非正社員から正社員への転換制度などの施策に効果があることも示された。このほか、中小企業では、非正社員から正社員への転換制度など、人材を有効活用するようなWLB施策がTFPを高めることが確認できたものの、WLB施策によってはTFPを低下させてしまうケースもみられるため、中小企業へのWLB施策の普及には慎重な対応が必要とされることも示された。これらの分析結果は、WLB施策を導入するだけで生産性が向上するようなことはないものの、効果が生じるような条件のもとで、有効な施策を実施することによって、WLB施策導入の費用対効果が中長期的にプラスになりうることを示すものである。条件を満たす企業に対し、WLB施策の効果や成功事例の情報提供をするような政策を進めることで、企業が自発的にWLB施策を導入するようになることも期待できる。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:12-E-079