日本企業の研究開発活動から商業化へのラグ構造の分析

執筆者 鈴木 潤  (政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2011年1月  11-J-002
研究プロジェクト 日本企業の研究開発の構造的特徴と今後の課題
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概要

RIETI発明者サーベイのデータと、特許データベースから得られる統計データを用いて、研究開発のタイムラグの構造を調べた。研究開発活動に対するインプットからアウトプット、アウトカムまでにいたるタイムラグは、いくつかの性格の異なる期間が合成された結果であると考えられる。本分析では、新たな研究開発プロジェクトを開始してから特許を出願するまでのラグと、特許を出願した後に利用開始に至るまでのラグを調べた。これらを合計した期間の長さは左に偏った分布形状を持っており、中央値が約33カ月であった。特許出願後にその特許を利用するか否かに影響を与える因子と、利用開始までの期間に影響を与える因子は独立性が高く、利用の意思決定は主として発明内容が技術的に高い価値を持つかどうかに依存する。一方、利用開始までの期間は、研究プロジェクトの規模や企業戦略により大きな影響を受けることがわかった。また、近年、研究開発期間の短縮や加速化などが生じているとする意見を支持するような確実な証拠は得られなかったが、特許制度の改正が、出願後利用開始までの期間に影響を与えている可能性があることがわかった。