執筆者 | 中田 大悟 (研究員) /森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2010年11月 10-P-011 |
研究プロジェクト | 持続可能な公的年金制度構築の為のマクロ経済・財政シミュレーション分析 |
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概要
少子高齢化が急速に進行する中、社会保障制度とその財源のあり方は、日本経済の活力に関わる経済政策上の重要な問題となっている。経済的なウエイトが大きく、しかも制度設計のあり方が長期にわたる影響を持つ社会保障分野では、「エビデンス・ベースト・ポリシー・リサーチ」の必要性がとりわけ高い。本稿では、「RIETIモデル」を中心とした年金制度のシミュレーション分析、社会保障財源および財政の持続可能性に関連する研究、効率性と公平性のトレードオフに関する研究、社会保障制度と労働供給の関係、医療供給体制に関連する研究成果について概観する。
これらの研究を通じて、持続可能な年金制度設計を行う上で金利の内生性や寿命延伸を考慮することで大きく結論が変わりうること、社会保障の望ましい財源は年金・医療・介護といった制度によって異なる可能性があること、政府債務を持続可能にするには社会保障給付の抑制とともに相当程度の増税が必要となりこれを先送りするとその後の財政負担が一層増大すること、経済成長と格差是正がともに重要な政策目標だとすれば法人税率引き下げ・消費税引き上げ・低所得層にターゲットした給付というポリシー・ミックスが考えられること、年金受給開始年齢の引き上げが高齢者の労働供給を増加させる効果を持つこと、病院の集約化により規模の経済性を活かすことで医療サービスの生産性を向上させる余地が大きいことなどが明らかにされた。