執筆者 |
岩本 康志 (ファカルティフェロー) /福井 唯嗣 (京都産業大学) |
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発行日/NO. | 2010年6月 10-J-035 |
研究プロジェクト | 社会経済構造の変化と税制改革 |
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概要
本稿は、医療・介護保険財政モデルの最新版(2009年9月版)を用いて、長期的な視野からの社会保障の公費負担の動向について分析する。今回は、社会保障国民会議の医療・介護費用のシミュレーションの経済前提を取り入れるとともに、国民健康保険と全国健康保険協会管掌健康保険の加入者数を推計することで、これらの制度への公費負担を考慮に入れた。
社会保障国民会議による推計では、医療・介護費用に対する公費負担は、2007年度から2025年度までGDPの1.8%増加する。本稿では、2025年度から2050年度にかけて、公費負担は医療がGDPの1.25%、介護が1.05%増加すると推計された。また、2050年度以降も約20年間にわたり、公費負担総額は上昇を続ける。長期的視点にたった税制のあり方を検討する際には、このことを考慮に入れて、安定的な財源確保の手段を考えるべきである。
後期高齢者に重点的に公費が投入されていることから、公費負担の伸び率は保険料の伸び率よりも高い。このため、税による財源調達がより困難になることが予想される。したがって、給付と負担の関係が相対的に明確な保険料での財源調達の余地を大きくし、公費負担の比重が小さくなる方向への改革を検討する必要がある。