ワークシェアリングは機能するか

執筆者 川口 大司  (ファカルティフェロー) /鶴 光太郎  (上席研究員)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-013
ダウンロード/関連リンク

概要

雇用情勢が深刻化する度に、ワークシェアリングの必要性が繰り返し叫ばれてきた。しかし、ワークシェアリングにより雇用が創出されるためには、(1)労使の信頼関係に基づく納得ずくの賃下げが必要であり(「ワークシェアリング第一の関門」)、(2)その導入は労働時間と人数の代替が容易であり、かつ採用・訓練に要する固定コストが低い職場に限られ(「ワークシェアリング第二の関門」)、そのハードルはかなり高い。海外での厳密な実証分析を見ても、現実的にワークシェアリングが機能するのは極めてまれであり、日本についてもKawaguchi, Naito and Yokoyama (2008)が同様の傾向を確認している。

ワークシェアリングは、雇用危機を乗り越えるための「魔法の杖」では決してなく、それに対し過度の期待を持つべきではない。民間主導のワークシェアリングの限界を考慮すると、雇用調整助成金のような官主導型のワークシェアリングは財源が確保されている分雇用維持効果は大きいかもしれないが、その費用対効果を見極め、望ましい労働異動、産業構造調整の牽引役である市場調整機能を歪めないような政策対応が必要である。