原子力発電所の稼働率・トラブル発生率に関する日米比較分析

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2009年12月  09-J-035
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概要

日本における原子力発電は、現状53基が稼働し電力の約25%を供給する重要なエネルギー源となっている。しかし、地震などの不可抗力、設備上・運転上のトラブルや関連する規制対応などのため近年の平均稼働率は60%台で低迷している。一方、米国では2000年頃から平均稼働率90%台で安定して推移しており、日米間で大きな稼働率の差異が存在する。

本稿においては、日米の過去10年分の原子力発電所の稼働率・トラブルを型式・年式別に分類・集計し、稼働率やトラブルの発生頻度や両者の相関関係などを統計的手法を用いて分析し、稼働率の差異を生じる要因や規制制度の影響などについての定量的な比較分析を行った。

稼働率の差異については、日米間の差異の大部分は日本の沸騰水型の稼働率が相対的に約30%低いことで説明されること、トラブル発生率の差異については、対処可能なトラブルのうち停止を伴うトラブルの発生率では日本の方が発生率が低いが、停止・非停止を合計した対処可能トラブル全体の発生率では米国での発生率が顕著に低下し日本の沸騰水型で発生率が増加した結果日米間でほぼ差がなくなってきていることなどが判明した。

一方、稼働率とトラブル発生率の関係については、トラブル発生率当の稼働率低下への影響は日本の方が大きく「一旦止まると長引く」傾向が認められるが、トラブルによる直接的な停止時間は日米間の稼働率の差異の主な原因ではなく、沸騰水型では過去のトラブルに起因する予防保全・対策工事のための停止時間と定期検査に要する時間の差が、加圧水型ではトラブル発生率が極めて低く定期検査に要する時間の差が稼働率の差異の原因となっていると判明した。

従って今後の稼働率向上とトラブル低減に向けて、沸騰水型ではトラブルの発生低減への取組みが、加圧水型では定期検査期間の延長・適正化への取組みが重要であると考えられる。