執筆者 |
濵本正太郎 (神戸大学) |
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発行日/NO. | 2008年7月 08-J-014 |
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概要
本稿は、投資企業と投資受入国とが締結する契約の違反の有無が争われる場合に、その紛争を、当該投資企業の母国と投資受入国とが締結している投資保護条約が定める紛争処理手続(典型的には仲裁手続)によって処理することができるかどうか、できるとすればどのような場合か、を検討する。
投資保護条約に基づく仲裁手続において投資契約違反に関する紛争を取り扱うことができるかどうかの問題は、投資保護条約に「約束遵守条項」(I.)あるいは「一般的紛争処理条項」(II.)が置かれている場合に生じる。このいずれに関しても、仲裁判断は割れており、現段階において仲裁判例の立場あるいは「通説」を語ることはできない状況にある。そのような現況を前提に、本稿は、条約解釈の基本原則に立ち返り、文言解釈に基づく判断を主張し、「約束遵守条項」および「一般的紛争処理条項」の規定の仕方について具体的な提案も行う。
もっとも、いずれの条項が置かれている場合であっても、投資保護条約に基づく仲裁提起資格を投資企業が放棄する可能性は否定できない。そこで、どのような場合にその放棄がなされたと理解されるかについて明らかにすることも試みる(III.)。