人民元改革の分析

執筆者 伊藤隆敏  (ファカルティフェロー/東京大学大学院経済学研究科・先端科学技術研究センター)
発行日/NO. 2006年4月  06-J-028
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概要

この論文は、2005年7月21日の人民元改革の公告の意図の政治経済的分析とその後の中国人民元の変動の計量的分析を行う。主要な結論はつぎの通り。人民元の為替制度は、経済合理性よりは、高度に政治的な判断により決められている。人民元改革では、ドル・ペッグの放棄を宣言したものの、その後の人民元の動きは、緩やかな増価を伴う事実上のドル・ペッグが継続している。6カ月で0.6%の対ドル増価。一日に許されている0.3%の変動幅は、生かされていない。バスケット通貨を参照する、と公告のなかにあるが、それを実施しているとは思えない。アメリカからの政治的圧力があると、増価のスピードを少し上げるなど、通貨政策が、政治的配慮に終始している。