日本企業の自主的環境対応のインセンティブ構造
-ケース・スタディとアンケート調査による実証分析-

執筆者 谷川浩也  (上席研究員)
発行日/NO. 2004年8月  04-J-030
ダウンロード/関連リンク

概要

近年、環境保全の取組みを自らの経済的利益にも合致したものとして「持続可能な経営」や「環境と両立した経営」を実践する企業が増加し、このような新しい時代の企業の性向を踏まえた「自主的環境対応」による環境政策遂行の重要性が高まっている。その背景には、環境保全や省エネ対策で既に先進国随一の水準を達成した我が国の環境対応の限界コストがおしなべて非常に高くなっているため、今後とも限りない規制の強化で応えていくことは、それによる資源のクラウディング・アウトや規制の遵守・導入に伴う政治的・社会的コストの観点から疑問が大きく、自主的対応等による代替の可能性について、前向きな検討が求められているという事情がある。

今回、代表的日本企業8社に対する集中的なヒアリング調査、EUの先進的事例の調査、及び環境対応に熱心な一部上場企業408社に対するアンケート調査等を実施したところ、欧米の理論的・実証的研究で指摘されている様々なパターンの企業の自主的環境対応のインセンティブ構造が既に日本企業においても相当程度観察されることが確認された。

様々なメリットが期待できる自主的環境対応を政策的に活用していく上での最大の問題点は、如何にフリーライドを防止し、企業の努力を十分なものにするかにあるが、上記のような「インセンティブ構造」を踏まえた適切な制度設計により、自主的対応を環境政策上有効に活用するとともに、特にその法制上の位置づけを明確にしていく必要がある。