汎用技術としての半導体

執筆者 池田信夫  (上席研究員)
発行日/NO. 2003年12月  03-J-018
ダウンロード/関連リンク

概要

情報技術は、20世紀後半に急速な進歩をとげ、生活のあらゆる場に影響をもたらす「汎用技術」となったが、その背景にはコンピュータの中核となる半導体の集積度が40年以上にわたって指数関数的に向上してきたという特異な技術革新がある。この原因は、素材となるシリコンの価格がほとんど無視できるという物理的な特性に加えて、半導体が機械の動作をデジタル信号のスイッチに還元し、ハードウェアの物理的な特殊性を「抽象化」したことに求められる。その結果、業界ごとの固有技術が標準的なプラットフォームにもとづく汎用技術とソフトウェアに置き換えられる一方、応用技術と汎用技術が分化し、垂直統合型の産業が水平分業型に転換する傾向が広がっている。日本の半導体産業が凋落した大きな原因は、このような構造変化を見誤り、統合型の産業構造に過剰適応したためと考えられる。「情報家電」における日本メーカーの優位も、長期的には家電がコンピュータの水平分業型アーキテクチャに組み込まれる過程と考えたほうがよい。