ノンテクニカルサマリー

原油価格の中長期的展望についての考察 -米国シェールオイル・ガスの生産側挙動に関する経済学的分析-

執筆者 戒能 一成 (研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果 (所属プロジェクトなし)

2014年後半からの原油価格の大幅下落の背景については、世界的な経済成長の鈍化など需要側の要因に加え、米国でのシェールオイル生産増など供給側の構造的要因の影響が大きいことが指摘されている。シェールオイル・ガスの生産は、在来型油田・ガス田での生産と比較して開発対象となる鉱床や生産井の開発技術などさまざまな相違点があることが判明しているが、その開発挙動と生産量・価格との関係はなお十分解明されていない状況にある。

本資料においては、米国エネルギー省・エネルギー情報庁による公的統計を用いて、米国シェールオイル・ガスの生産量と掘削リグの稼働数、あるいは原油・天然ガス価格と掘削リグの稼働数の関係について計量経済学的手法を用いて分析を行った。

当該分析の結果、原油・天然ガスとも価格変化から平均して7~10カ月後、最短で4カ月後に掘削リグ稼働数が変化しており、価格弾力性は+0.3~0.4、最大+1.4と判明した。

また、原油・天然ガスとも掘削リグ稼働数変化から平均して8カ月後、最短2カ月後に生産量が変化しており、掘削リグ1基・月稼働当+0.1~0.3 PJ/月程度の寄与と判明した。但し、原油においては掘削リグ稼働から生産量変化迄に水圧破砕や関連設備整備など中間工程の「待ち時間」が顕著であり、生産開始迄の期間に大きなばらつきが存在すると判明した。

さらに当該結果を用いて米国主要シェールオイル生産地域での原油掘削リグ稼働数および原油生産量の将来予測を試みたところ、2014年後半に急落した原油価格が現状のまま推移したと仮定すると、原油掘削リグ稼働数は2015年中に現状の半分以下に減少し、原油生産量は2016年後半迄増加を続けた後に横這い乃至微減に転じると予測された。

今後の原油価格に関する中長期的展望を考えるにあたっては、本資料での分析の再計測に加え、他地域での生産側挙動や需要側挙動について更に調査研究を進めることが必要である。