ノンテクニカルサマリー

組織の情報化と女性の活躍推進

執筆者 牛尾 奈緒美 (明治大学)
志村 光太郎 (株式会社ヒューマネージ)
研究プロジェクト ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

人的資本プログラム (第三期:2011~2015年度)
「ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究」プロジェクト

問題意識

組織の情報化により、働き方を大きく変化させることが可能となっているが、それは、ワーク・ライフ・バランス、能力発揮を促進するなど、女性の活躍推進にも大いに寄与しうる。ところが、組織の情報化と女性の活躍推進は、これまでほとんど別々に論じられてきている。

本稿では、組織の情報化が女性の活躍推進にいかなる影響を及ぼしているかについて、先進的な取り組みを積極的に展開し、成果をあげている企業の事例研究を中心に、その実態の解明を試みている。

研究結果

女性の活躍推進のためには、前提として、それが競争優位獲得に不可欠であると認識しなければならない。

その前提に立って、まずは体制・風土を改革する必要がある。つまり、(1)女性においても多様な個が存在することを認識する。そしてその上で、(2)そうした女性の多様性を受け入れる、つまり、インクルージョンというスタンスをとる。

次に必要となるのが、有効な施策である。それらは、継続就業に関連するものと能力発揮に関連するものの2つに大別できる。

女性の活躍推進における体制・風土と施策との関係を示すと、図のようになる。コンピュータ・ソフトウェアに例えていえば、体制・風土はオペレーティング・システム(Operating System : OS)、施策はアプリケーション・ソフトウェア(Application Software)となろう。オペレーティング・システムとアプリケーション・ソフトウェアの双方が揃ってはじめて、コンピュータ・ソフトウェアが機能するのと同様に、体制・風土と施策の双方が揃ってはじめて、女性の活躍推進は機能する。

それを強力に支援しうるのがITである。また、それをマネジメント面から強力に促進しうるのが、皆が、主体的、自立(律)的に、意思決定に参加でき、意見を自由に言い合える、いわゆるラーニング・リーダーシップである。

図:女性の活躍推進を成功させるポイント
図:女性の活躍推進を成功させるポイント

政策的インプリケーション

日本企業における女性の活躍推進をより効果的に支援するための政策として、以下の2点を提案したい。

1つは、継続就業関連施策の実効性をさらに高めることである。これに関しては、現在、次世代育成支援対策推進法が施行されている。それをさらに普及させるために、啓発や具体的施策の策定・運用支援など、より実効性の高い取り組みを策定し、企業に対してさらなる意識改革を促すよう積極的に働き掛ける必要がある。

もう1つの提案は、能力発揮関連施策の促進についてである。これに関しては、いまだに法整備などが進んでいない。したがって、これを強力に後押しするための具体的法律などの設置(継続就業促進における次世代育成支援対策推進法にあたるような法整備)が必要であると考える。

継続就業関連施策と能力発揮関連施策は別個のものではない。同時にかみあってこそ意味がある。そこで、2つの施策を積極的に実行している企業は、女性の活躍推進における優良企業であるという価値観を社会に提示していくよう、政府に要望したい。