企業統治分析のフロンティア:日本企業の競争力回復に向けて

企業統治分析のフロンティア、リニューアルのお知らせ

1990年代後半、マクロ環境の変化と規制緩和・制度改革の急進展の結果、日本企業では、企業統治、事業・組織に関して大規模な改革が展開されてきました。かつてメインバンク制・株式相互持合い・インサイダー(内部昇進者)からなる取締役会、従業員重視の経営によって特徴付けられた日本の企業統治は、1997年の銀行危機を境に急速に変容し、その進化の方向と改革の成果は内外の大きな注目を集めています。

また、2008年9月のリーマン・ショックは、1980年代初頭にはじまり、その後30年に渡って進展した規制緩和・資本市場の役割の拡大の再検討を促す重要な契機となりました。「行き過ぎた市場化」が指摘され、外国人投資家の増加が近視眼的な企業経営を誘発する、あるいは、雇用を犠牲にして、過度の配当、過大な経営者報酬が支払われているといった批判が強まり、他方、その逆に、日本の企業統治の国際標準からの遅れが、海外投資家の日本市場からの逃避を招いているとして、上場子会社の禁止、社外取締役の義務化、持ち合いの解消の促進などの一連の制度改革が主張されています。

ただ、いずれの主張も、正確な現状認識と制度変化の効果に関する十分な分析に支えられているわけではありません。今後の企業統治の再設計のためには、銀行危機以降、日本の企業統治がいかなる要因によって、どの程度変化したのか、リーマン・ショックはこの日本企業の進化にどのようなインパクトを与えたのかを、実証分析を通じて、正確に理解する必要があります。企業財務、株主構成、取締役会構成に焦点をあててガバナンス構造の特性を解明し、どのようにガバナンス構造が決定されているのか、どのようにガバナンスが、リスクをテイクする企業行動、高い企業業績に貢献しているのかを計量経済学的に分析する必要性はますます増大しているといえます。また、持ち株会社化の進展や、東電の原発事故などから、持ち株会社、事業組織のガバンナスや、公益企業のガバナンスの問題の重要性も上昇しています。

ところで、コーポレート・ガバナンス研究会がRIETI内に2002年に設立されて以来、一貫して、コーポレート・ガバナンスの実証分析を進め、数冊の成果を世に問う一方、折にふれて、旧企業統治分析のフロンティアのコーナーで研究メンバーの成果・意見を公表してきました。本年6月には近年の研究成果として、宮島英昭編『日本の企業統治:その再設計と競争力の向上に向け』(東洋経済新報社)を出版いたします。この機会に、本研究会のページを「企業統治分析のフロンティア:日本企業の競争力回復に向けて」としてリニューアルし、齋藤卓爾(京都産業大学准教授)の協力を経て、その充実を図ることといたしました。

本研究グループは日本企業のコーポレート・ガバナンス、企業金融、企業組織・戦略に関する第一線の研究者により構成されています。本コーナーでは、今後、研究会メンバーや御協力頂いた実務家方々の分析や事例研究のエッセンスを紹介頂き、今後の企業統治の再設計の方向に関して提言頂こうと考えています。また、読者の皆様からのフィードバックも期待しております。本連載が、今後の日本の企業統治をめぐる議論の基礎となる情報を提供に貢献できればと期待しております。

2011年6月20日

  • 宮島 英昭写真

    編集長 宮島 英昭

  • 齋藤 卓爾写真

    副編集長 齋藤 卓爾