やさしい経済学―女性の活躍と経済効果

第5回 女性比率と企業業績、正の相関

児玉 直美 コンサルティングフェロー

女性活躍の経済効果を測る方法として、企業の女性比率と企業業績の相関を分析する方法もあります。ベッカーやシマンスキーの伝統的な「差別モデル」では、報酬が安く十分に活用されていない女性人材を雇うことで業績が良くなると考えてきました。企業にとっては、女性の賃金コストよりも女性の生み出す利潤や生産性の方が大きければ、女性雇用と企業業績は正に相関することになります。

川口大司東大教授の研究は、女性の多い企業で利益率は高いが、男女賃金格差は、その要因の20分の1しか説明できず、残りは男女の生産性格差に起因する可能性を示唆しています。筆者も、女性比率が高い企業で業績が良いことを確認していますが、同一企業が単に女性比率を高めても業績は変化せず、女性比率は男女を均等に扱う雇用管理の代理変数となっているため、ワークライフバランス(WLB)などの雇用管理を変革して初めて企業業績を上げることができます。

山本勲慶応大教授も、正社員女性比率が高いほど企業の利益率が高まる傾向を確認しています。さらに中途採用の多い企業やWLB施策が整っている企業は、正社員女性比率の影響がより顕著で、人件費節約だけでなく生産性自体の向上を通じて、女性の活用が企業業績を高めている可能性を示唆しています。

シーゲルらは女性が役員や管理職として経営に参画した時に企業の利益率が上昇することを示しました。その大部分は人件費節約効果ですが、高い収益性の一部は、女性の経営参画が生産性を高める効果による可能性を指摘しています。

多くの既存研究は、女性雇用と企業業績を企業間で比較した場合には正の相関関係があることを示しています。これは必ずしも女性を増やすと企業業績が上がるという因果関係を意味しません。しかし、女性が多く好業績の企業では、男女均等の雇用管理、流動性の高い雇用形態、WLB施策の導入など共通の特徴があります。今後、女性活用を業績に結び付けたい企業にとっては、「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた企業のように、女性が多い好業績企業の取り組みは参考になるでしょう。

2016年8月26日 日本経済新聞「やさしい経済学―女性の活躍と経済効果」に掲載

2016年9月7日掲載

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