長期エネルギー需給見通しについて

開催日 2015年9月9日
スピーカー 吉野 恭司 (資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官)
モデレータ 星野 光秀 (RIETI研究調整ディレクター)
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開催案内/講演概要

2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画に基づき、本年1月から検討を進めてきた長期エネルギー見通し(いわゆる「エネルギーミックス」)がようやく取りまとめられた。これは、エネルギー政策の基本的視点である安全性、安定供給、経済効率性及び環境適合について達成すべき政策目標を想定した上で、基本計画の方針に沿った施策を講じることによって実現されるであろう将来のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示したものである。具体的には、2030年時点におけるエネルギー需要の見通し(原油換算:326百万kl)、これを賄うための一次エネルギー供給の構成、再生可能エネルギー(22~24%)、原子力(20~22%)といった電力供給の内訳を示したところである。

今回のBBLセミナーでは、これまでの議論の過程で取り上げたエネルギーを取り巻く諸事情やこうした結論にいたった考え方を紹介するとともに、今後このエネルギーミックスを具現化していくための分野毎の政策の方向性などについて論ずることとしたい。

議事録

長期エネルギー需給見通しの位置づけ

吉野 恭司写真「長期エネルギー需給見通し」は、エネルギー基本計画を踏まえ、エネルギー政策の基本的視点である安全性、安定供給、経済効率性および環境適合について達成すべき政策目標を想定した上で、政策の基本的な方向性に基づいて施策を講じたときに実現されるであろう将来のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示すものです。2014年4月に閣議決定された第4次エネルギー基本計画を受け、本年7月に長期エネルギー需給見通しがまとめられました。

2010年6月に発表された「2030年のエネルギー需給の姿」において、2030年度のエネルギーミックスは原子力発電が約5割、再生エネルギー導入量が約2割、つまりゼロエミッション電源比率が約7割という大胆なものでした。しかし、その後の東日本大震災の原発事故を受けて状況は大きく変わりました。2014年の第4次エネルギー基本計画では、原発依存度は可能な限り低減、再生エネルギー導入量は約2割を上回る水準、そして徹底した省エネルギーという大まかな方向性が示されています。

エネルギー基本計画に記載された方針に基づき、現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像について検討するため、2015年1月、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下、長期エネルギー需給見通し小委員会が設置されました。また、電源ごとの発電コストについて、小委員会の下に発電コスト検証ワーキンググループを設置し、過去の検証結果も踏まえつつ最新のデータなどを反映し、改めて試算を実施しています。

見通し策定の基本方針

見通し策定の基本方針は、エネルギー政策の基本的視点である、安全性、安定供給、経済効率性および環境適合に関する政策目標を同時達成する中で、徹底した省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化などを進めつつ、原発依存度を可能な限り低減させるなど、エネルギー基本計画における政策の基本的な方向性に基づく施策を講じた場合の見通しを示すというものです。

3E+S(自給率・電力コスト・温室効果ガス排出量+安全)に関する政策目標としては、安全性を大前提として、自給率は震災前(約20%)をさらに上回る25%程度まで改善、電力コストは現状よりも引き下げる(2013年度9.7兆円から2030年度9.5兆円へ)、温室効果ガス排出量は欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標の達成を掲げています。

2012年の日本の1次エネルギー自給率は、震災前に比べて大幅に低下し、OECD34カ国中、2番目に低い水準となっています。わが国はエネルギー自給率が低いために、オイルショック(供給面)やリーマンショック前の燃料高(価格面)という危機にさらされてきましたが、東日本大震災以降は原子力発電の停止に伴い、さらに自給率が大きく低下しています。

また、オイルショックなどを踏まえ、省エネ対策強化に加え再エネ・原子力発電等を進め、供給構造を転換させていくことにより、化石燃料依存度を低減する努力を重ねてきましたが、東日本大震災以降、原子力発電所停止の影響により、オイルショック時に迫る状況に戻ってきています。

電力コストに関しては、東日本大震災以降の原発停止に伴う火力の焚き増しにより、燃料費は増大しました。さらに再エネの拡大に伴うFIT買取費用が増加したことにより、2010年度の燃料費合計4.9兆円から2013年度は9.7兆円まで増加しています。今後、原発依存度の低減、再生可能エネルギーの最大限の導入拡大をしていく中で、3Eのバランスを確保した電源構成により、電力コストを現状よりも引き下げることを目指しています。

震災前に比べ、平成26年度の家庭向け電気料金は約25%、産業向け電気料金は約40%上昇しています。中小・零細企業の中には、電気料金の上昇を転嫁できず、経営が非常に厳しいという声も高まっています。わが国の電気料金は、震災前から産業用、家庭用ともに主要各国に比較して高い状況でしたが、2014年第2四半期の産業用料金は、米国の約2.6倍、フランスの約1.4倍、イギリスの約1.2倍、ドイツの約1.0倍、イタリアの約0.5倍となっています。

震災以降、温室効果ガス排出量は増加し、2013年度のエネルギー起源CO₂排出量は1235百万トンと過去最大となっています。現在、28カ国1地域が約束草案を提出しており、米国は2025年に2005年比26~28%減、EU(28カ国)は2030年に少なくとも1990年比40%減を示しています。わが国は、欧米に遜色ない温暖化ガス削減目標を掲げ、世界をリードすることに貢献する見通しであることを目指しています。

今回の長期エネルギー需給見通しにおける新たな視点

今回の見通しには、新たに4つの項目を盛り込んでいます。具体的には、1)電力・ガス分野等におけるエネルギーシステム改革の進展により、供給サイドの業種の垣根がなくなることや、ネガワット取引をはじめとするディマンドリスポンスが進展することなど新たなエネルギービジネスの展開が可能となるとともに、需要家の選択肢が拡大する。2)本年4月に設立された電力広域的運営推進機関が機能し、広域運用が強化されることで、コストが低廉な電源から稼働させるなどの運用(メリットオーダー)が全国大で可能となる。3)情報通信技術の進展により、家電、自動車、工場内設備などのエネルギー消費のリアルタイムな状況の把握や一括管理等が可能となる。4)北米大陸におけるシェール革命の進展、油価の乱高下、中東情勢の不安定化などによる長期的な不確実性の増大や国際エネルギー市場の重心のアジアシフトなど国際的なエネルギー需給構造の変化を踏まえ、石油、LNG、石炭などの低廉かつ安定的な供給確保を図る必要がある。ということです。

エネルギー需要の見通しと省エネルギー対策

2013年度の最終エネルギー消費は前年比1.0%と減少しました。ただし、家庭部門・運輸部門が減少する一方、生産活動の増加などにより産業部門・業務部門が増加しています。

2030年度の人口については、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による最新の中位推計(2012年)を利用。2030年度の世帯数については、エネルギー需要をよりきめ細かく把握する観点から、社人研推計(2013年)をベースに、住民基本台帳調査の値を用いて補正しています。

主要業種の活動量として、鉄鋼業界における2020年以降の「低炭素社会実行計画」で想定されている2030年度の全国粗鋼生産量は基準ケースで1.2億トンとなっています。アジアを中心とする世界的な経済成長を背景に日本製の高機能鋼材に対する海外需要が堅調であることや、国内製造業の成長を背景とした主な民間投資(設備投資)の堅調な伸びにより、内需についても底堅いと見込まれることなどが考慮された水準としています。

業務床面積はGDPなどのマクロフレームから推計しており、経済成長や高齢者人口増に伴い、第3次産業の経済活動の増加などが見込まれることを踏まえ、2030年度に向けて、引き続き漸増傾向で推移することを想定しています。

経済成長などによるエネルギー需要の増加が見込まれる中、徹底した省エネルギーの推進により、2030年度のエネルギー需要は2013年度より減少する見通しです。電力需要についても、節電の推進によって2013年度と同程度まで抑えることを予想しています。

また、各部門における省エネルギー対策の積み上げにより、5030万KL程度の省エネルギーが計上されています。内訳は、産業部門で1042万KL、運輸部門で1607万KL、業務部門で1226万KL、家庭部門で1160万KLとなっています。

具体的な取り組みとして、産業部門では、低炭素社会実行計画の推進などが示されています。業務部門・家庭部門では、新築建築物に対する省エネ基準適合義務化のほかLED照明・有機ELの導入、BEMS(ビルエネルギー管理システム)あるいはHEMS(家庭エネルギー管理システム)による見える化・エネルギーマネジメントといったものがキーになると考えられます。運輸部門では、次世代自動車の普及、燃費改善(2台に1台が次世代自動車、燃料電池自動車の年間販売数最大10万台以上)、交通流対策が掲げられています。

エネルギー消費効率については、石油危機後並みの大幅な改善を目指し、技術的にも可能で現実的な省エネルギー対策として考えられ得る限りのものをそれぞれ積み上げ、最終エネルギー消費は326百万KL程度(対策前比13%減)と見込んでいます。

長期エネルギー需給見通しでは、省エネルギーに関して、「産業、業務、家庭、運輸各部門における設備・機器の高効率化の更なる推進、エネルギーマネジメントを通じたエネルギーの最適利用、詳細なエネルギー消費実態の調査・分析等を通じたエネルギー消費の見える化を進め、スマートできめ細かな省エネルギーに取り組む」としています。

そして具体的な取り組みとして、「産業部門においては、工場のエネルギーマネジメントや革新的技術・高効率設備の開発・導入、中小企業の省エネを促進するための支援等を進める。また、業務・家庭部門においては、BEMS・HEMSを活用したエネルギーマネジメントの徹底を図るほか、新築建築物・住宅に対する省エネ基準の段階的な適合義務化、国民各層において省エネの取り組みが進むよう国民運動の推進等を図り、消費者の省エネ行動の一層の活性化を促す。さらに、運輸部門においては、次世代自動車の普及・燃費改善、交通流対策に取り組む。また、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車といった水素関連技術の活用も推進する。加えて、ネガワット取引をはじめとするディマンドリスポンスの取り組みを推進する」としています。

資源エネルギー庁でも、成長戦略の一環として、こうした分野において積極的な投資が起こることを促進していきたいと考えています。家庭部門に関しては、まずエネルギー消費の実態把握に取り組まなければなりません。各家庭におけるスマートメーターの導入については、2024年までに全世帯へ普及する計画が着実に進んでいます。さらにスマート家電の普及や新サービスの提供など、前向きな展開が期待されるところです。

エネルギー供給

再生可能エネルギーの導入状況として、2012年7月の固定価格買取制度開始後、2015年4月時点で新たに運転を開始した設備は約2011.6万kW(制度開始前と比較して9割以上増)となっています。制度開始後、認定された容量のうち運転開始済量の割合は約23%となり、制度開始後の導入量・認定量ともに太陽光が9割以上を占めています。今後、こうした偏重をどのようにバランスしていくかが課題といえるでしょう。

2012年の固定価格買取制度の導入などにより、再エネ導入量は大幅に増加(制度開始前と比較して約8割増)しています。認定容量も2015年4月時点で約8760万kWにまで拡大しています。他方、固定価格買取制度に基づく2015年度の賦課金は総額約1兆3200億円と、昨年度(約6500億円)に比べて大きく増加し、今後さらに増えていく見込みです。

3Eを満たしながら再生可能エネルギーを最大限導入するためには、各電源の個性に合わせた導入が必要です。そこで、自然条件によらず安定的な運用が可能な地熱・水力・バイオマスは原子力を置き換え、太陽光・風力(自然変動再エネ)は、調整電源としての火力を伴うため、原子力ではなく火力を置き換えるという整理をしています。

2030年度の再生可能エネルギー導入量は、合計で2366~2515億kWh(22~24%)程度が見込まれています。これは2013年度の約2倍、水力を除くと約4倍の導入量に当たります。その際のFIT買取費用は約3.7兆~4兆円程度と見込まれ、電力コストを現状よりも引き下げる範囲内で最大限の導入となります。

地熱(1.0~1.1%程度)は、現在把握されている案件の開発が順調に進行するとともに、大規模開発について環境規制の緩和が実施された場合、102億kWh程度となる見通しです。新たに空中物理探査を全国5地点程度で実施し、3万KW級の開発が5カ所程度成功した場合は、113億kWh程度と算出されています。

バイオマス(3.7~4.6%程度)は、未利用間伐材や一般廃棄物等、資源の種類や供給の想定をベースに、バイオマスの種類別に導入量を検討し、その合計が394~490億kWh程度となっています。水力(8.8~9.2%程度)に関しては、現在進行中の案件または経済性のある案件の開発の進展、既存発電所の設備更新による出力増加、未利用落差の活用拡大などが進むとともに、自然公園法や地元調整等自然・社会環境上の障害があるものの解決可能とされる地点の開発が進んだ場合、939~981億kWh程度が想定されています。

固定価格買取制度については、「再生可能エネルギー導入推進の原動力となっている一方で、特に太陽光に偏った導入が進んだことや国民負担増大への懸念を招いたことや、電力システム改革の進展、電力の安定供給への影響等も勘案し、再生可能エネルギーの特性や実態を踏まえつつ、再生可能エネルギー間のバランスの取れた導入や、最大限の導入拡大と国民負担抑制の両立が可能となるよう制度の見直しを行う」としています。

石油火力は、緊急時のバックアップ利用も含め必要な最小限の量を確保するものとし、315億kWh(3%)程度を想定しています。また、3Eの観点から全体としてバランスの取れた構成を検討した結果、石炭火力は2810億kWh(26%)程度、LNG火力は2845億kWh(27%)程度となっています。化石エネルギーに関しては、「石炭火力をはじめとする火力発電について、非効率な設備を抑制することが可能な仕組みを導入するとともに、電気事業者による自主的な枠組みの早期構築を促す等低炭素化に向けた取り組み等を推進する」としています。

原子力に関しては、本年4月末、高経年炉5基(敦賀1号機、美浜1号機・2号機、島根1号機、玄海1号機)が運転終了となり、2基(高浜1号機・2号機)の運転期間延長認可が申請されました。同6月16日、浜岡3号機が新規制基準への適合性確認を申請したことにより、計15原発25基が申請中となっています。

エネルギー基本計画において、原発依存度は「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」としています。具体的には、1)省エネによる電力需要の抑制(2030年の電力需要を対策前比17%削減)、2)再エネ拡大による原子力の代替(自然条件によらず安定的な運用が可能な地熱・水力・バイオマスを拡大)、3)火力の高効率化による原子力の低減(石炭火力の発電効率が全体として6.7%向上)を想定しています。

そして長期エネルギー需給見通しでは、「不断の自主的な安全性の向上の取り組み、ステークホルダーとの適切なリスクコミュニケーション、科学的有望地の提示をはじめ、国が前面に立ち、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取り組みを推進する。さらに、原発依存度の低減や電力システム改革後などを見据え、円滑な廃炉や核燃料サイクル事業の安定的・効率的な実施等のための原子力発電の事業環境整備を図る」ことを示しています。

多様なエネルギー源の活用と供給体制の確保については、「住宅用太陽光発電の導入や廃熱回収・再生可能エネルギー熱を含む熱利用の面的な拡大など地産地消の取り組みを推進する。また、分散型エネルギーシステムとして活用が期待されるエネファームを含むコージェネレーション(1190億kWh程度)の導入促進を図る」としています。

2030年度の需給構造の見通し

自給率は、2013年度の6.3%程度から2030年度は24.3%程度まで改善し、化石燃料依存度(電源構成ベース)は、同88%程度から同56%まで低減することが予想されています。再エネの拡大、原発の再稼働、火力の高効率化などに伴い、2030年度の燃料費は5.3兆円まで 減少します。他方、再エネの拡大に伴いFIT買取費用が3.7~4.0兆円、系統安定化費用が0.1兆円増加する見通しのため、電力コストは、現状(2013年度9.7兆円)に比べ2~5%程度低減されることが見込まれます。

2030年のエネルギー起源CO₂排出量は、2013年の温室効果ガス総排出量比で21.9%減となることが想定されています。わが国の温室効果ガス削減に向けた約束草案は、さらにメタン等のその他温室効果ガス、吸収源対策を加え、2030年に2013年比26.0%減(2005年比25.4%減)の水準となっています。

「省エネ・再エネを拡大しつつ、原発依存度を可能な限り低減させる」ことがエネルギー基本計画の方針であり、3Eを同時達成する中で、この方針を実現することが必要です。そして、自給率向上・CO₂抑制と国民負担の抑制を両立させるバランスが重要となります。

2030年度以降を見据えて進める取り組み

2030年度以降についても、今から政策的に取り組んでいく必要があります。今回の見通しでは、「安全性、安定供給、経済効率性および環境適合に関する政策目標の確実な実現と多層・多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築に向け、革新的な蓄電池、水素社会の実現に向けた技術、次世代型再生可能エネルギー、二酸化炭素の回収貯留(CCS)および利用に関する技術をはじめとする新たな技術の開発・利用の推進、メタンハイドレートなどわが国の排他的経済水域内に眠る資源の活用に向けた取り組みも推進する」としています。

長期エネルギー需給見通しの定期的な見通し

たとえば産業界からは、更なるエネルギーコスト低減を要望する声があるように、その他の観点についても、より改善していくことが大切といえます。「今後、省エネルギーの進展、再生可能エネルギーの導入、各電源の発電コストの状況や原発を巡る動向等、長期エネルギー需給見通しを構成するさまざまな要素が変化することも想定される。このため、こうした状況変化も踏まえつつ、長期エネルギー需給見通しについては、少なくとも3年ごとに行われるエネルギー基本計画の検討に合わせて、必要に応じて見直すこととする」とあるように、この長期エネルギー需給見通しも、来年秋以降には次の対応を考えていかなければなりません。

質疑応答

Q:

発送電分離や小売自由化の動きが進む中で、今回の見通しで示された「あるべき姿」が達成されるためのカギは、どこにあるとお考えでしょうか。

A:

システム改革に関しては、たとえば原発の廃炉や核燃料サイクルを、民間事業として進めていけるような環境整備が課題といえます。再生可能エネルギーは、自由化が進む中で、より合理的に安いコストで導入できる方策を考えていく必要があります。基本的には、まず電源構成をしっかり確立した上で、自主的な取り組みの中で、それぞれの供給目標などを実現していければいいと思います。むやみに強制して、結果的に歪みが生じてしまう事態は避けるべきでしょう。

Q:

電気の輸出入に関する議論は、具体的にあるのでしょうか。

A:

国際連携線の話は、ときに出てきます。個人的に、欧州のデザーテック構想などは非常に興味深いわけですが、日本ではなかなか難しいため、今のところ具体的な議論はないと思います。

Q:

原子力の発電コストが他の電源に比べて低く試算されていますが、その構成について、詳しくご説明いただきたいと思います。

A:

2014年モデルプラント試算結果では、原子力の発電コストは10.1円/kWh~となりました。おもな内訳は、追加安全対策費3.3、資本費3.1、燃料費1.5、事故リスク対応費0.3(いずれも円/kWh)などとなっています。これらは、福島の原発事故で生じた賠償や除染といった費用を踏まえて算出した数値であり、さらに、追加的安全対策費2倍で+0.6、廃止措置費用2倍で+0.1、事故廃炉・賠償費用等1兆円増で+0.04、再処理費用およびMOX燃料加工費用2倍で+0.6(いずれも円/kWh)といった感度分析も行っています。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。