日本とアジアに官民パートナーシップの時代が到来

開催日 2005年5月30日
スピーカー 杉田 定大 (経済産業省貿易経済協力局通商金融・経済協力課長)
モデレータ 田辺 靖雄 (RIETI副所長)

議事録

はじめに

今日お話しする「市場化テスト」や「官民パートナーシップ(PPP)」の実施には、基本的な考え方として効率性や公正、透明性が非常に大切です。市場化テストにまつわる問題の実例として、最近の新聞紙上でも取り上げられていますが、「1円落札※」(※公共サービスの質向上や運営コストの削減等、官業の効率化を目的とする市場化テストのモデル事業であった厚生年金保険加入を促す業務において、社会保険庁から業務受託実績のあった東京都社会保険労務士会が1円で落札。市場化テストの目的にそぐわないと批判が高まり、内閣府は防止策を検討している)といったことも起こっています。一方で、本年4月には、美祢社会復帰促進センター(山口県美祢市)の整備・運営事業が総合評価落札方式で民間企業に委ねられ、PFI(Private Finance Initiative)手法を活用した刑務所の社会更正施設の官民協働による運営が実現する運びとなっています。

現在の会計法あるいは会計法予決令と呼ばれているものは、長年にわたってほぼ改正されることもなく、ガイドライン等によって少しずつ解釈を変えながら存続してきました。これには、やはり非常に無理があるということで、市場化テスト等の新しい手法を導入していかなければいけないという問題意識が広がってきています。また、基本的に会計法では、一部の例外を除いては、予定価格を下回る最低の価格で調達するように定められているため、技術サービス評点というものが必ずしも然るべく評価されない制度であるということがいえます。

「市場化テスト」においては、既存の入札制度を変えることが基本原則となっていますが、それは効率的な調達を実現すると同時に、談合事案をなくしていくための手法の導入でもあります。イギリスでは、1980~90年代にかけて国営企業の民営化や公共サービスのアウトソーシング、PFIの導入が行われてきました。特に、1992年にPFIについての法律が施行された後、1997年に発足したブレア政権によってPFIからPPP(Public-Private Partnership)へと概念が拡大されていきました。私たちが非常に驚いたのは、当時のイギリス政府によるサービスや財の合理的な調達手法は、トヨタのビジネスモデルを参考にして、税金の費用対効果を公共サービスのあり方の中で最優先して実施するためにはどうすればよいのかという観点で考えられたものだったのです。

官業の民間開放はなぜ必要か

こうしたことを踏まえて、日本において、なぜ官業の民間開放が必要なのか、次のようにまとめたいと思います。
(1)行財政改革の推進
「官固有の業務」を特定し、その他を民間に委ねることで、国民負担増なき行政サービスの拡充。業務が急増している公的分野でより大きな利点。
(2)国民の利便性の向上
画一的な官業から、利用者の多様なニーズに応えた質の高い行政サービスの提供。
(3)民間の事業拡大
規制改革で民間の事業機会の創出(新規産業の創造)と雇用の拡大。

その他に、資本市場をつくっていくということも、これから大事になってくるでしょう。分割民営化やバイアウトといった手法が用いられるようになったり、新しい産業群が発生したりすることも考えられます。また、官業の民間開放は、グローバルな競争力の強化にもつながります。たとえば、公共事業ではありませんが、電力事業などは日本国内の規制緩和がきっかけとなって海外での競争力も高まりつつある分野であるといえます。

市場化テストとは

市場化テストとは、官業を民間に開放するための横断的な手法です。官が独占的に提供している行政サービスを民間事業者との競争状況にさらすために、対等な競争条件が確保される前提で官と民との間で競争入札を実施し、質とコストの両面において優れた事業者が選定されます。もともとはイギリスやオーストラリアで導入され、現在ではアメリカやオランダ等多くの先進国で実施されています。日本でも市場化テストを導入することによって、国や地方自治体が行政改革を進める上で大きな成果を得られることが期待されています。

日本においても、市場化テストと類似した行政改革の手法は行われてきました。郵政三事業・道路公団等の「民営化」、国や自治体事業の部分的な「業務委託」、PFI制度を活用した公的施設の民間運営、指定管理者制度による「公設民営」、駐車違反取締の民間委託(道路交通法の改正)などです。個々の行政改革を包括的・網羅的に行う手段として、市場化テストの有効性が期待されています。

次に、市場化テストの留意点として、次のようなことが挙げられます。
(1)公平な入札が実施されるための手続きの透明性の確保(質と価格の考慮)
(2)公共サービスの民間移管により、その質が担保されること(事業評価基準の設定・実施)
(3)市場競争の規律が、常時維持されるようなモニタリングやガバナンスのあり方
(4)制度運営の最終的な責任は官が保持し、公共サービスの提供は民間という役割分担(公共サービスの提供と公務員による実施との区別を明確化)

最近の公物管理の考え方などにもみられますが、公と民との境がなくなってきている中で、判断の尺度は一定ではなく、ケースバイケースで対応していかなければならない状況です。従来のように、あくまでも官が独占するという考え方は通らなくなってきています。

市場化テストの各国事例

アメリカでは、ブッシュ政権において2001年から本格的に取り組まれるようになりました。それ以前にも地方レベルでは、群や市町村のおよそ30%が官民競争を採用した結果、そのうちの3分の2の業務が民間へ移管・委託されたというデータがあります(1999年調査)。また、連邦政府機関業務のレヴュー(2003年改定)では、各省庁が政府固有の業務と民間でも可能な商業的業務とに自己判定されることになりました。そして、具体的な目標数値として15%の業務を民間へ移管することを掲げ、着実な成果がみられています。

イギリスでは、地方政府を対象にCCTという競争入札制度が1990年代に入ってから導入されました。その成果として、1992~94年には、市場化テスト対象の官庁業務の半分強が民間に移管しました。その後、1999年にベストバリュー制度(サービスのコストと品質の両方に配慮した基準)に転換され、官民競争の考え方が維持されています。

オーストラリアは、市場化テストに対して非常に熱心に取り組んでいます。まず、連邦政府による国家競争政策改革法に基づき、競争法(CTC)が地方政府や公営企業のすべての事業に適用されています。その結果、連邦では約85%、地方では40~50%の業務が民間へ移管しているということです。具体的な実施は州政府に委任されていますが、官であることの競争上の優位性を明確に否定し(同じサービス内容であれば対等)、市場化テストの対象を政府の「顕著なビジネス活動」としています。

オーストラリアの取り組みで象徴的なのは、公共職業紹介所の改革です。1990年代、公共職業紹介所の独占的職業紹介の非効率が社会問題となりました。そこで1996年に、職業紹介について民間と公共団体の同一条件下での競争が提言され、翌97年、公共職業紹介所の業務の民間への一般競争入札が決定しました。98年には、公共職業紹介所は廃止。政府出資の特殊会社に再編され、一般競争入札が実現されました。現在は、エリアごとに民間と政府出資の特殊会社が競合しながら事業が行われています。

市場化テスト導入のための課題

日本では、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)2004」の中で、次のような内容が示されています。
(1)官でなければできない業務の範囲を明確にするための「市場化テスト」や、民間開放に関する数値目標の設定など、民間開放推進のための制度を早期に導入する。
(2)平成16年度中に制度設計を行うとともに、平成17年度の試行的導入に向けた検討を行う。
(3)市場化テストの導入についての調査・研究(規制改革・民間開放推進3カ年計画/2004年3月)を前倒しで行う。

では、市場化テスト導入のための課題として、どのようなことに取り組んでいくべきでしょうか。日本ではまだ、現業部門と政策部門の切り分けがなされていませんので、たとえば現業部門の原価計算やコストについての議論がしにくいのが現状です。そこで、まず国の執行部門、外局、地方部局、独立行政法人、特殊法人といった幅広い対象事業を設定することから始めるのが1つの方法だと思います。また、市場化テストを本格的に導入するにあたって、民間提案等の活用とトップダウンの意思決定によって、民間事業者が希望する業務から切り分けていくという方法もあると思います。

そもそも会計法では、官と民の競争は想定されていません。あくまでもモノやサービスを官が民間から調達、あるいは売却するという考え方に立っていますので、そうした制度から変えていかなければならないでしょう。具体的には、官民競争入札制度の創設(会計法の見直し)、民間事業を阻害する諸制度の緩和や官民間の競争条件の平準化といった法的枠組みの形成が必要です。また、対象となる官業の直接・間接のコスト、事業の運営全般に関する包括的な情報開示をどのようにしていくのかという大きな課題もあります。さらに、官民競争条件の平準化等を確保するための監視機能・体制の整備が大前提とされなければなりません。イギリスでは、防衛調達以外のものは首相府に属するOGC(Office of Government Commerce)という組織が中心となって調達を行います。将来的には日本においても、より合理的な調達のための調達庁のようなものが内閣府に設置されることも考えられます。

市場化テストの実施プロセス(イメージ)

そして、実際に市場化テストが導入される際には、モデルケースとして、次の(1)~(4)のプロセスをたどることが考えられます。
(1)対象事業の決定
各府省等(独立行政法人・特殊法人)は毎年、民間開放可能な特定事業を選定し、リストを公表。また、各府省等は毎年、民間の提案により特定事業の追加、リストの更新を行う。
(2)官民競争条件の平準化
各府省等は、特定事業のコスト(実績)等を内閣官民競争促進室(仮称)に提出。同室は、予定価格等の評価基準を設定。なお、評価基準は官民間の競争条件の公平性に十分配慮し、価格のみならずサービスの質も基準とする。
(3)官民競争入札の実施
各府省等は、内閣官民競争促進室の了解を得て入札条件を提示し、官民競争による入札を実施。内閣官民競争促進室は、入札条件が官に有利とならないようチェックしながら入札の範囲や条件を調整。
(4)結果評価・落札者決定
各府省等は、内閣官民競争促進室の策定した評価基準を開示し、落札者を決定。内閣官民競争促進室は、契約のモニタリングや監査等を定期的に実施する。
民が落札した場合:再入札の実施を条件に契約。官から民に譲渡・委託等。官の職員の配置転換・民間出向等。
官が落札した場合:再入札の実施を条件に契約。従前よりも価格と質の遵守を徹底。

特に、(4)において民が落札した場合などを考えると、公務員制度改革が重要だといえます。イギリスにはTUPEという制度があり、民間事業者が競争入札に参加する際の入札条件の中に、一定の技能を持った職員を雇用することが定められています。また、公務員が在籍したまま民間事業者へ出向し、将来は自動的に民間事業者へシフトする在籍出向という手法が行われています。一方、官が落札した場合には、やはりガバナンスの効率化といった官民競争の重要な目的を忘れてはならないでしょう。

今後の具体的なスケジュール

平成16年中には、市場化テストのガイドラインの策定、官民間競争条件の監視機能、各省のモデル事業の選定等が実施されてきました。平成17年度には、市場化テスト準備室が内閣に設置され、市場化テスト法(官民競争法)の検討および整備が行われます。これらは国による事業ですから、まず国が率先垂範し、それに準じて地方自治体の事業についても環境整備が図られることが非常に大切だと思います。

イギリスでは過去、ブリティッシュテレコムが民営化した際には、それまでの約42%の雇用が削減されました。また、上下水道会社10社では、1990~99年にかけて約20%の雇用が削減されたということです。民営化や官民競争が進んでいく中で、雇用は大事な課題です。私がイギリスを訪れて大変印象深かったのは、刑務所や防衛関係のバックアップサービス、病院、教育委員会のような機関業務や第三者評価等を請け負う民間事業者のもとで、数万人という元公務員がいきいきと働いている姿でした。日本でも将来的には、問題となっている天下りではなく、官民競争あるいは民間同士の競争の中で公務員が再就職していくという形態が考えられると思います。特定の会社に不公正な形で雇用されるのではなく、イギリスやオーストリアで導入されているように、あくまでも競争の中で、どの会社が落札しても技術、技能を持った一定の公務員が雇用されていくという制度は、私たちも参考にすべきでしょう。

我が国の行政サービス民間解放の代表事例

日本では、まず「民間委託」の事例として、先日、警視庁の駐車違反取締り業務の入札説明会が行われ、およそ500社が参加したといわれています。大阪府警や京都府警でも、同様の動きがみられています。次に「PFI」の事例として、冒頭にお話しした山口県美祢市の刑務所(社会復帰促進センター)は、PFI手法を活用した日本の代表的なケースになると捉えられています。また、東京都原宿警察署には、PFI手法による外国人に対応した300人収容の留置所を設置する計画となっています。「擬似市場化テスト」の事例としては、社会保険庁の国民年金徴収業務・厚生年金の加入督促業務、年金電話相談業務やハローワーク関連の若者向け就職支援業務・求人開拓などが挙げられます。「指定管理者制度」は、地方自治体による公の施設の民間委託で、民間事業者にとってはビジネスチャンスとして捉えられています。

指定者管理制度について

地方自治体は今秋までに公の施設を直営で運営するか、指定管理者制度によって民間事業者に委託をするか決定しなければならないことになっています。具体的には、福祉施設(保育所、養護老人ホーム、福祉センター等)、衛生処理施設(ゴミ処理施設、し尿処理施設等)、スポーツ施設(体育館、競技場、プール等)、社会教育施設(青年・自然の家、図書館、資料館等)、宿泊施設(国民宿舎等)、公園、公会堂等(市民会館、公会堂、文化センター、勤労会館、婦人会館、コミュニティセンター等)、医療施設などが対象となっており、民間事業者にとってはビジネスチャンスとして捉えられています。

しかし現状は、1カ月といった非常に短い入札期間を設定し、結果としてOB会社、あるいはOBの第三セクターや財団法人等に委託されるような歪んだ形で契約が行われているケースがみられます。また、反社会的な団体がNPOの名を語って事業に参入してくるケースもあります。私たちは、こうした望ましくないケースをどう排除していくのか、透明性をもって公正に事業を進めていくのかということを、引き続き、よく見ていかなければならないでしょう。

アジアのPPP(Public-Private Partnership:官民パートナーシップ)

これまで、日本では厳しい競争のない状態が続いてきた分、海外での事業をなかなか落札できない状況になっています。特に、都市交通といったプラント事業に関しては連戦連敗で、結果を見ると日本勢の入札額が欧米勢の落札額の2倍にも上っていたというほど格差が大きいのが現状です。よくよく考えてみると、私たちは製造業に関する現地化は進めてきましたが、サービスの分野についてはほとんど進んでいません。しかし欧米勢は、国内で着実に行ってきた規制緩和の中で競争力をつけた事業者が海外に進出し、強みを発揮しているわけです。そこで、そろそろ私たちも、欧米勢がまだ着手していない分野も含めて取り組んでいこうというのが、アジアのPPPにおける基本的な考え方です。そして、非常に大事なことは、日本の国内、国外を問わず、政府の構造改革と同時に民間企業の経営改革を積極的に推進していく必要があるということです。

世界の動向として、世界銀行は近年、インフラ建設を重要視する“inclusive development(包括的発展)”という概念を打ち出し、インフラ建設を貧困削減と経済成長のブリッジとして位置づけています。そして、2005~10年の東アジア地域におけるインフラ整備(メンテナンスや運営も含む)需要は、毎年2000億ドルを超えると推計し、これらのインフラ整備においては、PPP手法を用いることが極めて重要であるとしています。

アジアのPPPの定義として、まず商業性が著しく困難な分野は政府財政支出(円借款を含む)で行い、商業性のある分野はPFIや民営化、民間委託等によって行われるべきでしょう。これらの間に位置するのが官民の協働によって商業性が成立する分野であり、PPPの領域となります。たとえば、港湾や鉄道、水道、空港のように、コストが膨大で民間では手に負えないインフラの整備は公共事業として行い、オペレーションやメンテナンスといった部分を民間事業者が請け負うというのがPPPの典型的なパターンだといえます。また現在、従来のインフラ整備だけでなく、電子調達(マレーシア)や無線IP電話システム(タイ)、電子パスポート(フィリピン、タイ、シンガポール等)といった行政サービスのIT分野においても、PPPの取り組みが進められています。

ODAを含めた資金的手当のあり方

資金面の考え方として、民間事業者が参入できる分野の拡大にあたっては、一定の要件のもとで、セクター・ローンと無償の組み合わせによって民間事業者と協調しながら事業を行っていくことが考えられます。また、民間事業者が参入している分野については、「アジア開発レベニュー・ボンド(ADRB)」の発行やプロジェクト・ファイナンス(融資)を円滑化するためのリスク評価能力の向上、事業主体に対するモニタリング方法の整備等によって、民間事業者をサポートしていくことが考えられています。

質疑応答

Q:

英米では、官業の民間開放が進んでいるというお話でしたが、そうした民族的、文化的に異なる大陸の国々で派生した制度を日本やアジアに適用することに、特に問題はないのでしょうか。

A:

非常に良いご質問だと思います。イギリスでは基本的に、common lawの考え方がベースとなっています。日本では、おもにドイツの法体系をモデルにしながら公権力の行使や公物管理の考え方を取り入れていることもあり、国が責任を負う範囲が広い形になっています。そこへ、急にイギリス流のPFIや市場化テストを取り込もうとするとさまざまな問題が発生してきます。まず、国が率先して規制緩和を進め、管理の考え方を変えたり、公権力の行使の考え方を変えたりする姿を示していかなければなりません。
また興味深いことに、ドイツも私たちと同じような苦労をしているところです。ドイツも、ようやく最近、高速道路の一部を民間事業者が請け負えるようにする法律を制定しました。防衛や刑務所関係の分野にも、ようやく取り組もうとしている状況です。おそらく、大陸系の国というのは、法体系を変えていかなければならない面もあり、取り組みがどうしても遅くなります。一方、アジアでは、強いていうならば、マレーシアやシンガポール、香港等、旧英領の国ほど取り組みやすい土壌だといえます。タイなどは、比較的遅れているといわれています。

Q:

フランスでは、ナポレオンの時代からPFIの手法が活用され、水道事業などが民間開放されていたようですが、現在はどうなっているでしょうか。

A:

フランスは、一種の公設民営のような形になっています。建物の建設などは基本的に官の役割ですが、利用権は民間に委ねて事業を進めるという手法がとられています。公物の概念は基本的に変えず、利用権だけを切り離して民間事業者に提供するという考え方になっています。

Q:

中国の清華大学では、IBM等のアメリカ企業が大学内にビルを建て、学生と共同研究等を行うという取り組みがみられました。日本でも、そうした地道な取り組みを行う努力が必要ではないかと思います。また現在、公的資金が交付される契約期間は単年度と非常に短く、現地でじっくりサービス展開を行うのは難しい状況です。こうした点について、ご意見をお伺いしたいと思います。

A:

私も行きましたが、中国の大学というのは非常にフレキシブルで、公の部分と民の部分の境目がなくなる方向に変わりつつあると思います。日本の大学も、独立行政法人化を経て、これからは公設民営のような手法もとりやすくなるのではないでしょうか。そういう意味で、日本はその途上にあるといえます。
次に、いわゆる単年度主義の問題は、そのとおりだと思います。これから十分に議論されるべき問題ですが、複数年度とするためには、そのための予算制度を作っていかなければならないと思われます。たとえば、従来の査定ではなく、数年単位で目標と実際のパフォーマンスについてお互いにチェックする事前事後の評価に力を入れるといった発想の転換が必要です。今後、独立行政法人化の流れから次のステップへどう進めていくのかが、大事な宿題だといえるでしょう。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。