ワークショップ

Asia KLEMSデータベース管理ワークショップ (議事概要)

イベント概要

  • 日時:2012年7月5日(木)~6日(金)
  • 会場:Seoul National University, Hoam International Convention Center

宮川 努(学習院大学・経済産業研究所)
徳井 丞次(信州大学・経済産業研究所)
深尾 京司(一橋大学・経済産業研究所)

2012年7月5-6日にソウル大学Hoam国際会議場およびソウルの韓国生産性センターでAsia KLEMSデータベース管理ワークショップが開催された。Asia KLEMS委員会が組織し、共催機関はソウル大学、韓国生産性センター、経済産業研究所一橋大学G-COE Hi-Stat、学習院大学ERIIであった。以下ではワークショップの趣旨と議事概要を報告する。

議事概要

1. Asia KLEMSプロジェクトの目的

Asia KLEMSプロジェクトは、アジア諸国について、産業別に全要素生産性を厳密に測定するため、産業連関表や詳細な属性別の労働投入や資産別資本ストックデータ等を含むデータベースを構築することを目指している。このようなデータベースを生産性計測の専門家は一般にKLEMSデータベースと呼んでいる(Kは資本、Lは労働、Eはエネルギー、Mはエネルギー以外の中間投入財、Sは中間投入サービスの意味である)。

KLEMSデータベースが、詳細な属性別の労働投入や詳細な資産別資本ストックデータを含むのは、1時間の労働の生産への寄与が、労働属性毎に異なり、また1億円の価値の資本ストックの生産への寄与が、資本財毎に異なると考えるためである。企業が熟練労働者に高い賃金を払うのは、基本的にその限界生産価値が高いためであろう。同様に1億円分のコンピューターは、技術革新により急速に経済的価値が減価するため、1億円分の構築物を生産に投入するよりもコストが高くつく可能性が高い。それにもかかわらず企業がコンピューターを投入する場合があるのは、コンピュータの限界生産価値が同じ価格の構築物の限界生産価値よりも高いためである。このような考えに基づき、KLEMSデータベースでは、異なった属性の労働や資本財について、その投入コスト(労働の場合は賃金率、資本の場合は資本コスト)をウェイトとして加重することにより、投入指数を作っている。KLEMSデータベースはこのように、ハーバード大学のDale Jorgenson教授や彼の共同研究者達によって開発された、国際標準とも呼べる方法に準拠して、全要素生産性を推計している。この点で、KLEMSデータベースは、マクロ経済全体の資本ストックの総額や総労働時間を生産要素投入とみなす素朴なアプローチとは異なる。

KLEMSデータベースの代表例としては、2003-08年に行われたEU KLEMSプロジェクトや、その後継ともいえるWorld Input-Output Database (WIOD) Project、ハーバード大学を中心に開始されたWorld KLEMSプロジェクトで参加各国が作成しているデータベース、日本産業生産性(JIP)データベース、韓国産業生産性(KIP)データベース等があげられよう。

Asia KLEMSプロジェクトはこのような質の高いデータベースを作成し、アジア諸国の経済発展や相対的な競争力の推移、国際分業構造等を比較研究することを目指している。

2. 今回のワークショップの参加者

参加者・報告者リストは、別紙議事予定の通りである。今回のワークショップの参加者は3つに大別できよう。第1は既にKLEMSデータを完成させている日本と韓国の研究者である。第2は国際比較研究で先行しているEU KLEMSを主導したフローニンゲン大やWorld KLEMSを主導しているハーバード大の研究者である。第三はKLEMSデータを作成中の中国、インド、マレーシア、台湾等の研究者である。

また今回の会議には韓国政府統計局や韓国中央銀行の統計担当者も参加していた。韓国においてKIP作成チームと統計作成者間の連携が進んでいることがうかがわれた。

3. 議事の流れ

参加者・報告者リストは、別紙議事予定の通りである。今回のワークショップの参加者は3つに大別できよう。第1は既にKLEMSデータを完成させている日本と韓国の研究者である。第2は国際比較研究で先行しているEU KLEMSを主導したフローニンゲン大やWorld KLEMSを主導しているハーバード大の研究者である。第三はKLEMSデータを作成中の中国、インド、マレーシア、台湾等の研究者である。

また今回の会議には韓国政府統計局や韓国中央銀行の統計担当者も参加していた。韓国においてKIP作成チームと統計作成者間の連携が進んでいることがうかがわれた。

4. 主な合意事項

産業分類は、原則として30強とすること、推計期間は概ね1980年から直近までを目指すこと、できるだけ各国公的統計機関との連携も目指すこと、KIP・JIP・ハーバード大・フローニンゲン大の推計担当者でデータ作成中の国に助言するグループを構成すること、インドネシア、バングラディッシュなど、他のアジア諸国の研究者にも参加を呼び掛けること、農業については土地投入の計測も国によっては行うこと、資本減耗率は各国の現状を考慮して柔軟に決めること、次回のAsia KLEMS会合は2013年中にソウルで開く(開催にあたりアジア開発銀行からも経済的支援を期待している)予定である。参加国の統計事情や進捗状況が異なることから、次回から参加する国は、自国の統計を使って生産性データベースをどの程度作成することができるかを報告し、インドや中国等すでに生産性データベースを作成中の国は、最初の推計結果を持ち寄ることを目指す、日本や韓国などすでに生産性データベースを完成している国はそのデータベースを利用した分析を報告する等で合意した。また、次回のAsia KLEMS会合開催に当たっては、参加各国の公的機関や国際機関の注目を集め将来の本プロジェクト支援につなげるために、データベースを利用した分析面で何か一つ政策テーマを掲げたセッションを設けることが望ましいのではないかとの意見が出された。