政策シンポジウム他

新たな世界的不均衡とアジアの経済統合

開催案内

東アジアの経済統合は、エレクトロニクス産業に典型的にみられるように、新しい産業内垂直分業の進展に助けられており、中国台頭はこの垂直分業をいっそう押し進めています。中国は、日本をはじめ韓国・台湾などの新興工業国から高度な技術が体化された中間財を輸入し、それらを安価な労働力で加工して、米国・EUなど先進国へ輸出するという加工貿易を急速に伸ばしています。その結果、世界的な三角貿易関係が形成され、米国の対外赤字の急増と相俟って、世界の経常収支パターンも大きく変容してきています。2003年の米中二国間貿易収支では、中国の黒字は1000億ドル以上に及びました。ところが中国の対世界貿易収支は200億ドルにとどまっています。これは、中国が他の国々に対しては大きな赤字を抱えていることを示し、その大きな原因の1つとしては日本や新興工業国からの高級な中間財の輸入があります。

新世紀に入って顕著になっている米国の大きな経常収支赤字と日本を含む東アジア全体の経常収支黒字という新しい世界的経常収支の不均衡の姿は、一方ではその中に世界貿易の三角関係を抱え、他方ではアジア地域での急激なドル外貨準備の蓄積が米国での金利形成にも影響を及ぼす状況を生んでいます。

今回のシンポジウムでは、このような新たな世界的不均衡の性格やsustainability(持続可能性)を分析し、今後予想される不均衡の調整過程のシナリオについて討議します。その調整過程、つまり為替レートの調整、金融・財政政策のあり方、構造改革の推進が、東アジア地域全体の経済統合の進展にどのようなインパクトを持つことになるのか、を明らかにし、世界的な不均衡を克服して、アジア経済の健全な成長を維持していくための具体的な経済政策を検討します。

イベント概要

  • 日時:2004年6月17日(木)・18日(金)
  • 会場:経団連会館(経団連ホール)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり)
  • お問合せ:RIETI 松倉・片桐(Tel:03-3501-8398)

※シンポジウム終了後、インターネットにて当日の模様の一部をビデオ映像でご紹介(動画配信)する予定です。また資料も後日、本サイトからダウンロードしていただけます。

【シンポジウム映像の撮影と利用について】

プログラム 2004年6月17日 (木)

13:30-13:45 開会挨拶

岡松 壯三郎 (RIETI理事長)

13:45-15:45 セッション1:米国対外赤字の持続可能性の決定要因とその調整のためのポリシーミックス

セッションチェア:吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)

論文発表者

小川 英治 (一橋大学大学院商学研究科教授)

Anne-Marie L. BROOK (OECDエコノミスト)

ディスカッサント

東條 吉朗 (経済産業省経済産業審議官室長/通商政策局国際経済室長)

Q&A

15:45-16:00 休憩(コーヒーブレイク)

16:00-17:30 セッション2:三角貿易とその地域的不均衡に与えうる影響

セッションチェア:谷川 浩也 (RIETI上席研究員)

論文発表者

Françoise LEMOINE (Centre d'études prospectives et d'information internationalesシニアエコノミスト)

ディスカッサント

深尾 京司 (RIETIファカルティフェロー/一橋大学経済研究所教授)

Peter GARBER (ドイツ銀行グローバルリスクストラテジスト)

Q&A

18:00-20:00 レセプション

*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。

プログラム 2004年6月18日 (金)

9:00-10:30 セッション3:経済集積地間の競争・協調と、企業の機能分離~アジア経済統合の裏にひそむもの~

セッションチェア:倉持 治彦 (RIETI副所長)

論文発表者

木村 福成 (慶應義塾大学経済学部教授)

久武 昌人 (RIETI上席研究員)

ディスカッサント

八田 達夫 (RIETIファカルティフェロー・研究主幹)

藤田 昌久 (京都大学経済研究所教授/JETROアジア経済研究所所長)

Q&A

10:30-10:45 休憩(コーヒーブレイク)

10:45-12:45 セッション4:アジアに適した調整政策~為替の調整、金融・財政政策と構造改革~

セッションチェア:吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)

論文発表者-世界的・地域的課題

Peter GARBER (ドイツ銀行グローバルリスクストラテジスト)

大谷 一朗 (経済政策コンサルタント/元IMF中国代表事務所所長)

論文発表者-各国の課題

Li-Gang LIU (ジョージメイソン大学助教授)

Piti DISYATAT (タイ銀行シニアエコノミスト)

ディスカッサント

YU Yongda (清華大学公共管理学院・21世紀発展研究院教授、経済合作研究所長)

黒田 東彦 (一橋大学大学院経済学研究科教授/内閣官房参与)

Q&A

12:45-14:00 休憩

14:00-16:00 セッション5:アジアに最適な為替相場制度

セッションチェア:大谷 一朗 (経済政策コンサルタント/元IMF中国代表事務所所長)

論文発表者

田中 素香 (中央大学経済学部教授)

Albert KEIDEL, III (米国財務省副ディレクター)

ディスカッサント

Yunjong WANG (SK Research Institute for SUPEX Management副所長)

YU Yongda (清華大学公共管理学院・21世紀発展研究院教授、経済合作研究所長)

Q&A

16:00-16:15 休憩(コーヒーブレイク)

16:15-18:00 セッション6:パネルディスカッション~米国・アジアにとって最も適した調整政策とは~

モデレータ兼パネリスト:吉冨 勝 (RIETI所長・CRO)

パネリスト

伊藤 隆敏 (東京大学大学院経済学研究科・先端科学技術研究センター教授)

Li-Gang LIU (ジョージメイソン大学助教授)

Peter GARBER (ドイツ銀行グローバルリスクストラテジスト)

佐野 忠克 (経済産業省経済産業審議官)

*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。

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